インバウンド(訪日外国人旅行)といえば、中国人の「爆買い」を思い浮かべる人も少なくないでしょう。しかし最近では、日本文化を体験するという目的での観光にシフトしています。京都の禅寺での座禅や四国のお遍路、音楽鑑賞も有力なコンテンツの一つだ。日本に来れば、こんなにも多様な文化体験ができるのだという評価が中国人に浸透しつつあるようです。中国におけるコミュニケーションの専門家が、インバウンド・ビジネスを成功に導くヒントを語る書籍。
中国版「高度成長」で中産階級が激増
3泊4日程度で旅行する場合、日本は中国人にとって、ちょうどいいリフレッシュの場所なのです。リピーターになって、週末などに気軽に訪れ、いろいろなところに行って楽しむ。ついでに日用品まで買って帰るという身近な旅。それが中国人観光客が日本旅行を楽しむ理想の姿ではないでしょうか。
何と言っても、日本は近いLCC(格安航空会社)の就航が増えたことも手伝って中産階級がこぞって日本へ。土産物を大量に持ち帰ることができる大型旅客船による旅も人気だそうだ。それと海外旅行雨が人気な理由の一つに国内リゾート地への旅費が高騰していることもある。海南島が人気のリゾート地だが春節の時期になると総額で一人当たり6000元くらいかかる。北京から海南島へは4時間ぐらい、それならば同じくリゾート気分も味わえる沖縄へ行った方がリーズナブル。ヨーロッパへの旅行は時間も費用もかかるので近場の日本ということになる。訪日旅行は贅沢しても2〜3万元で収まるがヨーロッッパでは一般的な旅行商品しか享受できない。中国の旅行会社によれば、ヨーロッパに行くのは時間とお金に余裕のある富裕層の中高年が大半で、日本を選択するのは若者中心といった傾向があるそうだ。
ネットの普及が日本への関心を高める
中国の代表的なポータルサイト「ソーフー(捜狐)」に記載された記事(21016年4月26日付け)では、「親日だろうが反日だろうが実際に日本に行ってから、日本に対する評価を下すべきである」と前置きし、ビザ取得が容易になった現在、「日本に行かないとは残念ではないか。少なくとも、おいしいものがいっぱいあるのだから」と日本への旅行を勧めています。中国当局は情報を管理していますが、ネットに書き込まれる個人の旅行体験や感想などは抑え込んでいません。日中関係はそのときどきの政治状況によって振幅がありますが、膨大な観光客が双方を行き来して人的な交流が進めば、おのずと両者の理解は進むはずです。
近年はスマホの普及により中国独自のSNSが急速に発達しました。タクシーを呼んで料金の支払いまで全てウィーチャット(微信:LINEのようなもの)で完結。これらのデジタルメディアで活躍するインフルエンサー、オピニオンリーダーたちは強い影響力を持っているのは日本と同様。在日中国人が発信する情報も侮れない。彼らは日本大好きで日本の詳細な情報を知っています「日本のセレブが愛用している店」などというディープな情報の発信の担い手となっている。
中国では口コミ情報の信頼度が非常に高くなっていて、ネットを介しているので拡散力も桁違いだ。日本だとテレビや新聞、雑誌などマスメディアが非常に発達しているが、中国ではそれに匹敵するぐらいSNSが影響力を持っている。中国では芸能人や有名ブロガーなどブログやSNSで大きな影響力のある人をKOL(Key Opinion Leader)と呼び商品やサービスを紹介すると、あっという間に数百万人、数千万人にその情報が広がることになる。日本でも新たにオープンするホテルが、Instagramフォロワー数が一定以上の方宿泊無料!ただしホテルでの写真を数枚、Instagramにアップするのが条件などというサービスが話題になったこともある。
中国人気女優のフォロワー数は4000万人
中国での情報発信においてはSNSにおける圏子(仲間同士が固い結束でつながった疑似家族)の影響は軽視できない。日本に行ったことのある人が自分の買い物リストを作れば、それがあっという間にコミュニティ内で拡散する。「日本攻略」などという情報がアップされていればみんながチェックする。誰もが圏子コミュニティを重視している。そこに食い込むべく、同じ価値観や趣味でつながっている人たちに対して影響力のあるKOLのようないわゆるインフルエンサーを通じた、第三者の口コミによる情報発信の手法が重要になってくる。例えば在日中国人の情報発信力に注目し、KOLに働きかけて、「今日本では、こういうものが人気」といった情報を中国向けに流している。
2016年1月に電通公共関係顧問(北京)が祝賀会を開いたのですが、その数日前に人気女優の王珞丹から、お祝いの花束が届いたのです。みんなに自慢したい出来事なのでSNSに話題としてアップしたいところですが、このときは対外的には伏せておいて、内々にお礼のメッセージを返信しておきました。それから間も無くして、彼女の主演映画が公開されたので、ちょうど良い機会だと考え、花束がが届いたことを映画公開と絡めてウェイボーで発信しました。すると彼女のファンからのアクセスが殺到し、閲覧数が一気に増えたのです。47万を超えるアクアセスがあり、コメントも1000件くらい寄せられました。もちろん彼女が「いいね!」を押してくれたから急増したのです。
1%のフォロワーが反応しただけでも40万人のアクセスを獲得できる計算。あな恐ろしや。
第4章は、コミュニケーションの誤解を解き、未来志向へ。日本人と中国人のメンタリティーの違いを理解することが、第5章は、地方創生の切り札は「インバウンド」だと題し、旅行者に魅力が伝わるよう情報を流通させるPR視点が求められることなどが書かれている。
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