私たちが日々の生活を豊かに過ごしたいと思うとき、哲学や宗教、心理学などはヒントをくれます。けれど、「歴史」に目を向ける人はほとんどいません。本書では、「仕事」「愛」「お金」「家族」「死」など、誰もが人生でぶつかり悩むテーマについて、その思考と解決のためのヒントが「歴史」にあると説きます。例えば、古代ギリシャ時代からは愛や人間関係への新たな発想を、産業革命時代からは仕事の満足度や働き方についての提案を、中国の明王朝や中央アフリカ固有の文化からは、子育てや親の介護についてのヒントが得られます。異なる時代や文化のなかで人々がどのように生きてきたのかーー。情熱を持って人生をよりよく生きるための秘訣は、歴史の叡智にあります。さあ、私たちの「生活の発見」を始めましょう。
古代ギリシャ人の愛に対する態度
古代ギリシャ人の愛に対する態度の中でも特筆すべきは、様々な種類の人たちーー友人、家族、配偶者、見知らぬ人たち、さらに自分自身ーーとの付き合いの中で愛を育んだことだ。これからざっとみていこうと思うが、こうした古代ギリシャ人にとっての愛は、今の私たちの愛とは大きくちがっている。現代では、愛にまつわるさまざまな欲求を満たしてくれるただひとりの人物に捧げるロマンティックな感情に傾きがちである。愛の意味は極端にせばめて追求して行くのではなく、愛には多くの側面があり、そのどれをも育んでいかなければいけないことを古代ギリシャ人は教えてくれる。
相手から拒まれてセックスなどによるエロスを満足させることができなくても、他の愛に意識を向け流ことができるかもしれないということだ。付き合いの長い友人との語らいや、朝まで踊り明かしたりすることで愛を満たすことができるのだ。古代ギリシャ人を見ていると愛というものはこれまで抱いていたイメージよりももっとずっと豊かなものであると分かるだろう。「日々の生活の中で、どうすれば愛のさまざまな側面を深めて行くことができるか」を問わなければならない。その障害となるロマンティックな愛の神話という厄介な壁を打ち崩す必要がある。
愛の結晶ともいうべきダイアの指輪を身につける女性は1967年のはわずか5%に過ぎなかった。ところが、1981年には60%まで上昇している。ダイアモンドなどの贅沢品を贈り物に買う習慣は、ロマンティックな愛の理想とされている。ダイアモンドを贈り贈られた時には、愛の表現だけでなく、賢い販売戦略に乗せられた結果であり、宝石商を儲けさせるだけだということを思い出してほしい。
会話の時間を過去に巻き戻すテクノロジー
アメリカの調査では、八歳から十八歳までの子どもたちは、一日平均七時間三十八分、デジタルメディアに向かい合っているーービデオゲーム、iPod、DVD、SNS、eメール、そしてもちろん、携帯電話やスマートフォンでショートメッセージを打つこと。こうしたテクノロジーが〝コミュニケーション〟を容易にし、その幅を広げてきたことに疑いの余地はないーー常に誰かとつながっていられる。私もオーストラリアにいる親戚と連絡を取りあっている。しかし、ここでもまた、やり取りの質という問題が浮上する。毎年、家族のあいだでやり取りされる何十億というテキストメッセージのうち、わくわくし、知性や感情を育む会話になっているものはどれくらいあるだろう。
家族の会話をテクノロジーが生活の一部となる以前のように戻すために、テレビの視聴時間を抑え、SNS断捨離を行ってみると良い。もちろんテレビの情報の網羅性や、SNSで得られる承認欲求も捨てがたいので良いタイミングで行ってみる。リビングにいても家族がそれぞれスマホに夢中といった現象から会話へとシフトできるので(もちろんスマホを見ながらでも会話はできるが)試して見てほしい。
多様化した仕事を選択する困難
今日、多くの人たちは、仕事を選択する困難に直面し、押しつぶされんばかりの重圧に苦しんでいる。世に溢れている職業選択に関する手引書やウェブサイトでは、何百という職業がリストアップされ、それを突きつけられた私たちはどうしていいのかわからずに不安に駆られてしまう。私たちが、獲得した自由は、図らずも重荷となってしまった。西洋の歴史の中で、ほとんど誰も気づくことのなかった不運である。この問題はここ三十年でますます深刻化している。労働市場の〝柔軟性〟を見せかけ上作り出すために、人員削減、短期間契約、臨時雇いが増え、〝生涯の仕事〟という考えが廃れたことが主な原因だ。
最近ではよくCMで転職サイトの広告を見かけるようになった。それだけ今の仕事に疑問を持っている人が多い(潜在的転職希望者が多い)ということだろう。
三千年の歴史から学ぶことができない者は、その日暮らしの生活を送っているにすぎない。関係を育て、生活を形作り、世界を見つけ、習慣を破る。愛や家族、仕事や時間、金銭など歴史から学べることは意外と多い。
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