奇跡を狙って起こすことができる。 逆境や制約こそ、最強のアイデアが生まれるチャンスである。来園者減に悩んでいた関西の小さな遊園地「ひらかたパーク」はなぜV字回復したのか。失敗続きの「崖っぷちお菓子」はなぜ売れたのか。生き残りをかけた私立大学はどうやって過去最高の受験者数を実現したのか。そこには、逆境を「最強のアイデア」に変える企画術があった。アイデア発想術や、「結果」を出す企画術、PR技術を、使いやすい40の公式に「ひらかたパーク」でV6岡田准一さんの「ひらパー兄さん」を起用してV字回復を実現し、アウディの日本初3.2秒CMを発案し、北九州の遊園地「スペースワールド」の日本一明るい閉園CM「なくなるヨ、全員集合」で来園者数を2倍にした筆者が、自らが手がけた3つのV字回復事例をベースに、40の企画公式を紹介。
「ひらパー」に人を呼ぶための逆転戦略
たとえば、あなたが生まれ育った地元や地元の遊園地を「大好き!」と公言している人を見たらどうでしょうか。きっと嬉しくなり、その人を好意的に感じるはずです。加えて「こんな有名な人が!?」という人があなたの地元や地元の遊園地のために立ち上がってくれたら、その人や遊園地を応援したくなるはずです。足を運びたくなるはずです。海外の有名人に日本を絶賛されると、その人を好きになったり日本に誇りを感じたりするのも同じような心理でしょう。この「応援行動・応援したくなる心理」が「興味をもたなかった存在ニムを向けさせる力」になり、そこへ足を運ばせる力となるのです。
地元出身のメジャータレントが、かつて遊んでいた遊園地の危機を救うため人肌脱ぐというストーリーで「ひらパー」はV字回復する事に。岡田准一さんがひらパー兄さんと園長を兼任し過去10年間で2回しか達成していない年間来園者数100万人達成に進退をかけるというイベントで集客を図る。ただそれだけでは集客は難しいだろうから、お金をかけずに新たなアトラクションを作る事でこの難局を乗り切ります。それは現状のアトラクションのまま目隠ししてジェットコースターに乗ってもらう「目隠しライド」というもの。そしてそのアトラクションを体験した証として「兄さんアイマスク」の販売なども実施。これが大ヒットする事になり来場者は伸びていきます。口コミでこの目隠しジェットコースターが話題となりコストのかからない新アトラクションは大成功した。
3つ目の行く理由
自分は興味がなかった展覧会だけど、どうやら早くも30万人が来場しているらしい。そう聞くと、興味を持ったりします。「ひらパー」でいえば、100万人という目標数字を掲げる事で、「100万人近くも行っているなら面白いのかも」と思ってもらい、3つ目の「行く理由」にしました。この公式15で重要なのが「意外な」です。「あーそうだろうね」ではなく「え、そんなに!?」と思ってもらうとより効果が出ます。では「ひらパー」に100万人も行っていることがなぜ「意外」なのでしょうか。そこにはテーマパーク業界独自の理由がありました。天候に来場者が左右されやすいテーマパーク業界は、ディズニーランドとUSJを除いて年間来園者数を公表しません。雨が多い年は集客数がどうしても減ってしまうからです。しかし、来園者数を公表しないデメリットもあります。人数を公表しないことで「人がいないイメージ」が加速してしまうのです。
この100万人という目標設定が絶妙なさじ加減だったのだろう。地元に根ざした遊園地としてはディズニーランドやUSJにははるかに及ばないものの、善戦していることが数字から見て取れる。そこに「目隠しライド」などのちょっとした話題のアトラクションが拍車をかけ行く理由が一つ増える事になったようだ。
美味しいのに売れなかったジャックのPR戦略
狙い①一般常識とは逆の情報を伝える事で、確認行動を起こす
「美味しいのに、崖っぷち。」という一般常識と逆の情報に触れると、「え、なんで?」「何がいけないの?」と理由を確認しようとします。そして、そのお菓子がコンビニに置いてあったらどうでしょうか。1回ぐらいはお試しで買ってみる人もいるはずです。この心理行動がジャックを「1回買ってもらう」ために発見したツボでした。
狙い②通常、企業内にとどめておくべき情報をあえて暴露して、「驚き」をつくる
通常、大企業であれば、自社の商品が売れないというマイナス情報を、生活者に伝えません。自社の努力が足りなくて売れなかったことを世の中にわざわざ伝えることになるからです。が、そこにあえて踏み込むことで「驚き」が生まれます。大企業であればあるほど、その姿勢が世の中の驚きとなり、話題や拡散力となります。
結局、「ジャック」のPRは大成功し手に入れるためにコンビニをハシゴし買いだめする消費者も出るほどに。
制約の中でこそ、アイデアは光を放つもの。プロダクトの良し悪しも大事な要素だが、PRの仕方次第で商品やサービスの売れ行きや人気は十分に得られるという成功事例が記されている書籍。企画を考える際、重要となる40の公式で売れなかったものに再度光を当ててみよう。
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