戦略というのは、体得すれば極めて強力な道具になる。経営戦略、マーケティング戦略、広告戦略、営業戦略など。「戦略」は、いまだにかなり曖昧な単語だが、戦略の考え方のひとつを理解することは、今後の選択や意思決定に対して有効な指針となる。本書は、それぞれの読者が戦略を実践的な思考の道具として体得されることを目指すものです。
もうひとつの条件。Focus(焦点、集中)
複数の目的があると、有限の資源が薄まってしまう。達成すべき目的がひとつであれば、全資源をもの目的に集中できる。対して、ふたつの目的を掲げることで、単純に計算すれば資源は半分になる。もちろん、ちょうど半分になることは少ないであろうが、目的ひとつあたりに投下できる資源量は確実に減ることになる。これは、すなわち目的が達成確率の減少を意味することが多い。
必ずしもふたつ目の目的を持つなということではないが、このふたつめの目的を、ひとつ目の目的が達成されなかった時のための案として用意して置くぐらいの感じが、周到でいいだろう焦点を絞るというのは戦略を効果的に使用するために必要な重要な要因である。まずはひとつ目の目的に焦点を絞り全資源を集中させる。兵力の差が10対6の場合は兵力さはそのまま10対6ではなく、2乗比(100対36)で捉えるべきというランチェスターの法則に従っていこう。
思考のスイッチを入れるふたつの質問
英語に「Thought-starter question」という言葉がある。「考えを起動する質問」と言った意味で、思考のスイッチを入れ、思考を特定の方向に向かわせる質問だ。使い慣れるととても便利な思考ツールになる。元々の脳みその能力が増えるわけではないが、まるで新しいソフトウェアやアプリケーションを入れたように、いままで気付かなかったことに気付けることがある。
ここにふたつの「Thought-starter question」を紹介する。ひとつめの質問は「何が問題か?」。これはいま目の前にある問題は何か、その根本的な理由を探っていくのである。そしてもうひとつ「ある場合とない場合」この質問は、曖昧な目的のまま行動、計画が想定される場合にうまく機能する。この行動がある場合とない場合、何が違いとして現れるのか考えてみると良い。
資源を考えるにあたっての4つの象限
では、戦略を立案し実行する戦略主体である我々には、具体的にどのような資源があるのだろうか。ざっくりとヒト、モノ、カネといってもいい。具体的には、いま列挙したように人員、資金、ブランド、製品技術力、製品開発力、製品の性能、生産能力、生産技術力、営業の能力、ビジネス・モデルなどがわかりやすい資源である。これだけだろうか、それともまだほかにもあるのだろうか。
自分たちの持っている資源を把握するには2種類の属性を意識すると良い。これを組み合わせることで4つの象限ができる。ひとつ目の属性は資源の帰属先。「組織内の資源」と「組織外の資源」に分ける。先ほど列挙したの人員、賃金、ブランドなどはすべて組織内の資源だ。資源は必ずすべて自前で持っておかなくてはならないものではなく、自ら所有していなくても自分たちの戦略に利用可能なら「組織外の資源」として数えることができる。取引先や協力会社がこれにあたる。
内部資源としての人材
ブランド・マネジメントにおいては、自社ブランドの運営は人材によってなされている。これは競合においても同様でありながら、競合ブランドの人的特徴は、あまり顧みられない。言い換えると、競合ブランドと競争している以上に、競合ブランドの担当者と競争しているという認識が欠如していることが多い。競合に手練れのブランド・リーダーがいて、対峙しなくてはならなくなったら、こちら側の資源が多少多めであったとしても油断するべきではない。この認識は市場の競争環境の見方を変えることがある。競合ブランドの担当者の傾向を過去の施策などから知っておくことができれば、競争相手の今後の方向性を理解する上で役に立つだろう。
市場や消費者動向を理解するため、市場調査を行えば、各社同じような市場、消費者像を想定することとなる。結果製品やサービスはファーストペンギン以降、次々と市場に飛び込んでいくものたちは似たり寄ったりになりがちだ。そこで、どうやって他者との差別化を図るか等が、内部資源である人材の役割だ。あるものは値下げで対応しようとするかもしれない、しかしそこには一時的な売上の確保だけにとどまり中長期的には敗北という結果にもなりかねない。僕は価格戦争のすえ安価になった商品に興味を惹かれないので、やはりこういった層には他にはない技術革新やなんかが重要な役割を果たすのだと思う。
紅茶ブランド、リプトンのティーバッグのタグにはホチキスがない、これはマグカップに3分1の水と3分の2のミルクと、ティーバッグをふたつ入れ電子レンジでロイヤルミルクティーを作るためだ。ティーバッグにホチキスがないことが資源となっているのだ。戦略を持ってマーケットに対峙するいろいろな例を見ることができ、マーケティングの関わらない人でも市場がどうやって動いているのか裏方を知ることができる面白い書籍でした。
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