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FACT FULNESS|ハンス・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド

ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。

就学率

質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A 20%

B 40%

C 60%

この質問の正解率はわずか7%。以前書いた通り、チンパンジーでも正解率は33%になる。正しい答えはCの60%。つまり低所得国の60%の女子は小学校を卒業するということだ。多くの人はAの20%を選んだのだが、20%以下の女子しか小学校を卒業しない国は世界でも稀だ。アフガニスタンや南スーダンなどがそうだが、そういう国に住む女子は世界で2%以下しかいない。

よくテレビのドキュメンタリー番組で小学校に通えない子供達の様子を写しているが、あれによって僕たちの中で刷り込みが起きているのだ。低所得国では小学校にも通えないほど貧しい生活を強いられていると。しかし、現状では低所得国でも平均寿命は62歳だし、多くの人は食べ物に困らないし、多くの人はある程度安全な水道水を飲めるし、多くの子供たちはワクチンを接種するし、多くの女の子は小学校を卒業する。それでも一部にそれもかなわない子供達がいることは確かだが、認識の誤りが顕著に現れる好例だ。ファクトフルネスとは話の中の分断を示す言葉に気づくこと。重なり合わないこの二つのグループを連想する場合、実際には分断はなく誰もいないと思っていた中間部分に大半の人がいるのがわかる。平均に注意して分布を調べると、二つのグループに重なりがあり、分断などないことが多い。僕らの住む先進国にような高い位置からものを見ると、後進国の現状を誤って理解するなんてことも多く見られるということです。

一人当たりのギターの本数の変化に見る裕福度

窓の外を見ても、地平線の向こうで起きている進歩には気づけない。でも、世界の進歩について考えるきっかけはそこらじゅうに転がっている。たとえば、子供がギターやピアノを練習している音が聞こえたら、こう考えてみよう。「この子はドブで命を落とさずに、音楽を楽しむ自由を手に入れることができたんだ」と。せっかく金持ちになっても、いたずらに時間を過ごすのであれば意味がない。平均所得を高め、平均寿命を延ばすことが大切ないちばんの理由は、それによって人々が好きなことを楽しむ自由を得られるからだ。私が好きなサーカスを観たり、孫とゲームしたり、ダラダラとテレビを観ることができるのも、社会が豊かになったからだ。

文化や自由を数値で表すのは困難であるが、「一人当たりのギターの本数」の変化を見れば「音楽を楽しむ自由」の推移が見てとれるかもしれない。実際にグラフを見て見ると、「一人当たりのギターの本数」は伸び続けている。こんな素晴らしいデータがあるのに、人々は世界はどんどん悪い方に向かっていると悲観的になるのだ。おかしな矛盾がここに生まれる。「世界がどんどん悪い方向に向かっている」という思い込みから抜け出せない理由は、「ネガティブ本能」にある。それは物事のポジティブな面よりネガティブな面に気付きやすいという特徴、本能だ。ネガティブ本能は、あやふやな過去の記憶、ジャーナリストや活動家による偏った報道、状況がまだまだ悪い時に、「以前と比べたら良くなっている」と言いづらい空気などがある。

真実を見誤らないよう、良い出来事はニュースになりにくいという事実を知り、自分のもとに届かなかった良いニュースのことを考えよう。一人当たりのギターの本数が増え続けているという事実は、世界がだんだん良い方向へ向かっている証拠と考えても良いのではないか?人々は昔はよかったと過去を美化する習性があるのでそれも頭の片隅に置いた上で、今はどうかを自分の頭で考える必要がありそうだ。

いくらでも電気が使える人

質問12 いくらでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?

A 20%

B 50%

C 80%

電気は基本的な生活基盤で、世界の大多数、つまりレベル2と3と4にいるほとんどの人にはすでに届いている。それなのに、この質問に正解したのは4人にひとりだった。(国別の正解率は付録にした)。正解はいつもの通り、いちばんポジティブなものだ。80%の人にはいくらでも電気が届いている。供給は不安定だし停電もよくあるが、世界はいいほうに向かっている。電気の通じる地域は少しずつ増えている。ひとつ、またひとつと家に明かりがともっている。

停電が多い地域や電気代が払えなくて止められたなんていうのは抜きにして、多くの地域で電気の供給はなされており、その供給網は思ったよりも多く世界の家庭を便利にしている。

テレビの報道や活動家やジャーナリストによって貧困や食料供給、飲み水の確保などが引き続き語られているが、その成果によって世界がだんだん良い方向へ向かっている事実は報道されません。例えばどこどこの地域に水道網が引かれましたとかいうニュースは流れてこない。真実を知ることで世の中の見方が変わるファクトフルネス必見です!

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