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キャリア迷子 自分らしく働けない人のための「生き方提案」|小林さとる|キャリア迷子から抜け出すためのコツ

キャリアアップすることだけが人生において正解ではない。仕事とその他とのバランスを考えてあえてキャリアダウンした方が幸せなことも多々あります。本当に必要なキャリアをデザインし、キャリア迷子から抜け出すためのコツを紹介。

幸せなキャリアを築くために、主観(内的キャリア)を優先する

報酬や地位、スキルなどの向上を目指し、それを実現したことにより、幸せな人生を歩めるのであれば、それはとても素晴らしいことです。

一方、あえてそのようなキャリアアップから外れて、周囲から「キャリアダウン」と思われるような選択をしたとしても、その結果として、本人の幸福度がアップするのであればもちろんよいのです。逆説的ですが、「ポジティブキャリアダウン」とでもいいましょうか。

どちらに進めばよいのかわからないと、キャリアについて迷いがあるのなら、いったん立ち止まって、自分にとって目指すべき幸せはなにかを、見直してみるのがよいでしょう。

これまでにも何度か述べてきたように、キャリアは、その人の人生そのものであり、キャリアをデザインする目的は、自分が幸せになることです。

したがって、キャリアチェンジが、最終的な目的である自分の幸せに近づくような変化であれば、それこそが「本当のキャリアアップ」と呼べるものです。「本当のキャリアアップ」とは、自分が感じる主観的なものなので、「内的キャリアアップ」が正しい表現となるのです。

客観的な事実として、給料がアップしたり、地位がアップしたり、スキルがアップしたりすることは、自分の幸せに一定の影響を与えるでしょう。しかし、それがすべての決定要因になるわけではありません。逆に誰かから見てダウンと見られる変化でも、本人にとって幸せであったら、客観的なダウンもアップも関係ありません。周りの人や世間にどう見られても、自分が幸せであればそれでよいのです。

仕事をバリバリやって地位もそれなりだが忙しくて息をつく暇もない人より、仕事のウエイトは低いが家族との時間を大事にして充実した生活を送る人の方が幸福度は高かったりする。まさにワークライフバランス。地位やスキル以外にも幸せを構成するピースはあるのだと我に返った時、本当の幸せの価値がわかります。

このままこの会社にいても……という将来への不安

Dさん  40 代・男性

キャリア略歴

・大学卒業後、大手食品メーカーに就職。人事部に配属される

・将来に不安を感じて離職。学生時代に興味があった人事系コンサルタント会社に転職

就職・仕事・生活状況など

Dさんは、関西地方にある有名私立大学を卒業しました。学生時代には、経営コンサルタントの仕事に興味があり、就職活動のときにはいくつかのコンサルタント会社も受けましたが、内定を得ることはできませんでした。そして、内定を得られた、大手食品メーカーに就職します。入社後、Dさんが最初に配属されたのは営業部でした。その後、 30 歳のときに人事部に異動になります。給与や待遇などの面では、とくに不満はありませんでしたが、Dさんはだんだん、会社と、そこで働く自分の将来に不安を感じるようになってきました。

Dさんが入社した会社は、創業 80 年ほどになる老舗企業です。歴史のある企業ですが、会社の経営層は、代々、創業家一族の人間で引き継がれている、世襲制の経営体制でした。これまでに、一族以外の人間が社長になったことは一度もありません。そのせいもあるのか、社内の社風はかなり保守的で、新しいことにチャレンジしようという気風はまったくなかったのです。現在の経営状態は業績も財務も比較的安定していましたが、成長はほとんどしていません。今後、国内人口が減少し市場が縮小していくなかで、長期的な見通しを考えるとあまり明るい展望はなさそうです。

キャリア見直しのきっかけ

人事部に配属されてから気づいたのですが、ここ2、3年で優秀な若手から中堅の社員の退職が相次いでいたのです。会社の人事制度は、年功序列型賃金、終身雇用の典型的な日本型雇用制度で、あまり成果を上げていない高齢の社員にも、高い給与が支払われていました。人事担当であるDさんは、退職していった社員から話を聞く機会もありましたが、どうも若くて優秀な社員ほど、人事制度も含めて、保守的な会社の将来に見切りをつけて辞めていく風潮が見受けられました。これではいけないと思い、上司に改善提案なども行いましたが、受け入れてもらえませんでした。業績は安定しているものの、新しいことへのチャレンジもせず、また、一族以外の人間はトップ層にはなれない会社でこの先も働いていくことに、Dさんは不安を感じるようになってきました。それでも、もしDさんに配偶者や子どもがいれば、待遇のよい会社を辞めるという選択肢はなかったかもしれません。しかし、Dさんは独身でした。また、質素な暮らしを好み、浪費をするタイプではなかったので、これまでの勤務でかなりの貯金もありました。それもあって、Dさんは1年ほど悩んだあとに、退職を決意します。

展望が真っ暗な会社に見切りをつけて転職を考えるのはフットワークの軽い独身やまだ家を買っていない状態で預貯金に余裕があるうちに決断した方が良いでしょう。今時年功序列式の会社なんて老害によって侵食されるのみだし展望は暗いもの。10年20年のスパンで考えた時、若い社員の意見が通らない会社はやばいです。古い慣習なんかが問題視され事件化する会社もあるぐらいです。すぐさまキャリアの見直しを!

人生を幸せなものにするキャリアデザイン思考を身につけてワークライフバランスを正の方向へ。上昇志向に疲れたなと感じたらキャリアダウンも一つの手立てです。

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