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『カーネギー「話し方入門」齋藤孝が読む』齋藤 孝

『カーネギー話し方入門』を、教育学者の齋藤孝が自身の実践的技法を披露しつつわかりやすく解説する「22歳からの社会人になる教室」シリーズの第三弾。カーネギーの原著は、単なる口先だけの話術やテクニックを超えた、対人関係の原則に基づく内容ゆえに今なお普遍性を保ち読者を惹きつけて止まない名著。歴史的ベストセラー『人を動かす』『道は開ける』の著者として知られるカーネギーの輝かしいキャリアは、話し方教室の講師をつとめたことから始まる。長年にわたる経験を土台に、深い人間洞察に根ざした独自のスピーチ術を駆使し、話す前の心構えから、テーマの選び方、準備、始め方、終わり方まで、人の心をつかみ、自信を持って人前で話すためのノウハウを懇切に手ほどきする。

人前で上手に話せるようになるために

1、多くの人が望んでいるのは、人前で自信と余裕を持って話ができるような力をつけたいということである。

2、動機さえあれば、そのような力をつけるのは難しくない。

3、一人の人と会話をしているときより、複数の人を前にしたほうが、もっとよく考えられ、うまく話せるものだ。

4、うまく話せない、という自分の悩みは特別ではない。名高い雄弁家でも最初はみな恐怖で立ちつくしていた。

5、話しはじめるときは緊張するが、数秒もすればそれは消え去るだろう。

6、人前で上手に話せるようになるために、次の4点を実行してほしい。

❶ 強く、持続的な願望を持ってはじめる。

❷ 準備は怠りなく。

❸ 自信満々にふるまうこと。

❹ 練習を積むこと。成功体験を積めば、恐怖心は消える。

多くの人は大勢の人の前で話す機会があるときは、事前の準備は怠りなくきちんとやるだろう。それではどこからが成功の分かれ目かというと、話している時の持続的な願望とそれに伴う自信に満ちていること。あとは事前に練習をどれだけ積んだかということだ。練習でこれはうまくいったと思えるような回があれば本番でも大丈夫。最近ではスマホで簡単に動画を撮れるので、自分のスピーチやプレゼンを録画してみて大勢の人たちの目に自分はどう映るかということを客観的に見るのもいいだろう。

たった1時間の試合で何千万も稼ぎ出すアスリートたちもその1時間の試合のためにハードなトレーニングを重ねている。その準備たるや子供の頃から10年、20年に渡るものとなっている。練習を重ねる意義を知るためにはアスリートをお手本にするのが良いだろう。

万一、スピーチやプレゼンで立ち往生したら

スピーチの途中で、話す内容をど忘れしてしまい、立ち往生してしまったら‥‥。考えただけでぞっとしますよね。あるアメリカ上院議員の同じような状況に立たされてしまいました。とっさに彼がとった行動は「私の声は小さくありませんか?後ろのほうの方、聞こえていますか?」と質問して時間を稼ぎ、その間に次に話すポイントを思い出したのです。

とっさに頭が真っ白になる経験は誰にでも起こりうることだ。この上院議員のように観衆にちょっとした質問を投げかけその反応を見ている間に次のポイントを思い出すなんていうのは高等技術だ。基本的には立ち往生する直前に言った言葉や内容をもう一度繰り返し次の話の初めに持ってくるなんてことも技術として覚えておくと良いだろう。

スピーチやプレゼンの内容を暗記する際は、少し時間をおいて反復練習すると記憶に定着しやすかったりします。一気に休みなく覚えようとするよりも簡単で効果抜群なのでためしてみては?この際音読は必須。脳が高速回転して記憶に残りやすくなります。

成功すると信じること

成功している自分を想像するだけなら、それほど難しくない、とカーネギーは言います。「自分は成功する、と信じるのです。固く信じたら、今度は、成功するのに必要な行動を起こすことになるでしょう」というわけです。ただし、「やればできる」「あきらめなければ必ずかなう」という言い方に私は必ずしも同調しません。やって成功した人の背後には、その何倍もの失敗した人たちがいると思うからです。もちろん自分がやりたいならトライし続けてかまいません。

成功を信じることは大事だが、自分が目指す世界だけしか見ててない近視眼的になってはいけません。例えば会社に就職したが、第一志望の職種ではなかった場合。とりあえず働いて見ているうちにその業務にやりがいを感じて仕事が楽しくなる可能性だってあるわけです。あらゆる可能性を試してみることができるのも若者の特権です。最近では中年以降でも新たなチャレンジをする人が増えているので、そうした人たちも参考にすると世界が広がるかもしれません。

若い人たちに読んでほしい話し方の教室。カーネギーの名著『話し方入門』を噛み砕いて解説してくれているので気張って読む必要はありません。スピーチを頼まれるような機会が増えてくる中年層以上の方にも読んでほしい一冊です。知っているだけで話し方が変わるテクニックが満載。

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