ミリオンセラー『嫌われる勇気』のヒットを受けて、アドラー心理学の関連書が矢継ぎ早に出版された。しかもビジネス、教育・育児など分野は多岐にわたっている。だが、一連の本の内容や、著者に直接寄せられた反響を見ると、誤解されている節が多々あるという。そこで本書は、アドラー自身の原著に立ち返る。その内容をダイジェストで紹介しながら、深い理解をめざす。アドラーの著作を多数翻訳した著者ならではの、完全アドラー読書案内。
タイプ分け
もちろん、アドラーもタイプ分けをすることがある。しかし、『個人心理学講義』で注意しているように、人をタイプに分けるのは、個人の類似性について、よりよく理解するための知的手段にすぎない。このことを忘れて、タイプや分類を重視すると、目の前にいる人が見えなくなってしまう。この意味で、アドラー心理学は、「法則定立的」ではなく。「個性記述的」であるといわれる。同じ人は二人としていないのであるから、人の行動はその人の視点から理解しなければならないという意味である。
僕の罹っている統合失調症にも様々な症状があり、一括りにすることは難しい。この人多分統合失調症だなとわかる人も街に出るといるが、少しずつ症状は違う。だから病院での診療やカウンセリングが必要なのだろう。処方される薬も様々で、新薬からジェネリックまで色々。患者同士でどんな薬が処方されているのかという話題になった時、同じ薬を処方されている人がたまにいるが、頓服などは比較的同じような薬が処方されているようだ。世の中の人は様々なタイプの人がいるにもかかわらず、血液型にはじまり、様々な要素を分別したがる傾向がこの国の人々にはあるような気がする。スタバでMacを開いて作業していると、そんなつもりはなくても、〝ドヤラー〟に分類される。そういった人にレッテルを貼り分類、揶揄する行動こそかっこ悪いし古臭い。人の行動をそんなに気にする前に、自分の行動を改める方がよっぽど良いような気がする。
共同体感覚
共感や同一視が重視されるのは、人は他者と離れてたった一人で生きているのではなく、他者との関係の中で生きており、しかも、客観的な世界の中に生きているのではなく、主観的に意味づけされた世界の中に生きているからである。この意味づけからは誰も逃れることはできない。しかし、人は一人で生きているのではないので、まったくの個人的、あるいはあまりにも私的な意味づけや判断は、人が他者と共存することを不可能にする。アドラーは、よりコモン(普遍的)な判断という意味でのコモンセンス(共通感覚)の有用性、重要性を『個人心理学講義』において繰り返し説いている。
共同体とは自分の属する家族や学校、職場、社会、国家、人類にはじまり、過去、現在、未来の全ての人類、さらには生きとし生けるもの全てを含めた宇宙全体をいう。共同体感覚という言葉から連想する、既存の社会への帰属感を想定したものではないことに注意が必要だ。それどころか既存の社会通念や常識にNOを突きつけることも。アドラーは共同体感覚の原語であるGemeinschaftsgefuhlの英語訳としてsocial interestを好んだ。英訳の方は、共同体との関連があまり強調されず、対人関係や他者への関心という意味であり共同体というよりも対人関係に意味の力点が置かれている。人は対人関係から解放されることはなく、共同体感覚は到達されることのない理想であると言える。
価値の科学
アドラー心理学は、このように価値の心理学であるが、そもそもアドラー心理学を根本的に区別する目的論においては、価値を問題にしないわけにはいかない。ある動きを機械的、あるいは、因果的に捉えるのではなく、それが行為といわれるためには、まず、行為に先立って意図を抱き、目的あるいは目標を立てなければならない。
ここでいう意図や目的ははっきりしておらず、無意識的なところもあるが、それは必ず「善」である。自分にとってためになる「善」。たとえば、不正を行う人でも不正自体が、自分のためになると考えなければ、不正を選択しないわけである。
汝自身を知れ
アドラーは、人間の悩みはすべて対人関係の悩みである、といっている(『個人心理学講義』一六頁 →1章)。なぜなら「人が個人として生きる前に、共同体が既にあった」(『人間知の心理学』三四頁)からであり、その意味で、対人関係から離れた人は考えられないのである。
対人関係が苦手な僕のような空気を読めない人間にとってこの共同体が悩みのタネだ。職場はもちろん、公共の場での知らない人との接し方、加えて家族などとの付き合い方でさえ悩みの種となってしまうくらい対人関係にがんじがらめにされている。
アドラー関連の著書は数多く出ているが岸見先生の著作はわかりやすく読みやすい。アドラー心理学の世界を旅するのにはおすすめです。
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