財政格差は企業本位の法人税と労働法制及び富裕層優先の所得税から生じている。巨額の財政赤字の大きな要因は費用便益効果の乏しい巨額投資と法人税、所得税の減税である。消費税は逆進性があり、消費を削減する。企業本位でなく国民本位の財政運営をし、労働法を改め、法人税収、所得税収を高める。不要不急の支出を減らすことなどでも財政は健全化できるという提言がここに。
非正規雇用
非正規雇用労働者が近年大幅に増えてきた。その労働法制が企業側の理由でなされてきた。賃金が安く、雇用期間が安定しない。2013年には36%ほどになっている。その特性として、
- 賃金が安い。社会保険料を払わないことが多い。将来に不安である。
- 大企業より中小企業に多い。
- 雇用期間が決まっていない。
- 男性より女性に多い。
- 男女とも結婚できないことが多い。
- 雇用の調整弁となりやすい。
- 子供を持てない。持っても十分な教育ができない。
年収について見てみても、正規職員が400万円を超える人が多いのに対し、非正規では300万円以下の人がほとんどだ。推定年収比でも約52%にすぎない。このため結婚できない人も多く、子供を持てなかったり、持ったとしても十分な教育ができなかったりする。そのほかにも家を持てなかったり、生活が不安定だったりと正規社員との格差は賃金以外にも及んでくる。非正規はアルバイト、家計補助、定年になった人に限り現役世代は正規として雇うことを提言。若い人を非正規にすることは消費を減らし、社会保障の担い手を直接的に減らすことになるからだ。
経済格差
2015年ピケティ氏は『21世紀の資本』の中で資本収益率が経済成長率を上回り、格差が拡大するとしたが、日本では格差の拡大が生じており、その要因は全く異なる。それだけでなく、財政そのものが破錠的である。インフレになれば金利は低く、国の負担は少なくなるが、低所得者にはより大きなダメージを与える。実質的負担は国が少なくなり、低所得者への影響が高額所得者より大きくなる。
財政赤字拡大の一方で、所得税は軽減して、税収は小さくなり、赤字を増大させてきた。減税→景気拡大→増収を計画したが、結果的には赤字をひたすら拡大してきた。その一方で格差をひろげてきた。中でも法人税、所得税の減税が大きく作用してきた。所得税減税だけでなく、支出を増やす政策を取ってきたからである。結果的には将来世代に大きな赤字が残されてきた。
所得税減税は高額所得者の最高税率について70%→50%→40%と軽減されてきた。これにより所得の多い人ほど恩恵を受ける形に。それに加え利子、配当、不動産所得は総合課税でなく、分離課税なので高額所得者にはかなり有利になっている。逆進性のある消費税を上げなくてもこの優遇されている高額所得者たちに強い累進課税を課せば財源となる。法人税も42%→40%→37.5%→34.5%→30%と引き下げられている上さらに引き下げようとする動きも。国際的にみてみると 法定実効税率は7位、アメリカが1位で38.92%、日本は29.97%これもアメリカと同じ水準にすればかなり税収が増えるだろう。資本金10億円以上の企業の内部留保は266兆円ほどにもなり、税収を上げても大丈夫なだけの体力はあるだろう。役員報酬が上がる中、一般従業員の給与はほとんど上がっていない。企業本位の労働法制が跋扈し非正規社員などと合わせて格差は広がる一方だ。
消費税は8%以上にする必要はない
消費税は逆進性があり、消費を減らすので8%以上にしない。特に食料品については8%以上にしない。輸出免税制度を廃止する。インボイス制を取る。社会保障と一体化した目的税化しない。
消費増税後も国の借金は増え続けている。消費増税を当て込み歳出が増えてきたという側面もある。消費増税の一方法人税、所得税が減税されたきた。今こそこの多くの国民にとって不公平な税制を変えていくべきだと著者は言う
労働者派遣法の改正と社会保障制度の拡充
主要な是正を箇条書きにする。
- 貧困や格差をなくすために正規雇用が原則である。非正規雇用は合理的理由がある場合に例外的に認めるべきである。
- 特に労働者派遣については日雇い派遣の禁止と派遣料金のマージン率に上限規制を設ける。
- 労働を必要とする会社が必要な人を雇用することが原則であり、そこではじめて人間らしい生活ができる。人を雇うということはそれだけ責任を伴うことである。職場環境も高まる。
- 労働契約は期間の定めがないのが原則である。有期雇用は生活を不安定にする。
- 派遣対象業務を専門的業務に限定する。
- 登録型派遣を禁止する。
- 非正規雇用はアルバイト、家計補助に限定する。
そのほかにも同一業務同一賃金なども最近では議論されるようになってきている。社会保障の拡充については、児童手当に大幅拡充、保育所の整備と保育士の待遇改善、子育て女性の支援などが上げられる。
現役世代が減っていき、人口も減る中非正規雇用を増やして、給与を減らしても消費は増えるわけがない消費税もしかり。所得税、法人税について、応能負担を軸とする改正をし、経済的負担能力に応じて負担する民主的な税制を目指せばまだ救いの道はあるとする。現在がいかに不公平な税制で運営されているかを再び考えさせられる書籍だった。
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