「歴史は繰り返す」とよくいわれる。同様に、機械の失敗の例からもわかるように「失敗も繰り返す」といえる。そして、筆者は「失敗は予測できる」と断言できる。なぜなら「人間は必ず失敗する動物だが、同じような失敗を繰り返すために、次に起こる失敗事例は過去のものと必ず類似する」からである。回避できるかもできない失敗を例を見ながら見ていこう。
失敗は予測できる
疲労破壊による事故は頻繁に起きるが、機械の失敗が「腐食・摩耗・疲労」に集約できると説明したように、その原因は一五〇年前から分かっている。これは新品にはない失敗だが、メンテナンスを行ってさえいれば防ぐことは可能である。要はクラックを調べれば良い。つまり、よく行われているようにクラックを超音波深傷や浸透深傷で調べ、クラックが拡がったら部品を交換すれば良い。航空機や鉄道、原子力発電所などの現場で絶対に壊れては困る機械では、機器をそれこそバラバラにしてメンテナンスを行うのが通例である。
ついこの間も、バンジージャンプのアトラクションがある場所で、伸びるゴム部分ではないワイヤー部分がちぎれた。飛んだお客が下に置いてあるマットに叩きつけられ負傷するといった事故があったばかりだ。定期点検はしているということだったが、他のバンジージャンプを運用している場所では一人飛ぶたびに、チェックを怠らないという。人の命を預かるようなアトラクションなので、安全には細心の注意を払ってほしいものだ。
このような事故が予測できたかということになると、「予測できた」と答えるべきだろう。金属の疲労破壊はよくある失敗であり、その知識さえあれば予測できる。法律が明確ではないため刑事事件で訴えられても有罪にはならないかもしれないが、もし被害者が死亡するようなことがあって、遺族が民事訴訟を起こし争えば、事故を予測して毎回点検している他社もあることから補償金を支払うことになるだろう。
廊下にものを置くな
何かの事象と自分の周りにあることが「似ている」と感じたら、そこから連想ゲームのように思考を巡らせてみると次から次へとアイディアが湧いてくるようになる。一例を示そう。例えば「廊下にモノを置くな」が有効なリスク減少対策ならば、「階段にモノを置くな」も有効なはずである。両方とも火災が起きた時には避難通路になるわけだから当然である。特に階段は、転倒だけでなく転落が発生するため、高齢者の場合すぐに重傷に至るというケースが多い。
「階段にモノを置くな」が転落事故防止に有効であるならば、「下りエスカレーターで走るな」も有効であろう。たまにエスカレーターで乗っていた人たちが将棋倒しになって怪我をするという事故が起こる。しかし報道されるのは死者が出た時だけなので、いまいち「エスカレーターで走るな」というのは浸透していないようにも思える。エスカレーターの片側を開けて乗り、その横を急いでいる人が駆け上がったり、駆け下りたり。荷物などにつまづき事故につながることを考えれば、エスカレーターは危険なので、急いでいる人は階段を駆け上がるように啓発運動をするとか、罰金を取るとかしないと周知はされないだろう。
最近だとハワイ州では歩きスマホに罰金を科す措置を取ったことで話題になった。歩きスマホをしている人はついつい画面を見てしまったり、地図アプリで自分の位置を確認しながら歩いたりしてしまうわけだが、これからはこう言った禁止令が日本でも施行される可能性があるので今のうちに直しておいた方がいい習慣と言えるだろう。歩きスマホを狙った当たり屋なんていうのも出てきている。あらかじめバックに忍ばせておいた画面の割れたスマホを、ぶつかったことで壊れたと主張し修理代をせしめようとするものだ。危機管理と言った点からも歩きスマホはやめるべき。移動中ぐらいLINEなんて見なくても支障はないと思います。
女児が排水口に吸い込まれて死亡
これは「逆流」という失敗シナリオで前述した、埼玉県ふじみ野市の市営プールで女児が排水口に吸い込まれて死亡するという事故である。これを組織の失敗シナリオとして考えてみると、市が管理を外注していたという問題が浮かび上がる。さらに、プールの管理を委託された会社が、契約に違反して別の会社に管理を丸投げしていたという、ずさんな管理体制が浮き彫りとなった事件であった。「伝言ゲームのプレイヤーが増えた組織」では意思の疎通がうまくいかず、それはやがて動脈硬化につながり、失敗の知識が伝達されにくくなる。「戻り配管に気を付けよ」という国の通達は事故の一〇年前に県側に届いていたが、それが記載されたマニュアルは末端まで伝わっていたかどうかは疑わしい。
プールの監視員は溺れる子や、プールサイドで走って転倒する子に気を取られ、まさか、戻り配管に引き込まれる事故が起こるとは思ってもみなかったのである。
数多くの先人たちの失敗を見ていれば防げる失敗は意外と多いことがわかる。取り返しのつかないことになる前に、想像力を働かせ、過去の失敗事例から学ぶことが必要だ。
※この書籍はKindle Unlimited読み放題書籍です。月額980円で和書12万冊以上、洋書120万冊以上のKindle電子書籍が読み放題になるサービスが初回30日間無料となっております。PCの方はサイドバーのリンクより、スマホの方は下の方へスクロールしていただければリンクが貼ってありますので興味のある方はどうぞ。なお一部の書籍はキャンペーンなどで無料になっていて現在は有料となっている場合もありますのでその場合はあしからず。
【サブスク】 Kindle Unlimited
僕が利用している読書コミュニティサイト
【本が好き】https://www.honzuki.jp/
【シミルボン】https://shimirubon.jp/