例えば「ミスター」こと長嶋茂雄は、ヘルメットが脱げるほどの豪快な空振りをしてファンを沸かせた。長島はわざと大きめのヘルメットをかぶることで脱げやすくしたのだ。「空振りをする、ヘルメットがブッ飛ぶ、するとお客さんは風を感じるんです」ーーという〝長島語録〟を残しているが、これぞ、まさに「ヤクザ式」なのである。言葉の使い方から態度、人間関係術まで、全人格を駆使して、自分に値打ちをつける。自分を20倍高く売る技術がここに。
成功者は武勇伝によってその名を高め、信頼、人気、人望につなげる
二〇一一年、進次郎議員は自民党神奈川県連の勉強会で、こう発言した。「自民党には〝三つの大罪〟がある。少子高齢化が来るとわかっていながら社会保障制度を整備しなかったこと、九百兆円もの国の借金を作り上げたこと、そして原発を安全だと言いながら推進し、事故を起こしてしまったことだ」自民党議員が自民党に噛みついたのだから、大きなニュースとなり、小泉純一郎元首相のセガレながら、進次郎議員は骨のある政治家として評価された。あるいは自民党が政権与党に復帰した二〇一二年十二月、進次郎議員は国会で安倍晋三総理に迫る。「安倍政権は原発事故以来、東日本大震災以来、初めての自民党政権だ。かつての自民党政権時代、間違った安全神話のもとに原発を推進してきた責任をまぬがれることはできない。おわびと反省から始めるべきだ」
こうした武勇伝が〝進次郎人気〟を後押しした。今や彼を語るときには必ず引き合いに出される。武勇伝はスキルの一つと割り切り自分に合った誇張したストーリーを作ることだというが、大抵の一般人がこの武勇伝を自分で語ろうとするとき、カノエラナの『おーい兄ちゃん』という楽曲の歌詞にあるように「おーい兄ちゃん そこの酒臭い兄ちゃん 後輩に偉そうに人生語ってんじゃねーよ」とか「何それ、自慢?」となってしまい自分以外のLINEグループを作られ、ひたすらあなたに対する愚痴がタイムラインに流れることに。武勇伝は自分で語るものではなく他人を介して伝わっていくものと心得ておきましょう。
ヤクザは「忙しい」と口にしない
「忙しいですか?」と問えば、「ヒマだよ、ヒマ何かいい話ないの?」たいてい、こんな言葉が返って来る。ヒマをアピールすることで仕事をまわしてもらおうとする魂胆もあるし、「忙しい」と答えて、おいしい話を逃すかもしれないという計算もある。「そんなに忙しいなら、ひと口乗せてくれよ」と言われるのを防ぐ意味もある。ヤクザにとって「忙しい」は、「百害あって一利なし」ということだ。だが、「ヒマ=無能」である。だから、「ヒマだ、ヒマだ」と言いながら、きっちり忙しさを演出し、「忙しいんだな」ーーと相手に思わせるのが「ヤクザ式」なのだ。
この話は前にもどっかで聞いたことがあったのでヤクザ界の常識みたいなものなのだろう。よく世間では「忙しい自慢」が取り上げられ疎まれるが、確かにお前の忙しさはどこからきているのか?無能だから時間管理ができないだけなのでは?とか自分の能力を超えて仕事を引き受けているのでは?とかツッコミどころは満載だ。
安価なプレゼントで男を上げる
親分は組員が手柄を立てたときや、上機嫌のときは、「おう、これやるぜ」と、身につけているモノをくれてやる。若い衆にとって付加価値は「親分にもらった」と「親分が身につけていたもの」という二点で、これに感激する。ということは、若い衆が周囲にそれを見せびらかせ、「どや、親父にもろうたんやで」と自慢できるものでなけれな意味がない。
こういったものの中で定番は腕時計だ。目の前で腕から外して渡したりするのだ。若い衆は、「見てみい、この時計。親父にもろうたんやで」腕を突き出し、自慢できるのだ。これが会社の上司だったらどうだろう。上司の自宅に行った時に奥さんが赤が好きだと言っていたなら、赤色のスカーフを奥様にと海外出張の手土産を持っていく。カミさんに土産を持って帰るというのは、亭主にしてみれば気分がいいものだ。それに加えて、赤が好きだったことを覚えていたという付加価値もつく。値打ちをつけるということはこういうことだ。
しょっちゅう来ないからこそ大事にされる客
「俺、月に三十万ほど飲み代につかうんだけど、たとえば一回三万円なら月に十回飲みに行ける。だけど、それじゃ、店で〝いい顔〟にゃならない。だから逆をやる。一回十万円で月三回にすれば〝いい顔〟になる。ドカンと三十万使って月一回だともっと〝いい顔〟になるんだ」
こまめに顔を出した方が常連として〝いい顔〟になるのではと思うが、それが逆だという。上客は他の店でも気前よく金を使う。なのでもっと頻繁にうちの店にもきて欲しいという店の心理から愛想も良くなる。せっせと通って来る〝安い客〟は店にとっては結局、雑魚になってしまう。
他にも頼まれごとをしたら、無理かも、難しいかもとハードルを上げることでその仕事の値打ちは大きくなるとか、いつも奢って来れる上の人に、「うまくて安い焼き鳥屋を見つけたんで、お連れできるのはこんな店しかありませんが、いつも奢ってもらっているお礼にご馳走させていただけませんか」と上司も心をくすぐる方法などが載っていて面白かった。ヤクザの世界も人間関係で成り立っている以上多くの知恵が詰まっているそんな書籍でした。
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