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「怠惰」なんて存在しない|デヴォン・プライス|終わりなき生産性競争から抜け出すための幸福論

怠惰=悪と考えるのは植え付けられた信念の曲がったところ。人はそんなに無理して働かなくてもいいし価値や評価は自身で決めるもの。怠惰に罪悪感を感じる必要はないし全てに精通する必要もない。

資本主義が「怠惰のウソ」を生んだ

「怠惰のウソ」は米国の建国以来の歴史と深く関連している。勤勉を善とし怠惰を悪とするこの価値観は、国民的な神話に織り込まれ、全国共通の信念となった。帝国主義と奴隷制の影響は根強く、さらに貿易大国として他国への影響が大きいために、「怠惰のウソ」は、世界中の国々や文化にまで広がってしまった。

英語におけるlazy(怠惰な)という語の初出は1540年で、当時から、仕事や努力を厭う人を非難するニュアンスで使われてい た。言語学的には、中期低地ドイツ語で「虚弱な」「弱い」を意味するlasichに由来するとされている。あるいは、古英語で「偽の」「邪悪な」を意味するlesuを語源とする説もある。

いずれの語源でも、「怠惰」という言葉は2つのニュアンスを伴っている。誰かを怠惰だと言うときには、「(肉体的または精神的に)弱いために仕事ができない」という意味だけでなく、「能力が不足している人は倫理的にも堕落している」という意味合いもあるのだ。要因となる疲労や気分の落ち込みに対する同情のニュアンスは皆無で、「人間として根本的に間違っている」というメッセージが、「怠惰」という言葉自体に含まれている。

つまり、怠惰な人間は悪質な詐欺師であり、苦しんでいても自業自得だという考え方が、「怠惰」という言葉ができた当初から埋め込まれているのだ。

「怠惰のウソ」が米国に広まった大きな要因として、ピューリタン(清教徒)の移住が挙げられる。ピューリタンの間では、勤勉さは「神に予め救済の対象として選ばれた証し」と考えられ、勤勉に働けばより善い人間になれると信じられていた。逆に、目の前の仕事に集中できない、あるいはやる気のない場合には、地獄に堕ちる運命にある証拠だとされ た。それならば、与えられた仕事ができず困っている人や仕事で失敗した人に同情する必要はない。成功への意欲がないのは、神に選ばれて天国へ行ける人ではない証拠なのだから。 植民地米国にピューリタンが移住して以降、この思想は信仰心の薄い入植者にも広く受け入れられた。「怠惰」を軽蔑し罰する価値体系は、さまざまな理由により強く支持され、政治的にも利用されていった。

よく僕の病気は怠惰なだけと切り捨てる言い方をする人がいるが、半分は合ってて半分は間違っている。実際何もできなくなうくらい頭の中が混乱しその場で固まってしまったりする発作を経験した人ならばわかるはず。しっかりやろうという気持ちが強ければ強いほど逆に厳しくなる病気なのだから。それを怠惰という人もいるがまるでわかっていない。

怠惰は心身の警告信号

生産性や燃え尽き症候群に関する実証研究によると、人間の仕事量には上限がある。そしてこの限界は思っているよりずっと少ない。たとえば、週 40 時間労働(米国では人道的かつ適切な労働時間とされている)は、大半の人には長すぎて負担が大きい。

人間は機械ではない。私たちの心身は、反復作業や気を使う業務に1日8時間以上も耐えるようにはできていない。それでも多くの人は自分の限界を超えて、健康でいられる時間以上、頑張って働こうとする。

「怠惰のウソ」は、人が無理なく続けられる以上の生産性を目指すよう、私たちを焚きつける。その結果、多くの人が壊れるギリギリのところで生きている。その極限で激しい衝突を起こす人もいる。ジュリーは心身を壊してようやく、仕事と私生活の境界線が必要だと悟った。マックスもそうだった。私も、のんびりするしかないと気づくまでは、何カ月も体調不良に苦しんだ。だが本来は、生き方を転換するために激しい苦痛を経験する必要はない。私たちの身体と脳は完全に心身が壊れる前に、段階的な信号を細かく発して、「ブレーキを踏め」「生産性より健康を優先せよ」と伝えてくれている。それなのに、「怠惰のウソ」が「信号など極力無視せよ」と命じてくるのだ。

レオは、いつも自分を追い込んでは挫折と燃え尽きを繰り返すという珍しい才能の持ち主だ。いつも過剰な量のタスクを背負い込んでは、結果、持ち場を広げすぎて大変なことになっている。最近になってようやく、自分のできる限界を理解し、心身の発する「怠惰」の信号を無視せずに受け止められるようになった。だが、ここまでの長い道のりは挫折だらけで苦しいものだった。

怠惰を悪として職場でその人を責めたりすることは正直自分にも合ったが実際自分が病気にかかってからはこういうことかと腑に落ちた。まさか自身がその病魔に襲われるとは思ってもみなかった。病kに対する理解が進みつつある世の中となり皆が苦しみから解放される日も少しづつ近づいている気がする。

生産性とそれを妨げる怠惰の実態。怠惰と呼ぶにはあまりにも酷な人たちにスポットを当てると少し見方が変わるだろう。

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