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『会社は何度でも甦る』ジム・ステンゲル,トム・ポスト

かつてはスタートアップ企業だったレガシー 企業を蘇えらせるための新戦略を元P&Gの 伝説のマーケターでビジネスコンサルタント のジム・ステンゲルが実例を用いて伝授。GE、 ウェスタンユニオン、ウェルズファーゴ、IBM、 ターゲット、モトローラソリューション、トヨタ、 バイエルといったレガシー企業(老舗企業)の 例を用いて生き返り戦略を説く。その多くがベンチャーとパートナーシップ・提携を確立し、スタートアップ界からの重要な洞 察を学んでいる。また、Microsoft、Google、 Appleなどの10歳、20歳、30歳の「新興企業」 がどのようにして再創造しているのか、さまざ まなレガシー企業の事例から読み解く。成熟企業(=レガシー企業)の再創造戦略!

経営者の安眠を奪うもの

ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の非上場企業)が輝きを失ったケースは、枚挙にいとまがない。若いスター起業家のなかには、謙虚さを学べばもっと成功できる人たちもいる。謙虚に行動すれば、一挙に転落する悲劇を避けられるかもしれない。大企業も中小企業も、すべて独力で歩む必要などない。それは、歴史ある企業にも新しい企業にも言えることだ。実際、ほかの企業と関わり合い、新しいタイプの強力な連携を築く企業が増えている。それに対し、自社の力だけで難局を乗り切ろうとして悪い行動パターンを繰り返す企業は、自社の未来をギャンブルの対象にしているに等しい。新興企業がその賭けに失敗すれば、あっと言う間に死を迎える。資源をふんだんにもっている既存企業も、古いやり方を続ければ、痛みをともなう緩慢な死を迎えかねない。

あなたの会社の置かれた状況は、どの程度悪いのか?深刻な状況に陥っている既存企業は案外多い。過去の成功体験のせいで身動きが取れなくなっていたり、新興勢力の脅威にさらされていたり。新しい考え方を受け入れられず、リスクを過剰に恐れることでかえって状況は悪化する。目先を変えて、元気のいい新興企業とパートナーになると言うのはどうだろう。状況の打破に貢献することだろう。具体的な課題に関して助け舟になるだけでなく新しい思考や行動を実践させるカンフル剤にもなる。このような効果を引き出す上では、新興企業を買収するより、パートナーになる方が有効だと考える。

成熟企業は自滅を避けられるのか?

アマゾンのジェフ・ベゾスは、オンライン上で豊富な品揃えの書籍を販売することにより、アメリカ最大の書籍チェーンであるバーンズ&ノーブルのビジネスを土台から揺るがした。それに続いて、小売業界全般にも大激変を引き起こした。さまざまなメーカーと手を結び、衣料品からカメラまであらゆる商品をオンライン上で販売し始めたのだ。こうして「エブリシング・ストア」に変貌したアマゾンは、家電量販店のベスト・バイやスーパーマーケットのウォルマートなどの小売大手に脅威を及ぼすようになった。

ベゾスは自分にこう問いかける。「私が(書店業界に対して)やったのと同じことを、私に対してするのは誰だろう?」そこで先手を打って電子書籍リーダーと言う書店の敵とも言えるデバイスの「キンドル」を発売し、アプリなども作成。電子書籍ビジネスに参戦したのである。次なる不安はネットフリックスなどの動画配信ビジネスの台頭。そこでアマゾンはプライム会員に動画配信を開始。今ではすっかり定着している。

失敗に対処する

ときには、獅子奮迅の努力をしてもパートナーソップの破綻が避けられない場合がある。破局の原因は、恋愛でもビジネスでもさまざまだ。「グローバル・パートナーシップ・スタディ」に対し、パートナーシップがうまくいかなかったと回答した新興企業は9%。理由としては、目標の未達成(33%)、企業文化の相性の悪さ(33%)、相手企業からの不当な扱い(22%)といった要因が挙げられた。注目すべきなのは、少なからず新興企業が既存企業から不当な扱いを受けたと述べていることだ。

では、既存企業の方の言い分はどうだろう。パートナーシップがうまくいかなかったと答えた企業は7%で、理由は目標の未達成と企業文化の衝突を理由として挙げた企業が多かった。どんな組織でも、現状を維持することに強い利害を持つ人は多い。変化を拒み続ければ組織はゆっくりと、しかし確実に死へと向かっていく。そこで論理とデータを持ち出し皆を説得し変化を受け入れさせる必要が生じる。新しいアプローチに効果があれば、自然と溶け込み懐疑派を少しずつ推進派に変えることができるだろう。

パートナーシップを通じて企業の再活性化を目指す場合、企業のリーダーには一体何が求められるのか?といった疑問に答えてくれる書籍。長く解決できずにいる課題が自社にある場合、独力でもがくのではなく、アウトサイダーを受け入れることが重要になってくる。そのアウトサイダーはパートナーである新興企業である場合もあれば、業界の有力企業の場合もある。有益な知識や経験を持つ異分子を受け入れることに恐怖心や抵抗感ばかり抱いていては前に進めないということだろう。

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