サイコパスは統合失調症などとどこが違うのか、わからない方も多いだろう。『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士のような「高い知能を持ちながら、冷酷な猟奇殺人を次々と犯す人物」を漠然と思い浮かべる人もいるかもしれません。もしくはウソばかりついている人物のことを「サイコパス」と揶揄する例もあるだろう。脳科学の観点からサイコパスを再定義する書籍。
サイコパスには妄想や幻覚といった症状はない
サイコパスは、重度の統合失調症などとは異なり、妄想や幻覚といった症状はありません。まともな意思決定ができないような心神喪失・耗弱状態ではなく、むしろ意識は明晰であることが今日ではわかっています。他の精神疾患の場合、患者自身が悩んだり、苦しんだりします。サイコパスに関しては、本人にその状態に対する不快感がほとんどないのです。
サイコパスの連続殺人犯の例で見ると、人を殺すことに対して深い苦悩も感じなければ、感情的な暴力衝動も持たず、ほとんど事務的にも見える態度で連続殺人を行なっている。「感謝祭のディナーで七面鳥を切る時に感じるワクワクした気持ちで、被害者を拷問したり切り刻んだりする」と形容するサイコパスの殺人鬼も。よく殺人事件が起きると周辺への取材中真犯人がインタビューに平然と冷静に答えていたことが逮捕後わかったりすることがある。遺体を切り刻んだものを入れたダンボールを目の前にし捜査官に「残っているダンボールも開けますか?」と自身たっぷりに言い放った犯人はその場ではその冷静さから逮捕を逃れたが別の証拠からのちに逮捕されることとなる。考えてみれば捜査員が家の中にズカズカ入ってきている状態では、犯人じゃなくても動揺するのが普通だろう。そういった一般の人が感じるドキドキが暴力や反社会的行動への抑止力となる。サイコパスは心拍数が低くモラルに反する行動を取ってもこのドキドキがない。「捕まったら大変なことになる」という恐怖や不安を感じないのだ。
「好意の返報性」を悪用
職場や恋愛など、狭い人間関係の中で、ときに「認められたい」という気持ちを充たされ、ときに激怒によって自省を強制されるうちに、次第にその人の様子を窺いながら行動するようになってしまうという経験をしたことがある人もいると思います。もしかしたら、その相手はサイコパスだったかもしれません。極端な場合には、その人の許可なしには行動できなくなってしまう、ということさえ起こります。
サイコパスは目の表情や心情の揺れ動きを読み取り、ここまではいじめて大丈夫、ビクビクしたところで持ち上げれば〝落ちる〟といったテクニックを用い冷静に〝カモ〟を操ります。DVを繰り返す夫や恋人と優しい時もあるという理由で別れられない女性と同じ状態だ。もしかしたらその夫や恋人もサイコパスかもしれない。
ケヴィン・ダットンのセルフチェックリスト
- 事前に計画することはほとんどない、行き当たりばったりのタイプである
- バレなければパートナー以外の人と浮気してもよい
- もっと楽しい予定が入った場合、以前からの約束をキャンセルしてもよい
- 動物が傷ついたり、痛がっているのを見ても、まったく気にならない
- 車の高速運転、ジェットコースター、スカイダイビングをすることに興味を引かれる
- 自分の欲しいものを手に入れるためには、他人を踏み台にしてもかまわない
- 私には説得力がある。他の人々に望むことをさせる才能がある
- 決断を下すことがとても早く、危険な仕事に向いている
- 他の人々がプレッシャーで潰れそうになっていても、自分は落ち着いていられる
- もし自分が誰かをだますことに成功したら、それはだまされる側の問題である
- 物事が間違った方向に行く場合、その多くは自分ではなく、他人のせいである
以上の質問を0点から3点まで付けて集計する。
- 0点‥‥‥「まったく当てはまらない」
- 1点‥‥‥「当てはまらない」
- 2点‥‥‥「やや当てはまる」
- 3点‥‥‥「当てはまる」
このテストでは18点から22点が平均とされ、29点から33点が極めて稀、サイコパスが疑われるとされています。僕は平均でした。このテストは犯罪者を診断することを目的としたものではなくもう少しカジュアルなチェックリストで、勝ち組サイコパスを見つけ出すものと言ってもいいかもしれないとある。
勝ち組サイコパス
歴史上の人物には、排除されずにのし上がった勝ち組サイコパスだと思われる人物も散見されます。あくまで個人的見解であり、脳機能画像やDNAなどの証拠が存在するわけではありませんが、日本ならば、織田信長がその典型と言えそうです。旧態依然とした秩序の破壊者であり、神仏に対するおそれを知らず、多くの武将達を虜にした、極めて魅力的な存在でした。
他にも毛沢東やロシアのピュートル大帝もサイコパスであったと思われる。意外なところでは20世紀に活躍した聖女マザー・テレサもそうだったのではないかと指摘する学者もいる。アメリカ陸軍士官学校心理学・軍事社会学教授を務めたデーヴ・グロスマンの指摘によれば「戦場でためらいなく敵兵を撃てるのは100人に1人か2人」しかいないそうです。これはサイコパスの確率と同程度。最近の例でいうと、アップルコンピュータ(現在のアップル)の共同創設者の1人スティーブ・ジョブズは世界で最も洗練された勝ち組サイコパスだったのではないかと考えられる。
こうしたサイコパスの特性を考えると面接ば価値を重視した採用試験やAO入試には問題があると指摘。過剰に魅力的で確信を持って堂々とした話ぶりをするサイコパスばかり通る試験になりかねないからだ。弁舌に長けたサイコパス、あなたの周りにもいませんか?
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