「好きな音楽を一生の仕事に活かす」を基本理念に掲げる国立音楽院では、ミュージシャンやシンガーソングライター、作曲家、アレンジャーなど、音楽ビジネスの第一線で活躍する音楽家だけでなく、そうした音楽家たちが使用する楽器類の製作や修復、調整、メンテナンスなどを行うプロフェッショナルや、演奏を録音する際に重要な役割を担うレコーディングエンジニア、さらにはステージにおける音響、照明、ショーのプランニングやプロモーションといった、コンサートやライヴなどを成功させるために不可欠な人材も、多数育成している。
先哲の言葉が示唆する音楽療法の原点
ピタゴラスと同じく古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「音楽はやさしさ、怒り、喜び、勇気などさまざまな情感や魂の状態を模倣できるので、人はある情感を模倣した音楽を聴くと、同じ情感に浸れる」といい、さらに音楽には心にたまったモヤモヤやしこりを吐き出させる効果があるとして、それを「カタルシス効果」と呼んだ。「アリストテレスの師、プラトンも正しい人間教育には体育と音楽が重要であり、両者のバランスを保っている人こそ、真のハルモニアを身につけた人と呼ぶにふさわしいといっています。また、音楽はその人の思想と感情をも変えてしまう力があります。つまり音楽は、いいほうに導く場合もある反面、悪いほうに変えることもある。いずれにしろ、人間が生きていくためには食べ物も大事ですが、精神面では音楽が大きな力を発揮します。音楽はいわば心の栄養ともいえるのではないでしょうか」 こうした音楽の持つ不思議な力を利用して、心身を健康に導いていくのが音楽療法というわけだが、新納は古代ギリシャの哲学者たちの言葉にこそ、その原点が示唆されているのではないかという。
人類はどのくらい昔から音楽とともに歩んできたのだろう。歌を歌うという行為からだとかなりの昔から音楽とともにいきてきたのではないだろうか。老人ホームにボランティアに行った時、認知症の老人が、音楽を奏でると反応して歌う出すのを見たことがある。それだけ潜在意識に訴えかけるのが音楽なのだろう。
喜びや感動、元気を与えるのが福祉の真髄
そもそも音楽大学の教育は、長い間、クラシック音楽偏重であったことにも問題があるのではないだろうか。いまでこそジャズをはじめ、さまざまな音楽を取り入れ、柔軟なカリキュラムを組むところも増えてきたが、かつてはクラシック一辺倒で、卒業後、演奏家になれるのはほんのひと握りの人で、それとて収入の保証はない。音楽教師も狭き門で、あとは自宅でピアノ教室を開くくらいの選択肢しかなかった。「音大生のなかにはクラシック音楽のほうが上等だと思い込み、変なプライドを持っている人も少なくありません。でも音楽というのは、そういうものではないと思うのです。ヨーロッパの街角では、かつてはアコーディオンやヴァイオリンの伴奏で、一緒に歌って飲んで楽しむ姿が見られました。日本の村祭りなどでも笛や太鼓に合わせてみんなで歌ったり、踊ったり……。ああいう自然発生的なものが本来の音楽の姿で、音楽には人を元気に楽しくする力があると思うのです」 「愚に還る、誇らしげな自分が恥ずかしい」とは浄土宗開祖・法然の言葉だが、音楽にはクラシック、ジャズ、ロック、歌謡曲、民謡など、さまざまなジャンルがあるが、どれが上とか下とかいうこと自体ナンセンスであり、要は楽しければいいのだと新納はいう。
音楽大学ではかつてクラシック音楽偏重出会ったことから、卒業後の就職先に困る場合も多かった。「音楽にはクラシック、ジャズ、ロック、歌謡曲、民謡など、さまざまなジャンルがあるが、どれが上とか下とかいうこと自体ナンセンスであり、要は楽しければいいのだ」という言葉には音楽の真髄が隠されているような気がする。
介護予防を目的とした「若返りリトミック」
とりわけ老人ホームやデイケア、デイサービスといった高齢者施設で人気が高まっているのが、国立音楽院とNPO法人ラポールミュージックセラピーサービスが研究開発した「若返りリトミック」だ。これは音楽療法に、こどもの情操教育に用いられる幼児リトミックの手法を融合させたプログラムで、介護予防、なかでも認知症予防を特に意識し、健康寿命を延ばすことを目的としている。 新納は若返りリトミックの開発の背景について、次のように語る。 「日本人の平均寿命は世界でもトップクラスですが、長生きであることと健康であることは別問題です。多くの人が老後の不安材料として健康問題をあげており、できるだけ介護の世話にはなりたくないと思っています。音楽を楽しんだり、歌ったり、音楽に合わせて体を動かすことが頭・心・身体によい効果をおよぼすことは、国立音楽院が実践してきた音楽療法や幼児リトミックの経験からもわかっています。そこで、高齢者の方々に『音楽の力でより長く、心豊かに、自立した生活を!』送っていただくために、介護予防に重点を置いたメソッドとして開発したのが若返りリトミックです。〝若返り〟という言葉づけもよかったのでしょうね。高齢者施設などでは、若返りリトミックは着実な広がりをみせています」 若返りリトミックでは「頭の若返り」「心の若返り」「身体の若返り」の三つをプログラムの柱に置いている。
リトミックというと幼児教育のイメージが大きいが介護の現場でも若返りを期待して行われているのだという。介護予防という新しいジャンルで音楽療法の幅が広がった。
国立音楽院という専門学校の宣伝、紹介を兼ねて、音楽と福祉の時代にどんな職業があるのか?そして音楽で食べていくにはどうすればいいのかが詳細な例をもとに書かれている。プレイヤーだけれない音楽に携わる様々な仕事を垣間見ることができる書籍。
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