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ジョブ理論|クレイトン・M・クリステンセン|イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

顧客データや市場分析、スプレッドシートに表れる数字だけがイノベーションの成否を分けるわけではない。鍵は「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」にある。

生活に身近なジョブを探す

世界には洪水のようにデータがあふれているのに、偉大なイノベーターたちを成功に導いたものが、片づけるべきジョブの直観だったと聞くと驚く人もいるかもしれない。ソニー創業者の盛田昭夫は後進に対し、市場調査に頼るのではなく、「人々の生活を注意深く観察して彼らの望みを直観し、それに従って進む」ようにと助言した。世界中にブームを巻きおこしたポータブル音楽カセットプレイヤー〈ウォークマン〉は、市場調査の結果が思わしくなく、一時的に発売が保留にされたことがあった。録音機能がないうえ、イヤホンのわずらわしさを感じる人が多いと思われたからだ。だが盛田は自分の直観を信じ、マーケティング部門の反対を押しきった。ウォークマンは、3億3000万台以上を売り上げ、個人用の携帯音楽プレイヤーという新しい文化を世にもたらした。

自分の生活のなかにある片づけるべきジョブは、イノベーションの種が眠る肥沃な土地だ。人の生活は雄弁に語る。あなたにとって重要なことは、ほかの人にとってもおそらく重要だ。カーンアカデミーを創業したサルマン・カーンのジョブを例にしてみよう。カーンは年下のいとこに数学を教えるために動画を作成してユーチューブにあげた。特別新しいものではなく、ユーチューブだけでもほかに何百というオンラインの数学個別指導動画があり、その大半が、カーンのものよりも映像や音声の質がよかった。「ほかの動画はぼくみたいにUSBヘッドホンを使ってはいなかったし、ぼくのは安っぽくて雑だった」とカーンは振り返る。しかし、彼の動画はほかのものと決定的にちがっていた。ほかの授業はわかりにくく、知識をひけらかしているところがあった。「ほかの授業は核となる概念にフォーカスしていなかった。それに──どう見ても楽しくなかった」と彼は言う。カーンのいとこのナディアは、学校での数学の授業がよくわからずにいた。かといって、両親に教えてもらったり、教師に補習を頼んだりするのはいやだった。いとこのサルマン・カーンがつくってくれたオンライン動画なら気が楽だ。カーンが動画をつくったのは、いとこに数学を教えるためだけではなく、家族とのつながりを感じられるうえ、学ぶ喜びを分かち合えるからでもあった。いとこのナディアは、彼の動画を雇用して、数学の概念を楽しく学ぶことができた。

彼女と同じ苦痛を感じている子どもはたくさんいた。だから今日、世界中の何百万人という生徒たちが自分のペースに合わせてカーンアカデミーのオンライン動画で学習しているのだ。

この数年で最も成功したスタートアップのいくつかは、創業者の個人的な片づけるべきジョブが発端だった。シーラ・マルセロは、自身が子育て支援の不足で苦労した経験から、育児、高齢者介護、ペットの世話などのオンライン〝縁結び〟サービス、ケアドットコムを創業した。現在、会員数は16カ国ほぼ1000万人にのぼり、企業収入は創業10年足らずで6000万ドルに届こうとしている。

しかし、こうした起業家のような〝人生における突然のひらめき〟が自分に起きていないからといって、悲観することはない。組織にすばらしいイノベーションをもたらすジョブを見つけるきっかけは、個人のひらめきだけではない。すでに獲得した顧客、まだ獲得していない顧客を観察するだけで、多くを学ぶことができる。もちろん、何を探しているのかはわかっていなければならない。

一見うまくいきそうもない仕事が成功したり会議を重ねこれはあまり売上が期待できそうもないと判断された商品が一斉を風靡したりすることはある。その逆もまた然り。机上でいくら議論しても生きた市場ではそれが機能しないことだってある。それを理解したなら市場の反応を見極めながら売るしかない。

理論が〝誤って〟いるとき

理論は研究者の頭のなかに完全無欠の状態で浮かんでくるものではない。むしろ使用するにつれて練られ、改良されていくものである。優れた理論が発展していくには、その理論では説明のつかない「逸脱」が必要だ。逸脱を発見すると、研究者は混沌とした事象の世界へ立ち戻る。逸脱の説明がつくように理論を改善するか、そこから先には理論を適用すべきでない境界線を新たに引き直す必要があるからだ。逸脱を発見し、説明をつけるたびに、世の中の仕組みがまた少し解明されることになる。

学界の慣習における最大級の愚行に、同僚が構築し、発表した理論にこぞって反証を試みるというものがある。反証者は、学会誌に論文を載せたあとは、ビーチで寝そべっているだけでいい。いまや自分の論文が「文献」になったのだから。このようなことは、誰の利益にもならない。 逸脱は反証の材料ではない。むしろ、その理論がまだ説明できていない箇所を指摘してくれる存在である。逸脱を発見したら、研究者は気を引き締め、理論を改善するか、より優れた理論で置き換える作業に挑まなければならない。

頭でっかちだとついつい自分の理論を他人に押し付けようとしたり、それが万人に通用するものと勘違いしたりしがちだ。世界を相手に通用する理論というのはいつも逸脱したもので新しいわけではないがそんな逸脱も飲み込むものではある。

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