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「教科書一冊で解ける東大日本史」市民講座「東大入試で学ぶ日本史」の書籍化


東大日本史の3大特徴:①教科書に書かれていないものは出ない、②示される資料に過不足はない、③「歴史の本質」を問う。自身の授業を解説したホームページが受験生や歴史ファンの間で人気を得た日本史の高校教員が、好評の市民講座「東大入試で学ぶ日本史」の内容をもとに書籍化。解答プロセスを通じて、いわば探偵である読者の皆さんが自分でたどり着いた犯人(答案)に、皆さん自身が驚かされ、時には目から鱗が「ボロボロ」落ちることもあります。そんな発見を味わってみたい方は是非、今から一緒に東大の問題を解いてみませんか。

次の⑴〜⑷の文章を読んで、下記の設問に答えなさい。

⑴律令制では、官人は能力に応じて異界が進む仕組みだったが、五位以上は貴族とされて、様々な特権をもち、地方の豪族が五位に昇って中央で活躍することは多くはなかった。

⑵藤原不比等の長男武智麻呂は、七〇一年に初めての任官で内舎人(天皇に使える官僚の見習い)となったが、周囲には良家の嫡男として地位が低すぎるという声もあった。彼は学問んにも力を注ぎ、右大臣まで昇った。

⑶太政官で政治を議する公卿には、同一氏族から一人出ることが一般的だった。それに対して藤原氏は、武智麻呂・房前など四人が同時に公卿の地位に昇り、それまでの慣例を破った。

⑷大伴家持は、七四九年、大伴氏などの天皇への奉仕をたたえた聖武天皇の詔書に感激して長歌を詠み、大伴氏の氏人に、先祖以来の軍事氏族としての伝統を受け継いで、結束して天皇の護衛に励もうと呼びかけた。

設問

奈良時代は、古くからの豪族を代表する「大伴的」なものと新しい「藤原的」なものが対立していたとする見方がある。律令制にはそれ以前の氏族制を継承する面と新しい面があることに注目して、奈良時代の政治と貴族のありかたについて、六行(一八〇字)以内で説明しなさい。

この設問に求められているのは、奈良時代の政治と貴族のありかたについて書く、律令制にはそれ以前の市属性を継承する「大伴的」な面と、新しい「藤原的」な面があることに注目して書く、一八〇字で書くの三つ。気をつけなければならないのは、求められているのは、氏族制を継承する古い面と新しい面を書くことであって、大伴氏と藤原氏について書くのではないということ。資料に取り上げられているのは、藤原不比等の長男武智麻呂、房前など藤原四兄弟(藤原四氏)と大伴家持です。教科書(山川出版社『詳説日本史B』)にある記述は以下の通り。

八世紀の初めは、皇族や中央の有力貴族間で勢力が比較的均衡に保たれる中、藤原不比等を中心に律令制度の確立がはかられた。しかし、やがて藤原氏が政界に進出すると、大伴氏や佐伯氏など旧来の有力諸氏の勢力は後退していった。藤原不比等は、娘の宮子を文武天皇に嫁がせ、その子の皇太子(のちの聖武天皇)にも娘の光明子を嫁がせ天皇家と密接な関係を築いた。不比等が死去すると、皇族の長屋王が右大臣となり政権を握ったが、藤原氏の外戚としての地位が危うくなると、不比等の子の武智麻呂・房前・宇合・麻呂の四兄弟は、七二九(天平元)年、策謀によって左大臣であった長屋王を自殺させ(長屋王の変)、光明子を皇后に立てることに成功した。しかし、七三七(天平九)年流行した天然痘によって四兄弟はあいついで病死し、藤原氏の勢力は一時後退した。 (四九〜五〇頁)

(奈良時代)教育機関としては、官吏養成のために中央に大学、地方に国学がおかれた。入学者は、大学の場合は貴族の子弟や朝廷に文筆で支えてきた人々の子弟、国学の場合は郡司の子弟らを優先した。学生は大学を修了し、さらに試験に合格してようやく官人となることができた。 (五六頁)

(平安時代初期)大学での学問も重んじられ、とくに儒教を学ぶ明経道や、中国の歴史・文学を学ぶ紀伝道(文章道)がさかんになり、貴族は一族子弟の教育のために、寄宿舎に当たる大学別曹を設けた。 (六四頁)

教科書に書かれていないことは問題にならないという東大日本史の鉄則により、独自の東大チャートを使い問題を解いていきます。東大ほど解答例がバラバラな大学はないとよばれるほど解答例は多い。以下著者の解答例を紹介。

著者の解答例

奈良時代は、律令制の元個人の能力に基づく官僚制度が導入されたが、実際には、中央の有力豪族が特権を持つ貴族として政治を独占し、地方豪族は排除されていた。当初官僚原理は重視されず、有力氏族が特定の職能を世襲で担うという従来の形態が存続していた。しかし貴族の中から儒教的学識を備えた官僚的政治家が現れ、慣習を破って一族で台頭し、氏族制を継承する勢力は後退していった。

受験するわけではない人も、日本史の教科書を一冊買って、東大日本史を勉強し直すのも面白いかもしれません。実際、著者の市民講座「東大入試で学ぶ日本史」では学生から高齢の方まで多くの人が受講しています。日本史をかじったことがある方なら懐かしく思いながら読み進めることができると思います。

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