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誤解だらけの日本美術史 デジタル復元が解き明かす「わびさび」

      2019/03/01

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デジタル復元により本来の姿が浮かび上がる国宝。実は真っ赤だった阿修羅、キラめく銀閣、ド派手な風神雷神など。現代人が「わびさび」の芸術として親しんでいる国宝は、初めからもののあわれで、渋くて枯れた趣だったわけじゃない。国宝だから触る事さえ許されなかった作品を、当時の色彩で体感する事で、頭で想像していたのとはまったく違う世界に私たちは遭遇する。復元してみたら思っていたのと全然違うと驚愕する事請け合い。

俵屋宗達と尾形光琳は師弟関係ではなかった

実は、俵屋宗達の芸術を「かっこいい!」と思った尾形光琳が、独自の解釈も加えながら、宗達の表現方法を勝手に真似したのである。ただ、宗達とは師弟関係にもなったことはない上、直接指導を受けたこともない。それどころか、宗達がこの世を去った後に、光琳は生まれている。宗達と光琳は同じ時代を生きていないのだ。

風神雷神図屏風で有名な俵屋宗達と尾形光琳は師弟関係ではなかった。だから表現方法は似ていても、個々の解釈が微妙に違う現象が起きているのだ。そこで光琳は風神雷神の目線を変え勝手に横にらみに変更したのだ。復元した後の写真も載っていて、鮮やかな緑が印象的だった。

まるで双子の高松塚古墳

キトラ古墳と高松塚古墳、二つの古墳は関連性が深くセットで論じられることも多い。いわば双子の兄弟のようなモノで先に発見された高松塚古墳の方が兄貴分と言えるだろうか。四方の壁面と天井の復元も進んでいて「五行」に基づいて描かれているのがわかる。

まず「五行」はそれぞれに方角が伴う。

木→東、火→南、土→中央、金→西、水→北

普通方角といえば東西南北の四つであるが、「中央」をプラスして五つとなっている。さらに色も指し示す。

木→青、火→赤、土→黄、金→白、水→黒

この「五行」と色の関係をより端的に示しているのが、「四神(青龍、朱雀、白虎、玄武)」だ。高松塚古墳壁画のそれぞれの壁の中央に一体ずつ描かれている。盗掘に関するエピソードも記されていておそらくキトラ古墳と高松塚古墳の両古墳の盗掘犯は同一とみられている。先に侵入したのは高松塚古墳でその経験がキトラ古墳に生かされていて、盗掘の手口がスマートになっているという。はじめに入った高松塚古墳は南壁が大きく破壊され、描かれていた朱雀が失われてしまっているのに対しキトラ古墳の南壁は端っこを効率よく小さく破壊し侵入している。それにより朱雀が奇跡的に残されていたのだ。

銀閣寺

復元していくと派手な色彩部分が屋根付近に集中していたことがわかる。月を愛でるための銀閣寺は月明かりが輝く夜には屋根の裏側は影に隠れて見えずらくなる。それにより、この派手な色彩部分が月を見る上で邪魔にはならなかったことが分かり、計算し尽くされた「わびさび」が垣間見える。

時の移ろいが絡んでくる日本美術

キリスト教絵画であれば、祭壇に綺麗に掲げられ、正面から拝む。印象はに代表される近代絵画も、壁に飾って正面から見る。しかし日本美術には、時の移ろいが絡んでくるのでそうはいかない。理想は、移ろいゆく太陽や月の明かりの中で時間をかけて鑑賞することだが、現実的にはなかなか難しい。作品の前でひとりひとりが時間をかけることは無理だし、レプリカで疑似体験するにしても、別途予算が必要になる。しかしそれができないにしても、光によってどれだけ表情が変わるか、時と日本美術がどれだけ深い関係にあるか理解した上で、鑑賞する努力はしたいものである。そうしないと、奥ゆかしい日本美術は本当の表情を見せてくれない。真のメッセージがわからないからつまらなくなり、日本人なのに西洋美術の方が詳しい人が多くなる。そんなおかしなことが起こっているのが、今の日本なのだ。

美術館で作品の前に立ち作品を眺めるそれだけでは日本美術の力は発揮されない。時の移ろいや光と影の具合などによっても様々な表情を見せる日本美術は鑑賞する人にも努力を求めてくる高尚なものだということがわかる。

阿修羅像の復元

太陽に照らされ紅く映える肌、そしてアロハの模様のような短パンにサンダル(本当にサンダルのようなものを履いている)。ドレッドぎみの長い髪を脳天で束ね、ちょっとだけヒゲを生やした姿。さらに、サイドの顔面は耳をすっぽり覆う大きなヘッドホンに見えてくる……。

復元された阿修羅像の姿はまるで「サーファーの兄ちゃん」である。阿修羅像は「八部衆」と呼ばれ、現代で言うならばユニットようなものである。8人の守護神ユニットで釈迦如来に仕えることを基本とする。阿修羅はもっと人数の多い「二十八部衆」にも属しており、このユニットという形態はAKBのメンバーが何人かで他のユニットを組んだり、ソロで活動したりというのと似ている。

皆さんにも馴染みのある国宝級の作品のデジタル復元により日本美術の奥ゆかしさを感じとれる内容となっております。歴史の教科書などでよく見る作品も復元するとまた趣が違い当時の様子がうかがえます。

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