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『「革命」再考 資本主義後の世界を想う』グローバル後の世界?資本主義の危機!?

資本主義は常に、外部に非資本主義的な市場を持つことで発展してきました。一部の先進国の浮遊はすぐには理解し得ないかもしれませんが、多くの非資本主義圏の存在からも搾取によって成り立ってきたのです。外部市場である非資本主義がなくなると共に、資本主義は苦しみ始めたとも言えます。資本主義が促進したグローバル化が、資本主義を乗り越える反作用を始めた。資本主義の危機は、まさにその勝利の美酒によった時に始まったのだ。いつ革命が起きてもおかしくないほど機は熟していると主張する著者の「革命」再考。

新しい社会は金銭欲の社会となった

さて、キリスト教徒の世俗化を作り上げたのは、近代国家そのものであり、キリスト教徒はその意味でどんどん世俗化されたユダヤ教徒の信仰に近づいている。フランス革命が作り上げた世界は、公的領域(政府)への関心よりも、私的領域(私的所有=金銭欲)への関心を作り上げてしまいました。フランス革命以後に生まれた新しい社会は、金銭欲の社会となったわけです。人権といった概念は、人々の公的な生活への関心よりも、自らのエゴイスティックな権利を野放しにすることになったのですが、最大の問題は、まさに私的所有の問題にあったわけです。

近代国家が歩んできた資本主義社会でも、これと同じようなことが起こっている。資本主義の大国は、それ以外の国から搾取する構図が現代と変わらない。自由競争と弱肉強食の世界ではその後、市民すなわちブルジョアの暴走を生み出すだけであり、破滅的な世界をもたらす。よって、おのずとブルジョアではない層、すなわちプロレタリア階級こそ破滅的世界を回避し、新しい世界を開けるとマルクスは言う。マルクスはここで初めてプロレタリアとういう言葉を用いるが、生産手段を持たない階級といった経済学的カテゴリーにはなっておらず、まだ市民社会から排除された階級という概念に過ぎない。

拝金主義に対する批判のないトックヴィル

マルクスは後に、『フランスにおける階級闘争』において、フランス革命は次第に急進化していったが、一八四八年の二月革命はその逆にどんどん昔にもどっていったという言い方をしています。これと全く同じ立場をトックヴィルはとっています。革命がどんどん退歩したのはなぜかという問題を立て、革命によって得た尊い自由という考えを捨てていったのは、いったいなぜだろうかと考えます。トックヴィルは一七九二年にいたる自由な利己的精神が生み出したもの、すなわち拝金主義といった問題に対する批判がもともとありません。物価上昇と暴利をむさぼる商人たちが、貧しい農民や市民の怒りを買ったことに全く関心を持ちません。なぜ自由が失われたのか、という政治の問題にのみ見解を集中させています。

トックヴィル:フランス人の政治思想家・法律家・政治家。裁判官からキャリアをスタートさせ、国会議員から外務大臣まで務め、3つの国権(司法・行政・立法)全てに携わった。

独裁国家を礼賛していたという嘘

マルクスは何も自由を批判し、ロベスピエール的独裁を賞賛しているのではありません。むしろ逆で、独裁を批判さえしているのです。なぜ政治革命は市民の無関心を呼び出し、ロベスピエールという独裁者を生み出したのか。そういった角度で批判しています。その理由として社会革命の不徹底をあげていることは確かです。社会革命を徹底することにより政治革命が実現し、ロベスピエールを乗り越える、真の民主主義世界が実現するという主張であり、マルクスはその限りにおいて一度としてロベスピエールの独裁を肯定していないのです。あえてそれを認めている部分があるとすれば、永久革命の始まりとして、です。しかし、それは永久に革命をして行くこととなり、ロベスピエールの独裁は崩壊していくはずです。

ロベスピエール:フランス革命期の政治家で、史上初のテロリスト(恐怖政治家)・代表的な革命指導者。

混乱した世の中や不満が鬱積した世の中ではしばしばロベスピエールのような独裁者が現れる。独裁とは違うが民主主義社会でも強権を振るう指導者はいつの時代だっている。トランプアメリカ大統領やフィリピンのドゥテルテ大統領はもちろん日本だって数の力で強行採決なんてのは日常茶飯事だ。誰でも力を持つと使ってみたくなるのが心情。韓国の朴槿恵大統領しかりサムスンなど財閥なども捜査の対象になっているがどこまで広がりを見せるやら。

新自由主義の「革命」

すでに地球の圧倒的に多くの地域を資本主義の反周辺、周辺に組み入れたことで、資本は一九七〇年代までの長期停滞をなんとか抜け出す道を探すことができました。耐久消費財はもうかなり前から先進国では飽和状態でした。これを半周辺諸国で売ることができました。そして賃金引き下げの理由ともなる、価格の低い商品を半周辺、周辺で生産することで、賃金コストの引き下げも始まりました。

そして迎える後進国への技術移転。自分たちで生産する技術を獲得した周辺・半周辺国の賃金は徐々に上がっていきもはやフロンティアはないとされる現代。正当な労働に対する対価を払うフェアトレードも叫ばれる中、新たなフロンティアはもう宇宙しかないんじゃないかとさえ思われる。

マルクスの思想を中心に革命の歴史と思想を一気に学べる書籍だが、『グローバル”後”の世界が来る』という帯を見て買った僕には、読んでいて冗長に感じられた。もっとこれからの未来のことが書かれていればよかったのに‥‥そういった内容の書籍を探している方にはお勧めできません。

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