世界のトップレベルの研究・開発(R&D)施設は、次世代型のグリーンラボとスマートラボをめざす方向に向かっている。グリーンラボとは、地球環境を意識し、省エネルギー発想を貫いたラボラトリーのことを言い、スマートラボとは、最新のICT(情報通信)技術に対応し、より自由で快適なデータ活用が可能なラボラトリーのことを言う。さらに最近では、グリーンラボとスマートラボを融合することで、研究拠点全体のエネルギー効率を改善し、省エネルギー化、省コスト化を大幅に促進する、近未来型の研究施設を視野に入れるところも出てきている。
生命科学、医療の未来が革新的に代わる新技術
ES細胞はiPS細胞と同様、万能性を持つ細胞であるが、この細胞は受精卵の胚からしか得ることができない。つまり、受精卵を破壊しなければ胚の採取はできず、母体に危険をおよぼす可能性が懸念されることや、本来、個体に生育しうる胚を実験用に使うことについての倫理的な問題に対する論議が噴出した。国によっては、ES細胞研究費の助成を打ち切る動きもあったほどだ。 だが、iPS細胞のもとになるのは皮膚細胞であるため、そうした問題は一切ない。 しかも、万能幹細胞であるから、理論的には体のどの部分の細胞もつくり出せると考えられている。たとえば、心臓が悪いならばその患者の皮膚細胞からiPS細胞をつくり、そのiPS細胞から心臓の細胞をつくり出す。これを心臓に移植すれば、もともと自分の細胞なので拒絶反応は起こらず、疾患は治癒すると考えられる。 臓器移植はドナーの確保と拒絶反応が大きな壁になっているが、iPS細胞の実用化が進めば、それらの問題は一気に解決することになる。
iPS細胞の発見はこれからの医療の進歩をすごい勢いで加速するだろう。臓器移植はドナーの確保と拒絶反応が大きな壁だったがその壁が取り払われるわけだ。そんな新技術を見つけだした山中教授も日本の研究者たちの置かれている環境を嘆いている。研究者の中の9割は非正規雇用で食べていくのがやっとの状態で研究に心血をそそぐ人も多い。これでは世界との間で待遇に差が出てしまうため、外国に優秀な頭脳が流出する可能性もある。日本のこうした研究に費やされる費用は他の先進国の10分の1とも言われているそう。これでは今後日本が最先端の研究で遅れをとることになり兼ねない。残念な事実がここにある。
利根川博士も日本のR&D環境の立ち遅れを指摘
大学院は一種の徒弟制度で、教授、助教授の研究を手伝いながら、見よう見まねで覚えていく。 一方、米国では大学院に入ると一年目は全部講義。二年目から実験をし、非常に厳しく訓練される。二年目の終わりに徹底的な口頭試問を受け、それに合格しないとそこで落第。 こうした厳しい教育を受けるので、米国では優秀な研究者がたくさん育つんですね」 研究費+生活費の支給についても驚くほどの差があるようだ。利根川の留学は旅費だけの奨学金を受けていった。「生活費は主任教授が奨学金を世話してくれた。米国には経済的に余裕がない学生でも研究に打ち込めるように奨学金制度がしっかりしている。適当な奨学金制度がない場合も、大学のティーチング・アシスタントなどとして働かせてもらえ、楽ではないが、学生ならば十分やっていける程度の給料をもらえる。 米国では大学院生は研究者としてトレーニングを受けることが大事。アルバイトなんかさせてはならないという考え方があり、国や民間の財団などがお金を出す。国が積極的に科学者を育てようとしているのだ。 一方、日本の大学院の学生はアルバイトをしないと食えない人が多い。総じて日本の大学院よりも米国の大学院のほうがずっと勉強しやすい」
研究者の道を選ぶ学生が増えるよう、環境の整備が急務であると言えそうだ。最低限アルバイトをしなくても十分な収入が得られるぐらいの環境でないと、いくら魅力的な研究だとしても安心して取り組めないだろう。
R&D競争と日本の危機
ソニー、パナソニック、シャープなど、かつて世界を席捲した日本を代表する家電メーカーがそろって危機的状況に直面している。日本のモノづくりがいま、大きな岐路に立っていることは、誰の目にも明らかだといわざるを得ない。 そうした産業に代わって、今後、日本経済を牽引し、支えていくのは間違いなくライフサイエンスおよびその周辺産業になっていく。 iPS細胞の山中伸弥の研究を国が全力でサポートしていることからも、ライフサイエンスに賭ける国の真剣な思いが伝わってくる。「これからの日本経済は研究開発、R&Dをいかに活性化していくかにかかっているといっても過言ではないと思っています。 国もようやくそのことに気づき、最近では研究施設をもっと充実させていこうという動きが顕著になってきており、CiRA(サイラ/京都大学iPS細胞研究所)や東京大学のクリニカルリサーチセンターのような、思いきった予算をつけた計画がいくつも浮上してきています。 大手企業も二十年、三十年先を見越して基礎研究、共同研究に力を入れてきています」
日本のものづくりが危機的状況の中、技術立国日本を復活させるべく頑張っている人たちがいる。そんな取り組みを紹介しながら、現在の研究者たちが置かれている環境を克明に描いた書籍。
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