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デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論──人口減少で「経済の常識」が根本から変わった

生産性という言葉がもてはやされる昨今、日本経済の本丸である生産性向上について切り込みます。労働者黄金時代の生産性立国論。

「痛みを伴う改革」は自業自得

日本の社会保障制度の原型は、主に欧州諸国のシステムに範をとってつくられました。この制度を維持していくために膨大な費用がかかることは、皆さんもご存じのとおりです。

日本では、終戦後すぐベビーブームが起き、どこの先進国よりも多くの子供が生まれました。ベビーブームは数年で落ち着きましたが、その後も安定して子供が生まれ、その結果、 1945 年に 7200 万人ほどだった人口は、 65 年後の 2010 年には 1 億 2800 万人にまで増えました。実に 5600 万人、現在の韓国の総人口以上の人口が、この短い期間に増えたのです。

このように急激に人口が増えたのは、安定的に子供が生まれたことに加え、平均寿命が延びたことも大きな要因でした。実際、日本は世界でも有数の長寿国になっています。

日本人が長生きになったこと自体は喜ばしいことで、それ自体にはなんの問題もありません。しかし、一方で進んでいる晩婚化とそれにともなう少子化が高齢化とセットになると、話は別です。

日本では戦後から 1970 年代半ばまで、婚姻率が 0・8% から 1% で推移していました。婚姻率とは、 1 年の間、一定の人口のうち結婚した人の割合を示す数字です。つまり 0・8% なら、 1000 人のうち 8 人がその年結婚したという意味です。

この婚姻率が 1980 年代以降減少し、 2016 年にはついに 0・5% までに落ち込んでしまいました。

結婚する人が減るのに合わせ、生まれる子供の数も如実に減ってきています。日本の出生数は、ベビーブームの数年は年間 260 万人以上。 1970 年代初頭の第 2 次ベビーブームのころは 200 万人以上だったのですが、その後は漸減し、 2016 年には 97 万 7000 人と、ついに 100 万人の大台を割ってしまいました。

一方で長寿化にともない、高齢者の数は年々増え続け、直近のデータ( 2016 年)では 65 歳以上が全人口の 27・3% を占めるに至っています(ちなみに75歳以上だけでも13%です)。

15歳未満の幼年人口が占める割合はわずか12・6%にすぎません。人口ピラミッドを描くと、まさに「頭でっかち、尻すぼみ」で、きわめてバランスの悪い状態になっています。このバランスの悪さは先進国の中でも突出しており、今後多方面で深刻な問題の火種となることは確実です。

先ほども述べましたが、今後、医療の技術がさらに進歩すれば、一層長寿化が進むことになるでしょう。喜ばしいことではありますが、しかし、それにともない高齢者1人ひとりにかかるコストが増加することを忘れてはいけません。

喜ばしいはずの長寿化がネックとなり社会保障制度に歪みが。保険料は年々上がってきており、僕らがもらう頃にはかなり減額されてしまう年金など問題点が多い。人口減少がもたらす成長の鈍化は今や社会に与える影響が大きい。そこで一人一人の生産性を上げていこうという機運が高まっているのだと思う。

優秀なのに出世したがらない日本の女性たち

専業主婦の問題より大きな問題があります。

それは出世したがらない女性が多いという、日本のもう 1 つの特徴です。

アンケート調査でも明らかになっていますが、「会社に入っても管理職になりたくない」と答える比率は、男性より女性のほうが圧倒的に高いです。たとえばキャリアインデックスという会社が 2017 年 5 月に実施した「有職者に向けた仕事に関する調査」では、管理職になりたくない人の割合は、 20 代男性は 51・7%、 30 代男性は 48・7% でした。一方、 20 代女性は 83・1%、 30 代女性は 84・2% が、管理職になりたくないと答えています。

私がゴールドマン・サックスの役員のころ、会社の経営方針として「女性を出世させたい、出世してもらわなければいけない」というプレッシャーが役員たちにかかっていました。

しかし、東京オフィスの場合、出世しようと自ら手を挙げる日本人女性が非常に少なかったことを記憶しています。これは他の国のオフィスでは考えられないことでした。

なぜ出世に興味がないのかヒアリングしたところ、「私は男性のように働くつもりはない」「趣味のために午後 5 時に帰りたい」「お金が増えても責任が重いのは嫌だから、出世はいいです」などの答えが返ってきました。

外資系企業、それも金融機関に自ら入社してくるくらいなので、出世したい女性は日本企業で働く女性たちより相対的には多かったはずです。しかし、私が勤めている間は、残念ながらあまり多くの女性たちを出世させることはできませんでした。

頭脳明晰できわめて優秀な人も少なくありませんでした。しかし、能力的には最前線で働けても、働く意欲に欠けてしまっている女性が多かったのです。

統計的な話ではないですが、ロータリークラブや経済同友会などで他の経営者に聞いてみても、私と同じく女性から出世したいという強い要望を受けたことのある人はあまりいないようでした。

優秀なのに出世したがらない日本の女性たち。出産、育児、子育てを考えるとまだまだ男性のサポート意識の低い日本では、出世が足枷になるなんてことも。女性の働きやすい環境を提供できる大企業ならまだしも、未だ女性の働き方が確立されず、男性の育児休暇の取りにくい実情を抱えた中小企業は多い。これらの問題を解決しないと女性の声が届きにくい職場環境は改善されないだろう。

未だ未成熟な日本の労働市場で労働者黄金時代が訪れるにはどのような問題点があるかを炙り出す。明るい未来を描く青写真がここに。

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