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お金を借りる秘訣は、お金を借りない努力を10倍すること|中尾 光宏|銀行取引、財務の見直し

コロナ禍で資金繰りに困る中小企業が後をたたない。銀行からお金を借りないとやっていけない中小企業とリスクを恐れて貸し渋る銀行。そんなミスマッチを解消すべく借りない努力を普段からしていこうというもの。経営の健全化、事業計画のブラッシュアップ、決算書の内容をよくするなどの基本を抑えて借りない努力をしていこう。

お金を借りるということ

お金を借りるということは、お金を借りる → お金を儲ける →お金を返す、といった循環をスムーズにできることを前提にしています。むしろ、お金の貸し手の立場に立って考えるとよくわかることなのですが、これから貸そうとするお金がどのように使われるのか、それを真剣に見ているものです。その見方は使う本人でないので、あなたの会社の立場以上に、お金が有効に使われるのか、精査しているものです。 安易なお金の借り癖が身についてしまうと、お金の使い方まで安易なものになります。 お金がすぐ手元にあるので、すべて返さなければならないお金なのに、あたかも自分の持ち物のように錯覚するものです。それは、直接的に収益を生むとは思えない、社長室の高級応接セットに化けたり、高級社用車に化けたり、全く無駄だとは言いませんが、必要以上にハイパフォーマンスな機械設備に化けたりすることになります。そして、世の中はお金で解決できることが多いものですから、どうしても知恵を絞らずお金を使いがちになります。自助努力が不足するわけですから、いくらお金があったとしても足りるはずがありません。最後は借金漬けです。

お金を借りることが常態化して麻痺している企業が多すぎる。借りたお金で社長室の飾ったり、高級社用車を導入したり、豪華な応接セットを買ったりと、まるで自分のお金のように無駄遣いする輩だ。こういう会社はいずれ業績が悪化して自助努力の不足により借金漬けの体質から厳しい状況になることだろう。借りたお金であるという認識をしっかり持って設備投資等も本当に利益につながるようにするべきだ。

事業がダメなら、お金を借りてはダメ

事業の盛衰というものを見極め、衰退する一方の事業にいつまでもしがみつき、それをそのまま何とか維持しようと、お金だけ調達し、時間稼ぎをしてしまうことだけは避けなければなりません。これは単なる延命策に終わり、最終的に会社の死につながります。ここでも先ほどお話しした、返すあてのないお金は借りるなという言葉が、あてはまります。こういった事業の体質は、お金の流れにダイレクトに影響します。お金に悩まないようにするためには、あたりまえのことですが、事業のあり方そのものにメスを入れなければなりません。例えば、「単なる大手の下請けで食べさせてもらっている」と、自虐的に語るような立場では、我が国のモノ作り環境を考えたとき、早晩破綻がやってきます。

不況で思うように受注が取れないなど事業自体に赤信号が灯っているときには絶対にお金を借りてはならない。そのボディブローは徐々にあなたの会社の腹部に効いてきてダウンすることに。今やっている事業が健全なうちに新たな事業の芽を育てておくことをお勧めします。新たなプロジェクトは可能性に満ちているのでピンチを救ってくれるかも。

自社の魅力を考えたことがありますか

銀行員が聞き手としてよく質問する切り口として、一部ですが、次のようなものがあげられます。あらかじめ、こういった切り口で会社をわかりやすく説明する準備をしておくといいでしょう。

  • どんなモノやサービスを提供しているのか
  • 同業他社とは何が違うのか
  • モノ作りやサービス提供の流れは
  • 業界の魅力やトレンドは
  • 業界の大きなくくりのなかでどこに位置しているのか
  • 商品やサービスは何に使われるのか
  • どういった知的財産を持っているのか
  • 技術内容はどうなのか
  • 何かブランドになっているものはあるか
  • 人脈など目に見えない資産はあるか
  • 社員の定着率が高い理由は
  • どういったところが顧客になるのか
  • なぜ競合他社を差し置いて存在できているのか
  • どのようなところをあえて差別化しているのか
  • 営業方法や取引先とのつながりは
  • どういったところで頼りにされているか
  • 事業の急所はどこか
  • 海外とはつきあいがあるのか

ところで、なぜこういったことを話す必要があるのでしょうか。銀行の人間は、あなたの会社からの説明を聞きながら「この会社が世の中に必要な理由は何か?」と絶えず考えているのです。それは担当者が資金を融資したとき、きっちり返済されるかどうかということを、気にしているからです。もちろん直接的にはそんな聞き方はしませんが、根本でそう思っています。 「あなたの会社の存在理由があまりない」→「競合他社に負ける」→「業績が下がる」→「消滅する」→「融資が焦げ付く」といった、悪いパターンを頭の中でシミュレーションしているからです。それなので、その不安を払拭してあげる必要があります。しかし、「ウチは何の特徴もない会社だよ」と言われるかもしれません。もし本当にないのであれば、それは問題です。特徴を作るように心がけなければなりません。それが経営にも良いように結びつくようになるでしょう。

銀行の要求に応えられるだけの事業内容を用意しよう。それができないようであれば実際にお金を借りる→利益を出す→お金を返すというサイクルが「あなたの会社の存在理由があまりない」→「競合他社に負ける」→「業績が下がる」→「消滅する」→「融資が焦げ付く」という負のサイクルへ落ちていきます。

事業を続けていくためにお金を借りるのではなく、事業を成功させるためにお金を借りる。ただただ業績が悪いのでどうにかお金を貸して欲しいというマインドでは借金漬けになります。

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