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数字とストーリーでわかるあの会社のビジョンと戦略

たんに数字(売上高、営業利益など)を見ただけでは、その企業のビジネスの本質をつかむのは難しいものです。企業のHPや経営者の発信する情報、各種報道記事などさまざまな情報を「数字」とうまく組み合わせて分析することで、はじめてその企業の本当の姿が見えてきます。本書はその方法をケーススタディ方式で示しました。

IPO(株式公開)と株価の推移

フェイスブックの魅力はなんといってもユーザー数の急速な増加で、2011年12月時点で8億4,500万人だったユーザー数が2012年10月時点で10億人と、1年も経たずに1億5,000万人以上増えています。もし、10億人に対して今よりも1ドル多く売り上げることができれば10億ドル(800億円)、10ドル多く売り上げることができれば100億ドル(8,000億円)の売上を増やすことができます。しかしながら、これはあくまでも「できれば」の数字であり、無料で登録できるユーザーから売上を上げる仕組みをうまく作らない限り、ユーザー数が増加しても売上を増やすことはできません。また、ユーザー数が増えれば増えるほど、フェイスブックのサービスを続けるコストが増加します。実際に2012年度の第3四半期の数字を見ると、2011年度の第3四半期よりも売上は3億800万ドル増えて12億6,200万ドル(1,010億円)となっていますが、コストもそれ以上に増えたため5,900万ドル(47億円)の当期純損失が発生することになりました。フェイスブックのような超人気企業は、ブームの時は株価が実力以上に評価され株価が高騰する傾向があります。また、公開価格を高くすればするほど、フェイスブックの資金調達額も多くなりますし、すでに株式をもっていたベンチャーキャピタルなどのキャピタルゲインも大きくなるので、主幹事証券会社はできる限り公開価格を高くしようとします。公開価格は38ドルでしたが、8月以降は20ドル前後がずっと続いているため、収益を上げる確かなシナリオが見つからない限り、このあたりの株価が現時点でのフェイスブックの実力であると思います。

すっかり浸透した感のあるフェイスブックだが、無料のサービスから売上を上げるシステムがうまく作れていないようだ。それでも人気は一流のため当期純損失が47億円出ていても株価が実力以上に評価され高騰することも。公開価格から18ドル低い価格での現在の数字の推移は収益を上げるシナリオが見つからない限り実力通りの価格だろう。

ヤフーがグーグルの検索エンジンを使う理由

ヤフーとグーグルでは基本的なビジネスの構造が違います。グーグルは検索を極めることで広告収入を獲得するいわば職人的なビジネスモデル、ヤフーは何でもそろう便利な百貨店というビジネスモデルです。検索エンジンという世界ではロボット型に軍配が上がりましたが、ヤフーはロボット型の検索エンジンを自社サービスの一部として取り込むことにより、ポータルサイトとしての魅力を向上させることに成功しました。一方、この出来事はグーグルにとっても大きな意味があります。検索エンジンの移行と同時にヤフーはグーグルに対し、オークションやショッピング等のデータを提供しています。グーグルの検索エンジンや広告ビジネスの強みは、その裏にある膨大なデータにあります。ヤフーのデータを得ることでグーグルの財産であるデータが一段と増え、検索の正確性やキーワード広告の精度を上げることが期待できます。そのため、ヤフーがグーグルの検索エンジンを採用したことは、ヤフーとグーグル双方にとってメリットのある取引だと言えるでしょう。

ヤフーがグーグルと同じ検索エンジンを使っていることは意外と知られていない。両者は検索においてグーグルの検索エンジンを使っているので、検索結果に違いはないのだ。借り物の検索エンジンを導入する代わりに、ヤフーはオークションとショッピングのデータをグーグルに提供して双方にメリットのある取引をしている。

シンプル経営 対 多角経営

アップルの経営の特徴は、なんといっても「iPhone」、「iPad」、「iPod」、「Mac」という4つの製品と、それらを繋ぐアプリケーションソフトの「iTunes」というシンプルなビジネスモデルでありながら、12兆円を超える売上を上げていることでしょう。製品数を絞ることにより、1製品当たりの広告宣伝費を増やすことができますし、同一製品を大量生産することにより1製品当たりの製造コストを下げることもできます。アップルの高いブランド力と、シンプル経営によるコスト削減効果により、消費者向け製品メーカーとしては非常に高い35.3% という営業利益率となっています。それに対してソニーは、創業者の井深氏が立ち上げたエレクトロニクス事業だけではなく、映画や音楽などのエンタテイメント事業、ソニー銀行やソニー生命などの金融事業などの多角化経営を行っています。多角化経営のメリットは、ビジネスリスクが分散されることにより経営成績が安定することです。一方デメリットは、経営資源を1つの事業に集中することができないため、高い収益を上げにくいことです。ソニーは多角化経営によりスマートフォンや携帯音楽プレーヤーなどのハードだけではなく、映画や音楽などの素晴らしいソフトを持っています。しかしながら、グループ内でのハードとソフトの融合があまりうまくいっていないため、十分な収益を生み出すことができていないと言われています。ハードとソフトの融合を一層推し進めることが、今後のソニーの課題となっています。

多角化するとソニーのテレビ事業などどうしても不採算な部門が出てくる。高いブランド力を持つ両者だがシンプルか多角化かは永遠の課題だ。

業績を判断する際、ビジネスモデルがどうなのか、様々な指標をみる数字の分析はどうなのかといったところも大事になってくる。売上はでかいがコストがかさんで赤字な場合だってある。よくIT社長が年商何億とかいうけど、利益はどうなのかわかったもんじゃない。なので僕たちが成功しているか数字を見る場合、年商は気にせずに、利益がどのくらい出ているかを見た方が良い。ビジネスモデルの分析をライバル会社同士を比較対象としてわかりやすく解説した書籍。

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