高いホテルや、高いワインを飲んでいる自分(一人ではない)を積極的にSNSにあげ、新幹線ではグリーン車に乗っている画像をアップ。「今日の安宿」などと自嘲的にへりくだりつつパークハイアットに止まっている様子をなんの迷いもなくあげる。こう言った人々はしばしば「リア充」と混同されがちだが、似て非なるもの「意識高い系」を彼らのバックグラウンドとともに分析した書籍。
意識の高い学生(笑)の特徴
①やたらと学生団体を立ち上げようとする、②やたらとプロフィールを盛る、③全ては自己アピール。質問が長い!、④ソーシャルメディアで意識の高い発言を連発、⑤人脈をやたらと自慢、そして利用する、⑥やたらと前のめりの学生生活を送る、⑦人を見下す、の7点である。常見によるこの「意識高い学生(笑)」の定義は、彼らの実態を正確にとらえたものだといえよう。
2000年代前半ごろには数多くのネットスラングの一種に過ぎなかった「意識の高い人(笑)」はやがて「意識高い系(笑)」と変化し、現在では(笑)の嘲笑の部分をあえて定時しなくても意味が通じるようになり「意識高い系」という言葉は「周りから見てちょっと痛々しい人」という文脈の中で普遍化した。
リア充と意識高い系の定義
まず、本書で展開されるリア充の定義は次のとおりである。
①土地に土着している(先住民=ジモティ)
②その土地は両親など(上級の親族)から相続したもの(同居含む)である
③「スクールカースト」においては、第一階級に属していた(支配階級)
④上記を踏まえて、他者へのアピールの必要性を有さない(自明性、閉鎖性)
⑤よって自己評価は概ね相応である(プライドの類には概して無頓着)
一方、「意識高い系」の定義は、上記リア充とは正反対であり、次のとおりである。
⑥土地に土着していない(後発の賃借人または分譲住宅取得者=よそ者)
⑦その土地を両親など(上級の親族)から相続していない
⑧「スクールカースト」においては、第一階級に所属せず、もっぱら第二階級に所属していた(中途階級)
⑨よって、承認経験が乏しいために、必要以上に他者へのアピールを欲する(承認欲求、開放性)
⑩自己評価が不当に高い(異様にプライドが高い)
⑥と⑦の土地の恩典の部分をめぐっては、生まれながらにして 大都市部に住み、上級の親族から土地を相続「している」土着の民にもかかわらず⑧においては恵まれない(中途階級)であるがゆえに行き着くところの心理が⑨⑩と同様になってしまい「意識高い系」と同じになってしまう人々もいる。説明を読んでいるとこの「意識高い系」の心理はよくわかるというか、プロフィールを盛ったり、人脈をひけらかしたり、しないだけで僕も「意識高い系」と揶揄されているんだろうなと感じた。というか社会問題を取り扱った本を読み、感想をブログやなんかに綴る。そしてスタバでドヤ顔でMacBookPro開く(←「意識高い系」と呼ばれるのが嫌で今までは控えてきたが、最近は他人の目など気にする必要はないと思い気にしなくなりました)。
「意識高い系」の人々は大都市(東京)に住むリア充(意識高い系の人々が想像するところの)を模倣しているのだが、真のリア充は土地に土着した自明の人間関係の中で暮らしているからむしろ閉鎖的で、人にアピールする必要性がない。ってことは僕らがリア充だと思っているSNS上のリア充な人々はほとんどただの、〝リア充気取り〟ということに。僕は都内のゲームセンターで店長をしていたのだが、その時出会った常連さん達(地元の人)のような人こそ真のリア充だったのではと思うに至る。都内に家を持ち土地に土着し、学校は慶應でエスカレーターなんて人が何人かいた。
こうした人たちは、ガリ勉で受験勉強をし大学へ入った人間と比べコミュニケーション能力という点で圧倒的に有利な立場にいる大学内での「スクールカースト」上位に食い込もうと大学デビューを目指そうとしても、付属高校という「土地」からの恩恵を受けて高校生となり「不合格」という緊張のない恵まれた環境の中で育った人たちのコミュニティに入っていけるわけもない。
首都圏ではほとんど人口移動していないという事実
県内移動は短距離の移動であり、ほとんど出生地から離れないことを考えると、実に全ての調査年次において60%近くの若者が少なくとも出生地とその周辺部から、全然離脱しないで土着している実態がうかがえるのである。
僕は千葉から山口そして神奈川では2回の引越しを経験しているが、結果、溝の口周辺部に土着したと言える。僕のように県内で短距離の移動を繰り返す人が多くなる一方、以前のように東京への流入が大量に起こることもなく、首都圏出身者の定着率は高まっている。そんなデータからも、もはや東京は地方出身者の寄せ集めではなくなっているのがわかる。こうして上京してからのリア充成りという灯火は儚く消えゆくのである。
真の強者はアピールなどしない、弱いからこそ少しでもアピールする要素を探し主張するのである。そうした背景を考えると簡単に「あいつ意識高い系じゃねぇ?」的な揶揄をする世の中は配慮が足りないと言えるのかもしれない。愛すべき意識高い系の分析を行った面白い書籍であった。
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