精神科に入院するぐらいの症状になると薬が大量に処方され毎日きちんと飲むのも大変。僕は退院後先生の方針でできるだけ薬を処方しない方向で最小限の薬を使用するようになった。精神科の医師がどのような考えで薬を処方しているかがわかる書籍。薬とカウンセリングの違いなどもわかりやすく解説。
薬の投与量
たとえば統合失調症の患者さんに対しては、精神病理学を専攻する医師がもっともくすりの投与量が多く、多剤併用の傾向が強い。逆に投与量が少ないのは、精神薬理学を専攻する医師である。神経生理を専攻する医師は両者の中間である。一見すると、精神病理学を専攻する医師のほうが精神療法を重視して、薬物は少なくなりそうな気がするが、どうもそうではない。また、精神薬理学を専攻する医師のほうが、薬物の使用法に凝って、投与量が多くなり多剤併用になりがちな気がするかもしれないが、必ずしもそうではない。同僚医師のあいだで冗談半分に唱えられていた説によれば、精神病理学専攻の医師は薬物療法に対する期待が大きいので、薬物療法を工夫しようと躍起になり、ついつい投与量が多くなりがちなのではないかという。一方、精神薬理学専攻の医師は薬物の効果の限界を知っているので、薬物療法に対する期待が小さく、そのためあまり処方を「いじくらない」のだそうである。精神薬理を専攻した筆者としては、動物を用いた実験でさんざんうまくいかない体験をしているので、薬物に対してはアンビバレントな感情しかもてなくなることも関係しているのではないかと思う。つまり、薬物に効果があると考えるからこそ薬物を用いて動物実験を行うのであるが、たいてい実験はうまくいかず、そのため薬物の効果を呪うのである。もちろん実験がうまくいかないのは、薬物の薬理効果が十分強力でないためとは限らず、自分の実験手技が未熟なため、あるいはそもそも実験計画自体が稚拙なためかもしれないのである。
僕も例に漏れず、入院当初は複数の薬を処方されており、追加の薬を処方されることも。症状が緩和されるとともに、より副作用の少ない薬を数を減らしながら処方されるように。今では一日一回の向精神薬と、頓服一錠だけで済むようになったので、薬の服用が面倒だと感じることはなくなりました。それに体の調子が良いとつい服用を忘れてしまうことも。
軽症の場合は薬の投与を様子見することも
統合失調症のような急性期の精神病ではなく、うつ病や不安症と診断できるような患者さんに対しては、軽症の場合はいきなり薬物療法を開始しないのが筆者の方針である。先に述べたように、患者さんの直面している問題がはっきりしていれば、まずそれの解決法を探ってもらうことにしている。解決するのは患者さんなので、そのときには多少とも励ますこともある。巷では「うつ病の人を励ましてはいけない」ということらしいが、無責任に励ますのではなく、解決のための方策を一緒に考えながら、患者さんを力づけることも必要であろう。場合によっては、家族や同僚、ときには福祉機関の協力が必要なこともある。1週間から 10 日くらい後に再受診してもらい、この間にどうなったかを報告してもらう。この時点で、直面している問題の解決がすぐにはむずかしく、症状も悪化する傾向にあれば、患者さんの苦痛を軽くするために薬物療法を開始する。症状が多少とも軽くなれば、解決能力も高まるかもしれない。しかし、初診の時点で症状が中等症以上である場合には、やはり薬物療法を開始するのが原則である。うつ病や不安症の症状が重いと、頭も回らないし、症状のために偏った思考になりがちだからである。最重症のときには、薬物療法をただちに開始するのはもちろん、自殺念慮などがあれば入院の必要性についても検討しなければならない。
鬱や不安症で軽度な場合、カウンセリングでしっかり様子を見ることで、快方に向かうこともあるようです。
多剤併用を考える理由
今までさんざん多剤併用の悪口を書いてきたのに、なぜ多剤併用が好ましくないかを書き忘れていた。ここで簡単に説明しておこう。どれも専門家でなくても、常識的に考えればわかることである。
一、併用すると効果が倍になるかはともかく、少なくとも副作用は倍になる。それどころか、もし相加作用でなく相乗作用であるとすると、足し算でなくかけ算になる。相乗作用で思わぬ重大な副作用が出現するかもしれない。また、併用しているとどのくすりの副作用かわからない。
二、たとえ効果があったとしても、どのくすりの効果であるかわかりづらい。どれもが少量ずつ効いているのだという説明は、根拠を示すことができない場合の詭弁である。
三、最後にくどいようだが、併用がよいという医学的なエビデンスはごく少数の場合しかない。例としてあげれば、焦燥の強い統合失調症やうつ病の患者さんに対する抗不安薬の投与や、精神病症状をもつ重症のうつ病患者さんに対する抗精神病薬の併用などであろうか。
僕の主治医も薬は最小限で済むように診察してくれるので多剤併用に関しては心配はない。本当にやばいのは病院に通ってこない情報弱者の精神病患者だろう。街を歩いていてもこの人絶対統合失調症なのに多分医者にかかっていないのではという人がいる。本人が病気であるという意思味が薄いのか、それで生きづらいのなら早く医者にかかるべき。
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