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下り坂をそろそろと下るからあたらしい「この国のかたち」をみる

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現在の日本を成長が望めないものとし、急坂を登っていた頃の日本と違いこれからの経済等を「下り坂をそろそろ下る」という考えのもと、勝てないまでも負けない戦略を地方の活性化を含めたの成功例を交え綴った書籍。

スマホの普及によるインターネットという娯楽の台頭

現在ではスキー人口がが減少しているという、娯楽の少なかった過去と比べスノーボードを合わせてもこの20年で半数まで減ってきているという。かつてスキーは女性を旅行に誘える最も有効で健全な手段だった。海水浴なども同じで、スマートホンの普及で全体的にインドア指向になっているという指摘もある。これは地方で顕著な傾向があり、人々が車で移動するような社会システムから、子供は家でゲームをするしかなくなる。もちろん若年層の貧困化という問題もある。地方では街中に、映画館もライブハウスもなくし、つまらない街、男女の出会いのない街にしておいて、行政が慣れない婚活パーティーを主宰するなど本末転倒だと著者は言う。

日本はもはや工業立国ではなく、成長社会に戻ることはない。

日本人のほとんどの人の中にある無意識の優越意識を、どうやって少しずつ解消していくのかということ。

この寂しさに耐えられずヘイトスピーチを繰り返す人々や、ネトウヨと呼ばれる極端に心の弱い方たちをも、どうやって包摂していくのかという課題です。これもまた時間のかかる問題です。

少子化対策で最も欠けてること

子育て中のお母さんが、昼間に、子供を保育所に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指を指されない社会を作ること。

これは生活保護受給者や雇用保険受給中の人が昼間に映画を観に行く時などとも一緒だ。ヨーロッパの多くの美術館や劇場では、学生割引や障害者割引と並んで失業者に対する割引も普通にある。日本だとまだまだ「求職活動を怠っている」と言われ、保険の給付を切られてしまうような政策がまかり通っている。少子化対策の点では女性だけが、結婚や出産によりそれまで享受していたものを犠牲にしなければならない不条理な社会は変えていく必要がある。大都市圏では「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれ、女性が社会進出を果たしても、きちんと子育てしやすい環境を作り、男性も育児に参加する。待機児童問題は、大都市圏だけで75%を占めていて数のみ見れば極めて少数の自治体が抱える問題で、その他の地域では、子供が欲しくてたまらないという自治体がほとんどで、ミスマッチが生じている。これは企業の一極集中からくる問題だ。地方における少子化問題は「ワーク・ライフ・バランス」ではなく「非婚・晩婚化」で結婚できればまだまだ子供を生んでくれるというデータもある。

リベラルアーツと演劇

全編通して、著者の関わった地方活性化の施策の紹介(城崎国際アートセンター等)と教育改革等について語られている。アメリカの大学ではほとんどで、リベラルアーツ(教養教育)を基軸としており、そこにはほぼ例外なく演劇学科が設置されている。日本では、大学で演劇をやっていたなどと言うと就職できないが、アメリカでは逆だ。演劇が、幾つものポジションを同時にこなし、役割を流動的に変化させなければならない芸術だからで、それにより社会性を獲得できるからだ。

確証バイアス

人は誰でも、自分の主張に都合のいい情報、自分が下した判断を後押しするような情報を集めてしまいがちになる。またその逆に、反証となるような事実からは目を背けたり、あるいはその収集を怠ってしまう。

ネット社会はこの「確証バイアス」を加速させる傾向にある。私自身も、日常生活では、自分の感性に心地いいサイトしか見ないし、リンクも貼らない。

これは僕にとっても耳が痛い話で、いろんなテーマの本を読んでいるつもりでも気が付いたら、同じような趣旨の本ばかり選んで読んでしまう。

日本の未来について

最低賃金の引き上げ、ブラック企業の取り締まり、マイノリティーの権利の保障課題は山積しているが、平日の昼間に見たい芝居やライブがあれば気兼ねなく休暇が取れ、「あいつサボってる」と感じることのない職場作り。それが筆者の考えるコミュニケーションデザインであり、コミュニティーデザインだ。

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