統合失調症の当事者や家族、治療に関わる多職種のスタッフに向けて、疾患の情報をわかりやすく、短時間で伝えるための1冊。千葉大学精神医学教室で蓄積された経験・知識をまとめ、実際に使用している情報提供ツールや最新の知見を余さず紹介。当事者にわかりやすく情報を提供するために、多職種のスタッフと共通の認識を持つために必読の書。統合失調症の治療に向き合い、悩む人たちに、「これで治療がうまくいく」という解決策を示す。当事者やご家族にとっても納得の1冊。
どんな症状が出るのですか?
統合失調症の症状というのは、大別して「陽性症状」と呼ばれているもの、「陰性症状」と呼ばれているもの、そして「認知機能の障害」という3つのグループに分けられます。「陽性症状」というのは、患者さんの言動・行動や態度が外に目立って出てくるもので、誰が見てもこれは何か体調が悪いのだということがわかることを言っています。「陰性症状」というのは逆に、患者さんの症状のアウトプットがあまりありません。よく見ていないと症状として捉えられないもの、うちに引きこもってしまうタイプのものを整理して言っています。「認知機能障害」というのは、最近新しく出てきた概念です。統合失調症の方は、もともと陽性症状や陰性症状が出る前から、認知機能、つまり脳のもののとらえ方や表現の仕方に障害があるということがわかってきています。テストバッテリーと呼ばれるさまざまな認知機能検査によって、それらの障害が検出できるようになってきました。それを整理して3番目の障害と示しています。
では実際にどんな症状があるのか?まとめて見ました。
【陽性症状】
- 幻聴
- 被害妄想
- 興奮・焦燥
- 奇怪な行動
- 思考の乱れ
【陰性症状】
- 疲れやすさ
- 引きこもり
- 感情が乏しい
- 言葉が乏しい
- 意欲減退
- 無関心
【認知機能の障害】
- 注意散漫
- 記憶力減退
- 融通がきかない
- 作業の遅さ
- 飲み込みが悪い
僕の場合、調子の悪い時は、陽性症状の幻聴、被害妄想、思考の乱れなど、認知機能の障害では作業の遅さなどが見られます。比較的調子が良い時でも陽性症状の幻聴、陰性症状の引きこもり、認知機能の障害の融通の利かなさが見られます。もしかして自分は心の病かもと思うことがあったら、上記の症状を参考にしてみて、精神科を受診すると良いでしょう。
抗精神病薬の作用する場所は?
もう一度、統合失調症の症状の現れ方をまとめましょう。『過度な神経興奮の結果、知覚過敏が起きて幻聴に発展する。考え過ぎが起きて、連想過多、妄想につながる。感情が非常に高まって不安や恐怖・緊張、怒りなどが勝手に生じてくる』ことになります。統合失調症の方の薬の一番の主役である抗精神病薬は、脳神経ネットワークの受け手になる神経細胞の後シナプス膜のD2受容体に結合します。するとドパミンが受容体に結合するのが邪魔されて、興奮の伝達が抑えられます。その結果、適度な情報伝達がなされて、幻聴や妄想が取り除かれていくと考えられています。ただし、D2受容体に結合した薬は、残念ながら、ある一定の時間が経つとはがれてしまいます。そのために、薬の効果は一定時間が経つと消えてしまいます。これが薬を飲み続けなくてはいけない理由の一つです。
僕も精神科に通い、薬を処方されている統合失調症患者だが、発症してから10年以上たち、だいぶ落ち着いてきた。薬も以前処方されていたものから何度か変更になり、今でも2種類が処方されている。それでも現在は睡眠剤を飲まなくてもねれるようになったのでだいぶよくはなってきているという実感はある。トイレに入ると聞こえてくる幻聴なども僕固有の性質の一つとして受け入れることでなんとかだましだまし生活している。症状がよくなったこともあるが、妄想や幻聴に打ち勝つのではなく共存することを覚えたことが良かったように思う。
安心して薬を使うための5つのポイント
- 治療段階によって治療方法・薬の種類や量が異なることがある
- 抗精神病薬は副作用パターンで使い分ける
- SCAP法は主治医との相談をもとに
- 抗精神病薬を安全に使うためには採血・心電図検査を受けることが大切
- 急な減薬・薬の中断による離脱症状や精神症状の悪化(ドパミン過感受性)のリスク
治療段階によって治療方法・薬の種類や量が異なるので、維持期には急性期よりも少ない量にすることにチャレンジできるかもしれません。抗精神病薬は副作用パターンで使い分ける方が現実的。薬効よりも副作用のパターンの方がはっきりとした違いがあるそうです。薬の減量の方法として、今話題になっているSCAP法はとても良い方法です。しかし、勝手に行うのではなく、主治医との相談のもとに慎重に減らして行く必要があります。急激な減薬をするの中断は離脱症状やドパミン過感受性による精神症状の悪化のリスクがついて回ります。
統合失調症の疑いがある人、もしくは現在通院中の人たちはもちろん医療関係者に向けた書籍でもあります。医師の治療方針がどのようにして決定されているかがわかる書籍となっていますが、あくまで知識として頭の片隅に置いておく程度がいいでしょう。治療については信頼できる医師に委ね、自分で勝手に減薬したりしないよう注意が必要です。
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