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世界から核兵器がなくならない本当の理由とは?

北朝鮮の核攻撃で、死者数210万人!?
2017年11月、北朝鮮は核弾頭装着が可能とされた新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行い、過去最高高度およそ4500キロまで到達。金正恩委員長は「核武力完成の歴史的大業を果たした」と実験が成功に終わったと宣言しました。また、アメリカの北朝鮮研究機関が、もしも北朝鮮が核攻撃を仕掛けてきたら、その死者数は210万人になるという試算結果も出しています。

外交カードとしての核。ビジネスとしての核。
世界から核兵器がなくならない本当の理由とは?

相次ぐ北朝鮮の核実験やミサイル発射実験。核の脅威となる北朝鮮の現状とは! ?日本にとっても身近な問題となっている“核兵器"問題を、池上さんが基礎知識からわかりやすく解説。核誕生の歴史から、核兵器が外交カードになってしまったこと、その技術をビジネスにしようとしている国などを明らかにしながら、世界から核兵器がなくならない深い事情を伝えます。

北朝鮮が核の抑止力に頼るわけ

北朝鮮は、朝鮮戦争の際、米軍によって大打撃を受けたことがトラウマになり、米軍の攻撃を受けないようにするにはどうすればいいか、考えてきました。その結果が、「核の抑止力」に頼ることでした。経済不振にあえぐ北朝鮮は、通常兵器の能力では、米軍や韓国軍に到底太刀打ちできません。そこで、通常兵器の能力を高めるのではなく、軍事費を核開発とミサイル技術の向上のために集中させる方針を取りました。企業経営でいうところの「選択と集中」です。

僕は常々思うのだが、北朝鮮のような経済の不安定な国家は、軍事力を強化して国民に貧困を強いるより、国際社会に歩み寄り、支援を求めていったほうが断然経済振興には役立つような気がする。独裁体制を敷くことが目的となっていて、国をより豊かにしようとする意識が低いのではとさえ思ってしまう。軍縮を進め、国際社会で通用する体制を引けば自ずと経済制裁はとけ、拉致問題など人道的な問題も解決させれば、経済協力だって得られるのにそれをしない。一国の指導者としては到底優秀とは言えない。

人類を数回滅亡させるほどの量の核兵器

今、大きな問題になっているのは、北朝鮮ですが、核兵器を持っているのは北朝鮮だけではありません。現在、核兵器は世界にどれくらいあるのかご存知ですか?世界には約1万5000発の核兵器があるといわれています(2017年1月時点の推計。廃棄待ちの核兵器も含む。ストックホルム国際平和研究所の報告書より)。その全ての核兵器を使ったら、人類を何度も全滅させることができるほどだそうです。

どの国がどれくらい保有しているのか見ていくと、ロシアが7000、アメリカが6800でこの二カ国で世界全体の90%以上を保有していることになります。フランスが300、中国が270、イギリスが215、パキスタンが130〜140、インドが120〜130、イスラエルが80、そして一番少ないのが北朝鮮の10〜20です。上位五カ国は国連安保理の常任理事国となっていて「核兵器保有国」として認められた国になっています。世界的に核の保有数を減らしていかないと本当の意味での平和共存は訪れないのではなどと思ってしまうのは僕だけだろうか。実際日本では核を保有していなくても国際社会で高い地位を保っているのだから。アメリカの核の傘に守られているという側面もあるが、そもそも核兵器の開発自体が間違っていると考え世界が同じ歩調で核廃絶に取り組めば保守管理に必要な莫大な費用も抑えられるのだから経済にとってはいいこと尽くめだと思うのだが。

核兵器の発射ボタンを手に外交を進める国々

なぜ世界から核兵器がなくならないのか?第2の理由は「核兵器が外交のカードになってしまったから」です。外交のカードとは、簡単に言えば、外交を有利に進めるための切り札のことです。まずは現在、核兵器を保有し外交のカードを持っているといわれている国を、改めて確認しておきましょう。多い順に、ロシア、アメリカ、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮(ただし、イスラエルは〝持っている〟とも〝持っていない〟とも示していません)です。これだけ多くの国が核兵器を持つようになりました。しかし、広島・長崎に原爆が落とされて以降、一度も使われていません。なぜでしょうか。

核兵器のボタンを押してしまえば国際社会からの非難は免れない。どうしてそんなものを後生大事に持っていつのかがわからない。トランプの大富豪でジョーカーを持った人だけが勝負に勝てるわけではないのと同じように、核に頼らずとも国際社会で優位に立ちうるファクターはいくらでもある。中南米のは「非核兵器地帯」ができていることからも世界は非核化へ向かうべき。各国が歩調を合わせれば無理なことではないのではなかろうか。

被爆者の発言で「私たちは微力ではあるが無力ではない」という言葉を胸に世の中が平和であることを切に願う。核兵器に頼らずとも国を豊かにする方策はいくらでもある。唯一の被爆国から送る世界へのメッセージがここに。

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