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『「君たちはどう生きるか」を読み解く』橋本進

漫画作品が大ヒットした古典的名作。出版ジャーナリストが先輩編集者への敬慕の念をこめて読み解いた遺著!1937年、日中戦争開戦のさなか。厳しい検閲をかいくぐって公刊された児童向け作品で、吉野源三郎氏は何を伝えようとしたのか!?

「立派な人」と立派なジャーナリスト

「肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ」。そのためにもだいじなのは「いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだ」。「しみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない」「どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えて見るのだ。そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰り返すことのない、ただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかって来る。それが、本当の君の思想というものだ」

この記述からおじさんによる「立派な人」のイメージが読み取れる。自分の感動、体験をベースにその意味を考えぬく。既成の知識に寄りかかるのではなく自分の思想を形成し、思想に基づき行動する。そんなイメージだ。ジャーナリストは知識人であってほしいと願う。知識人とはクイズで高得点を上げるだけの人ではなく、ものの考え方や人間についての世界観がしっかりしている人のことだ。またジャーナリストは文章家でもあってほしい。しかし、決まり文句を操って達者な文章を書くだけでは立派な文章家とは言えません。おじさんの言葉を借りれば、これらの人は立派なジャーナリストとは言えないのです。

吉野さんの胸のうち

「ノート」の中でもう一つ考えてほしい箇所があります。おじさんつまり吉野さんが、修身の教科書通りに生きるだけでは立派な人だとは言えないと、いっているところです。なるほどそうだ、マニュアル通りに生きたってとくに立派とは言えないんだな、だいいちそんな人はつまらないよ、と読んでもけっこうです。だが私としては、ここに書かれていないことまで皆さんに読みとってほしいのです。教科書どおりではダメだという言葉の裏に、吉野さんの修身教科書・教育へのきびしい批判が存在していただろうということです。

きびしい思想弾圧、言論統制=検閲が吹き荒れていた時代。修身は学校教育はもちろん、社会人の生活をも律する国民道徳の基本とされていたので、正面から批判することが難しかった。発禁にさえならなかったが密かに読む本だったようだ。

剰余価値とは何か

商品の価値の大きさは、その商品の生産についやされた社会的必要労働の量によって決まるといっても、直接にその商品を生産する労働量だけできまるのではない。商品の生産のための仕事場、機械、道具、原料、補助材料など(生産手段)が必要である。これらの生産手段をつくるための〝過去の労働ーー死んだ労働〟が必要である。したがって商品の価値は直接についやされた生産者の〝生きた労働〟と、生産手段の生産のためについやされた〝死んだ労働〟をあわせたものになる。それでは商品はどのようにして利潤を生むのか。売り手が価値以上の価格をつけて売るからだろうか。商品の価格は需給関係で上下に変動する。しかし価格の上下は、少し長期にわたれば相殺されて、商品の価格は価値に一致する。では利潤はどこから生まれるか。資本家は労働者に賃金を支払う。その賃金は、労働者の労働力に対するものである。「労働者が売るものは、直接彼の労働ではなく、彼の労働力であって、彼は労働力の一時的な処分権を資本家にゆずりわたすのである」。労働力とは、人間がものを生産するためにつかう肉体的・精神的な力の総体である。この労働力が使われる過程が労働である。

商品を生産する際、労働力に対し適正な賃金が支払われているかどうかは昨今問題となっている。「エシカル」とか「フェアトレード」という言葉をよく耳にするようになり、消費者の僕なんかも、そういった活動に積極的に取り組んでいる会社の商品を買いたいと思うように。賃金の安い地域や国に依存して生産している会社は遅かれ早かれレッドオーシャンのなかで沈没する船に乗っているようなものだと僕は思う。成熟した経済というのはそういうことだ。

商品に価値を見出すかどうかは消費者次第。洋服などはそれの典型。ブランド物ともなればその名前にお金を払っているようなもので、〇〇AW、〇〇SSといった最新のファッションは異常な値段がついていたりする。原価を考えたらその選択肢はないなと思うかもしれないが、ブランドには底しれぬ魅力があるのも事実。

漫画作品が大ヒットして話題になった「君たちはどう生きるか」を読み解く書籍。古典的名作として知られるようになったきっかけは漫画だが深く読んでいくと児童書とは思えないほどの中身。社会人が読んでも面白い作品を深掘りしている。

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