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人を動かすマーケティングの新戦略「行動デザイン」の教科書|國田 圭作 , 博報堂行動デザイン研究所

良い製品だと思うのに思ったほど購買に繋がらない。それは世の中に良いものが溢れているからでは?後発とのシュア争いの中、商品での差別化が難しい昨今、「行動」を誘発することで、唯一無二のマーケティング戦略が生まれる。マーケティングの最新手法とも言える“行動デザイン”で消費者の心を掴む方法とは?

人の行動原理の基本はエネルギーコスト

なぜ紙幅を割いて「啓発キャンペーン」の話をしてきたかというと、「啓発キャンペーン」は非常に難易度の高い題材だからです。

通常の消費財のマーケティングでは、商品はだいたい魅力的です。誰も欲しいと思わない商品を売り出す企業は存在しません。

それに比べて「啓発キャンペーン」の対象の多くは「どちらかというと、やりたくない」行動です。考えてみれば当たり前ですよね。誰も自発的に動かないから、予算を組んでキャンペーンをやる必要があるわけです。

ですから難易度の高い「啓発キャンペーン」で効果的な行動デザインをつくれれば、それは消費財のマーケティングにも大きなヒントになるのではないか、と考えて私たち研究所としてもいくつかのテーマにとり組んでいるのです。

ではなぜ「啓発キャンペーン」はなかなか成果が出ないのでしょうか。

その理由を考えるためには、まず「なぜ人は行動を起こさないのか」を知る必要があります。

実は、そこには三重の問題が重なっているのです。

・問題1「自分に言われているように思えない」という問題

・問題2「やるべき行動には見えるが、やりたい放題に見えない」という問題

・問題3「やりたいと思っても、なにか腰が重い」という問題

◆問題の本質はエネルギーコスト!?

問題1はコミュニケーションの改善(意識の上で「自分ごと」と思わせるメッセージなど)でなんとか解決できそうです。特に広く国民全体に呼びかけるような啓発キャンペーンほど、結果的に誰も自分が当事者と思えない、つまり「自分ごと」になりにくいコミュニケーションが多いと感じます。

問題2は、そもそもやりたくない行動なのでちょっと工夫が必要です。がん検診が大事なのはわかっていても、「検査が痛そう」という不安や「なにかあるかも? と診断されること自体が怖い」という不安があってついスルーしてしまうのです。

ここがまさに行動デザインの出番です。ただ「あなたのためですよ」と一方的に広告で伝えるだけでは、どんなに強いタレントやキャラクターを使ってもまず無理です。これについてはいくつかアプローチ(手法)がありますので、本書の後半で詳しくご紹介したいと思います。

ここまで来てもまだ最後の難関が立ちはだかっています。それが問題3の「やりたいと思っても、腰が重い」というハードルです。それはエネルギーコストに関係しているからです。

我々、人間は有限なエネルギーを大事に節約することで厳しい環境を何十万年も生き抜いてきた存在です。だからエネルギーコストについては非常に敏感です。余計なこと、無駄なことをしない、という性質がそもそもの人間の本性なのです。

一方で生存を脅かすリスクは常に存在しています。外敵に襲われて全力で逃げること、危険に巻き込まれること(例えば道を踏み外して崖から落ちる、など)は非常にエネルギーコストを必要とするリスクです。

仲間はずれになることもリスクです。なぜなら群れからはずれて食物を探すのは大変なコストがかかるからです。つまりリスクはすべて、コスト要因になります。だからコストを節約するためにはリスクを低減させなくてはならないのです。

人が行動を起こす際のメカニズムがわかれば、消費者の気持ちが分かりやすくなる。効果的な広告で人の心を動かすには消費者の重い腰を動かす必要がある。逆にいえばそこをクリアするだけのインパクトを与えられれば大ヒットする可能性も。行動デザインを商品アピールに用いる方法が浸透してきて、ますます消費者は宣伝に悩まされることに。

たった一本の線が人を動かすこともある

最近の例では、成田国際空港に新しくできた第3ターミナルが「線」を上手に使って話題になりました。第3ターミナルはLCC専用で、第2ターミナルから630mも専用通路を歩かなくてはなりません。 15 分くらいかかりますが、連絡バスもけっこう時間がかかるので、多くの人は荷物をがらがら引きながら歩いています。空港利用料に反映する建設コストを抑えるため、「動く歩道」などはありません。目を休める観葉植物の植栽やきれいな看板などもなく、殺風景な通路を延々と歩かなくてはならないのです。

そこで空港側が考えたのが「連絡通路を陸上競技の長距離トラックに見立ててしまう」というアイデア でした。通路は陸上トラックのように赤と青のレーンに区分され、白いラインでコースが描かれています。途中、カーブや分岐が何カ所かあるのですが、ラインを辿っていけば迷子にもならず、いつの間にかゲートに到着できるようになっています。

よくできているのは、この通路デザインが「長距離をひたすら歩く」という行動を自然に誘発していることです。スポーツの疲労感は心地の良いものです。連絡通路を延々と歩かされる〈徒労感〉を、〈爽やかな疲労感〉と一瞬、錯覚してしまうような効果があります。「動く歩道」の快適さはありませんが、LCCを選択するエコノミー・ツーリストにとっては、まあ仕方がないかと納得しながら移動できるレベルの空間環境が提供されています。

この空間デザインがまさに「行動デザイン」であり、陸上トラックに見立てた通路がその行動を引き出す「行動誘発装置」になっているのです。

コロナ禍で密を避けるためレジに並ぶ列の床にテープが一定距離をあけて貼ってある店舗がある。これは特にテープの分だけ距離をとってと言われたわけでもないのに気分的にそれに従ってしまう人間の習性を利用したもの。行動誘発装置は至る所で見つけられるのでそんなところにも目を配って散歩するのもいかも。

行動デザインで人の心を動かすことで商品の購入に踏み切らせたり、世間では知らないところで僕らの習性を利用するものやことで溢れている。ちょっと斜めからものを見る習慣が身につくと思わぬ発見が!

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