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経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる|蔭山 克秀

忙しい人でもラクラク全巻読破!『国富論』(アダム・スミス)、『資本論』(マルクス)、『隷従への道』(ハイエク)、『雇用・利子および貨幣の一般理論』(ケインズ)などの古典名著から、『クルーグマン教授の経済入門』(クルーグマン)、『21世紀の資本』(ピケティ)といった現代のベストセラーまで、ビジネスエリート必須の教養を、まるごとつかめる!

『国富論』は、「分業」の素晴らしさを説明するところから始まる

『国富論』は、「分業」のすばらしさを説明するところから始まる。農業と違って、工業では分業ができる。たとえばピン(裁縫用の待ち針)の製造で考えてみると、たった1人で作ろうとしても、おそらく1日に1本も作れない。そりゃそうだ。だって1人でピンを作るってことは、まず早起きして山へ登り、鉄鉱石を掘るところから始めなければならない。そして下山したら、火をおこして溶かし、精錬し、型を取り、鍛え、整え、磨く。ここまでしないと作れない。メチャメチャ大変だ。しかもそれで1個 10 万円とかで売れるんならば頑張りがいもあるが、できるのはピン1本。 10 円にもなりゃしない。こんなもん刑罰だ。というか刑罰でもゴメンだ。もしも囚人が「懲役5年」「百叩き」「ピン製造」のどれか1つを選べと言われたら、みんな「ピンだけはゴメンだ!!」と泣きわめき、懲役5年と百叩きに殺到するだろう。でも、この気の遠くなるような工程をすべて分業することで、作業は飛躍的に効率がよくなる。スミスが実際に見たピン製造所では、 10 人で1日4万8千本も作っていた。1人あたり何と「1日4800本」! ここまでできるのだ。労働者1人あたりの生産量を「労働生産性」というが、 分業はこの労働生産性をすばらしく高めてくれる。

僕はライン作業の仕事をしたことがないので、実感がわかないが、工程を分業化するメリットは、ただひたすら自分の仕事をこなしていればやがてそれは製品となっていくことだ。1人で部品の製造から組み立てまでの工程を覚えようとしたら多大な時間がかかる。分業にすれば覚える作業は少なくて済む。しかし、この分業、農業では活かすことができない。同時進行で物を作り組み立てて行く工業製品と違って、一つの農作物を作るのに時間がかかるからだ。分業にしようものなら手隙の時間帯が多くできてしまい無駄が生じる。分業は工業向きと言えるだろう。

人口は「掛け算」、食べ物は「足し算」で増える

まず人口が増加して都市化が進むと、犯罪・売春(「結婚減→出生率低下」につながる)・奢侈・中絶・戦争などの悪徳や過密住宅・低賃金労働・食糧不足などの貧困で、ある程度人口が減る。それでも減り切らなかった場合は、今度はコレラやペストなどの伝染病が大ナタを振るう。それでも成果が不十分な時は、最後の最後に大飢饉が僕らを襲う。結局僕らの人口は、強引に食糧供給と同じレベルに押し下げられるのである。それにしても「貧困と悪徳」って、何でマルサスは、わざわざこんなとげとげしい表現をチョイスするんだ?わざと荒れそうな言葉を選んでないか?もしもヤフー知恵袋に「私が考える効果的な人口抑制策は、飢餓・伝染病・戦争・体が不自由になった老人の遺棄・捨て子・堕胎・結婚を抑制するための売春宿の奨励などだと思いますが、皆さんはどう思われますか?」なんて質問を書いてくるヤツがいたら、十中八九「釣り」(相手の反応を楽しむためのネット投稿)だ。でもマルサスは本気だ。しかもこれらの問題は、内容からして、必然的に社会の下層階級で発生しやすい。

マルサスの『人口論』考え方はわかるのだが、チョイスする言葉がいちいち尖っている。現在、彼の考え方をSNSに挙げたらどうなるだろうか。炎上もやむなしといったところか。それくらい刺激的な書籍である。

人間は所得水準が上がるにつれて、消費に回す割合が減っていく

人間は所得水準が上がるにつれて、消費に回す割合がだんだんと減っていくのだ。確かに言われてみればそうだ。たとえば年収500万円で暮らせていた4人家族が年収1千万円になったからといって、全部使い切るなんてバカなことは、あまりない。個々の事例ではあるかもしれないが、少なくとも「経済全体の傾向」としてはない。ふつうは100万円ぐらいゼイタクをして、残りは「貯蓄」に回すはずだ。所得のうち消費に回す割合のことを「 消費性向」、所得〝増加分〟のうちさらに消費に回す割合のことを「 限界消費性向」というが、結局 所得水準が上がるにつれて、限界消費性向は 逓減 する。つまり、 有効需要は減ってしまう のだ。そうなると、大事なのはもう1枚の翼「 投資」だ。「消費+投資=有効需要」なんだから、消費需要が冷え込む分、投資をガンガン行えば、完全雇用は実現できることになる。

人間の幸福度は所得水準が年収800万を超える辺りから、横ばいになりさらに増えて行くと下降曲線になるというのがよく言われていること。こうしたデータを見ても所得が増えたからといって消費が無尽蔵に増えるわけではない。お金を稼ぐことは卑しいことだという世間の目がある日本ではさらにその傾向が強いと言えるかもしれない。

経済学の名著、いわゆる古典と言われる書籍は読むのに一苦労するものばかりで、なかなか手が伸びない。古典の経済学名著から最近のピケティの『21世紀の資本』まで50冊が一度に味わえる書籍ですが、気になったものがあれば、あたってみるのが良いと思います。

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