経営者の直感やセンスに依存する企業戦略。その源流はどこにあるのかを求めながら14人の経営者の「好き嫌い」を対話を通じて紹介、経営と戦略の淵源に迫ります。
接待業が嫌い
楠木 僕はここ数年、FRMIC(ファーストリテイリング・マネジメントイノベーションセンター)のお手伝いをさせていただいています。その関係で柳井さんの時間の使い方も多少は知っていますが、きっちり午後4時にお帰りになりますね。
柳井 九段下に本社があった数年前は6時か7時くらいに社を出ていたので、4時に帰るようになったのは、六本木ミッドタウンに移ってからです。6時くらいで帰るなら、まあ普通ですよね。
楠木 いや、社長業をやっていらっしゃる方だと、6時だって早すぎるぐらい早いでしょう。夜は会食の予定がびっしりという経営者が普通だと思います。柳井さんは、仕事上の付き合いはお好きではない?
柳井 ほとんどないです。あるとすれば、一緒にゴルフをすることぐらいです。
楠木 先日、ある銀行の偉い方と話をしていたら、「今年に入って、ゴルフをしなかった土曜日はない」とおっしゃっていました。
柳井 そうでしょうね。銀行や商社の人は、いわば接待業ですから。われわれは物をつくって売る業、つまり実業です。
楠木 僕が見る限り、実業の経営者でも柳井さんよりは接待や夜の仕事に時間を割いている方が多いですね。
柳井 それが駄目なのだと思いますよ。
楠木 (笑)。この対談は、経営者の個人的な好き嫌いをうかがうというテーマなのですが、良し悪しの話になってしまいそうですね。
柳井 いや、良し悪しではありません。僕は接待業を好みませんが、接待業が好きな経営者、少なくとも「付き合いも嫌いじゃない」という経営者が多くいるということでしょう。そこが日本の経営の悪いところです。もっと会社を良くしたいのなら、そんなことをしている時間はないと思いますね。
接待より他にすることあるだろ会社を良くするためにはといったご意見。賛成です(笑)取引先との関係を良くするためには業績を上げるのがいちばんの課題であるべきで接待なんかしている暇はないと思う。接待好きな取引先にもきちんと伝えてやめるべき。
「川の流れのように」ゆったりと
楠木 これも僕の推測で、おそらく当たっていると思いますが、前澤さんは「川の流れのように」お仕事をしていらしたように思います。小学生のときのクワガタビジネス、 10 代から始まった音楽活動に続く輸入レコードやCDのカタログ通販、そしてZOZOTOWN。すべては自然につながっていて、なりゆきでずっとやっていらして、今に至るように感じます。事前にきっちりと計画を立て、「いつまでにこうなる」ときちんと先々のビジョンを決めてそれを全力で実現していこうというタイプと、「川の流れのように」事の成り行きに身を任せていくタイプ、経営者もこの2つに分かれるように思います。これにしても良し悪しではなく好き嫌いで、その人のスタイルなのですが、前澤さんはまさに後者のタイプですね。僕も完全に「川の流れのように」「時の流れに身を任せ」系なのですが、経営者になると、起業までやその後の初期の段階では「川の流れのように」でも、上場して、投資家に対しても責任があるとなると、スタイルを変えることも少なくない。前澤さんの場合、これほど会社の規模が大きくなっても、「川の流れのように」系のスタイルを持続しているところが面白い。
前澤 そうです。いまだに川の流れのように、やらせてもらっています。
楠木 ご自分でも現在の上場企業の経営の仕事に矛盾はまったく感じませんか。
前澤 資本市場に矛盾は感じますが、もちろん大きな視点での資本市場です。1年間の計画をバッと出して、ぴったりのときもあれば多少上下にブレるときもありますけれど、抵抗はないですね。そのくらいはまったく、川の流れの範疇です。
楠木 前澤さんの川は、ゆったりと大きそうですね。
川の流れのようにごく自然に儲かるビジネスをチョイスできるのは天才では?なかなか皆、そうしたくてもそのセンスがないのが現実。
日本を代表する経営者に聞く「好き」「嫌い」と経営の戦略ストーリー。
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