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時間はなぜ取り戻せないのか?あなたを揺るがす思考実験

誰で一度は「過去に戻りたい」「時間よ止まれ」などと夢想したことはないだろうか?だが、考えてみれば、当たり前のように流れるこの時間は、いつ、どのように始まったのだろうか?そもそも、我々の目に見えない“時間”とは一体何なのか?時間の謎を解き明かす鍵は、生命の“意思”にあり、「意思とは何か?」というのも本書の主題である。哲学、物理学が探求してきた永遠のテーマを解き明かす、画期的な思考実験がここに。

主観と科学

物理学は、主観という曖昧なものは排除し、客観的事実だけを明らかにしようとする。しかし、この宇宙がどういう仕組みでできているかということを知るためには、宇宙を観測しなければならず、最終的にその結果を認識するのは人間であるから、知りたい対象(実在)と人間(主観)との相互作用がなければ、実在の認識ということは成立しえない。けっきょくのところ、物理学が真理であると判定する基準は、ほとんどの物理学者(すなわち主観の集合)が、同じ結論を得るかどうかということでしかない。このような議論は詭弁めいていると思われるかもしれない。たしかに、十九世紀末までの物理学者であれば、物理とはもっと単純明快なものだと自信を持って言えたであろう。しかし、二十世紀以降、量子論が登場し、アインシュタイン(ドイツ生まれの理論物理学者、一八七九─一九五五)が異議を唱えた数々の「非常識」的な量子論的主張が、どうやらことごとく正しいということになると、我々は哲学的な領域にまで入っていかざるをえなくなるのである。

宇宙がどのような仕組みでできているかとかは、1人の人間が一生をかけても解けない難題だ。それゆえ多くの学者たちが自分の人生をかけて観測し続ける。最近ではわからなかったことが少しずつわかってきて宇宙関連の研究は沸騰している。

主観を持つ生命、主観的意思としての生命はそれを構成する分子が、それぞれの決められた役割を担う秩序体である。そういった意味では生命は機械と似ているともいえよう。生命の秩序は、機械の秩序と比べてはるかに脆く、「人間は考える葦である」というのは言い得て妙である。この脆さこそ主観、あるいは主体的意思を生み出す源泉であることを忘れてはならない。

主観は時間の流れとして現れる

生命の持つ主体的意思を、細胞内の空間的構造として捉えるかぎり、そこにはシステムは存在するが、主観というものが見えてこない。マトゥラーナ(チリの生物学者、一九二八─)はオートポイエーシスの要件として、「システムとして実現されるような『空間』を画定する」という。細胞はたしかに空間的に存在しているが、しかし細胞内で秩序集団が相互作用を繰り返すには、時間が必要なのである。細胞は小さな存在であるが、それでも一ミクロン程度の大きさは持っている。この細胞の端から端まで光子が往復する時間は一〇のマイナス一四乗秒程度である。この時間はプランク時間*8 よりはるかに長い。秩序集団の相互作用を媒介する存在は光子だけではないだろうから、所要時間はもっと長くなる。ミンコフスキー時空は、空間だけで世界は理解できないことを我々に教えてくれる。空間的拡がりを持つ存在が相互作用をするとき、そこには必ず時間の経過が必要である。ミンコフスキー時空は、何ものも空間方向にだけは動けないことを我々に教えてくれる。空間軸は虚数であるから、その方向の動きは実現しえない。空間方向に動こうと思えば、必ず時間方向にも動かねばならない。それに対して、 時間方向は実数であるから、純粋に時間方向だけに動くことが可能である。 しかし、時間軸上の動きは、我々の目には見えない。 時間軸上の動きは、時間の経過として、我々の内観に現れてくるのである。

主観を持つこと、すなわち主観的意思を持つことは、空間的なシステムとしては現れない時間の流れとして、我々生命のうちに出現するのである。つまり、時間の流れこそが実体であり、生きるということなのだ。

結論

(1)ミンコフスキー時空の世界線に動きはない。それは(空間と時間を超越して)ただ存在するだけである。(2)生命はもろい秩序であり、つねにエントロピー増大の嵐と戦わねば生き残れない。(3)生命はもろい秩序であるが、自己増殖による自然選択という手段によって進化する。(4)生命が自然選択によって最初に獲得した能力は、主観すなわち主体的意思である。なぜかといえば、生きるという意思を持つこと以上に、生き残りに有利な能力はないからである。(5)主体的意思を持つためには、細胞内の秩序集団はたんなる物理法則を超えた、共鳴的なフィードバック・システムを獲得しなければならない。(6)細胞内の共鳴的フィードバック・システムは、空間的にみればシステムであるが、細胞に大きさがある以上、それらのシステムは時間的にも働かねばならない。(7)ミンコフスキー時空上では、共鳴的フィードバック・システムは、時間軸の正方向に向かってスパイラルを描く。蛇足ながら、スパイラルの軸が時間軸の正方向を向く理由は、エントロピーがその方向に増大するからである。(8)このスパイラルは、時間軸方向に速度ベクトルを生む。この速度ベクトルこそが、主観すなわち生命の主体的意思にほかならない。(9)すなわち、生命は、空間的にはシステムであり、時間的には主体的意思である。時間は内観であり、空間として姿を現さない。それゆえ科学の客観的対象からはずされてきた。(10)ミンコフスキー時空に主体的意思としての速度ベクトルを置けば、主体的意思が過去の光景を見るのに未来の光景が見えない理由が説明できる。つまり主体的意思の速度ベクトルこそが、時間の流れを作り、過去と未来を非対称にしているのである。

時間の流れ(時間の矢)はどこで生じているのか。生命の持つ主観すなわち主体的意思とは何か。この二つを追求した書籍。時間とは何か?なぜ取り戻せないのか?時間とは幻想なのでは?という問いに思考実験で向き合うのも面白い。

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