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『迫りくる「息子介護」の時代 28の現場から』平山 亮

      2019/05/03

息子介護とは、嫁でも娘でも妻でも夫でもなく、息子が親の介護をすること。今、息子介護者は着々と増えている。やがて親類や会社、家の近所を見渡せば、あの男性もこの男性も息子介護をしている、という日が必ず来るのである。著者は28人の息子介護者からの聞き取りをもとに、彼らがどんな思いを抱きながら周囲の人々と関わり、家事や介護をこなし、仕事との両立や折り合いをつけたりつけなかったりしているかを、丁寧に描き出す。

親の介護と、「妻」との関係

前にも指摘した通り、配偶者の有無は息子の介護への関与度を左右する。独身の男性に比べ、妻のいる男性の方が介護への関与が少なくなることは、社会調査データの計量分析によってほぼ一貫して示されている。また、「うちで親を看ています」という既婚男性は少なくないが、実際に親の世話を主にしているのは彼らの妻であることは少なくない。では、息子自身にその意思がありさえすれば、妻は手を出さずに済むのだろうか。いや、問題はそれほど単純ではないだろう。義理の親の介護を夫に任せることは、妻にとっても容易な選択ではないかもしれないからだ。たとえば、「家族の世話をするのは女性として当然」という〝常識的〟な考え方や、「夫の親の面倒をまったく看ないお嫁さんって、どうなの」という〝世間の目〟は依然としてある。自分は手を出さず、介護する夫を傍観しているとき、妻はこれらの圧力を一身に浴びている。「ダンナがやってくれて助かる」と、ただ喜んでいるわけにはいかないかもしれない。夫の親と同居しているときにはさらに難しい選択になるだろう。妻にとって、ひとつ屋根の下で介護に携わらないことは、心理的ストレスになるかもしれない。イギリスの社会学者クレア・アンガーソンによれば、距離の近さは、介護しないことに対する女性の罪悪感(「こんなにそばにいるのに、私、何もしていないなんて」)を増幅させる働きがある(*注5)。介護を必要とする高齢の家族の近くで暮らすとき、女性がその介護者になりやすいのは、単に近くて都合がよいから、ではない。そこには、女性に介護役割を引き受けさせる「磁場」があるのだ。

僕の死んだ父がたの祖母の介護は僕の母親が中心となって行なった。長男の嫁ということもあって、次男や長女と比べて比重が重かったことを今でも根に持っていて、事あるごとに当時の不満を漏らす。終わった事なのだが、協力的でなかった人々に不満爆発といった感じだ。息子である父は仕事もあり制約の中でそこそこ協力的ではあったものの、母にしてみれば自分1人に押し付けられた感が否めなかったのだろう。

「息子の看方」とその見方

両親と同居していた大伴さんは、父親の介護をしていた母親が急に亡くなったために、後を引き継ぐ形で介護者になった。それまでは家事は母親がすべてやってくれていたため、大伴さんには介護に必要な家事スキルがまったく備わっていなかった。認知症の父親を頼りにもできないし、必要に迫られて始めた家事だったが、ほぼ初体験に近いものが、そううまくできるはずもない。料理が苦手なのはもちろんのこと、掃除や家の片付けも、「おふくろが見たら、怒るんじゃないか」と自分で言うほど、適当である。だが、大伴さんは、家事ができないことに不都合を感じていない。四〇年余りもやってこなかったものがうまくできるはずがないし、第一、自分は男である。なかには家事が得意な男もいるかもしれないが、下手な方が「一般的」なのだから、自分もできなくたって当然である。「まあ、自分も家事ができない男の一人だってことですよ」と大伴さんは家事が下手な自分を笑い飛ばす。食事だって無理に手の込んだものをつくらなければ何とかなるのだし、いまは栄養価の高くておいしいお惣菜を手軽に買える時代なのだから、どうしてものときはそれに頼ればよい。

僕は親と同居の長男なのでこれから介護が必要になる可能性が高い。幸い今の所、両親ともに病気などなく元気だが、いざ介護となったらどのようなケースが考えられるだろうか?僕は独身なので、同じく独身で世田谷に住んでいる妹を呼び戻すだろうか?僕は社会経験を積む前に統合失調症を患いひきこもりがちになったので、様々なことが人並みにできないのではないかと不安になる。お金が助けてくれるだろうか。

家族外のネットワーク

自分が身のまわりの世話をしに行くのは週末くらい、残りはデイサービスとヘルパーを頼む。平日の食事は配食サービスも使えば何とかまかなえる。それが呉田さんの当初の 目論見 だった。だが実際に介護を始めてみて、呉田さんが母親のもとへ駆け付けなければならないのは、想像していた以上に頻繁になることがわかった。ケアマネジャーらとの打ち合わせは母親の自宅で行なうし、ヘルパーや母親の隣人も、何か様子がおかしいことがあれば、すぐに電話をかけてきて呉田さんを呼び出す。何より、母親自身が頻繁に連絡をよこしてくるのである。何かあったときのためにと、簡単に自分につながるように設定した携帯電話を母親に渡しておいたのだが、母親は気がかりなことがあるたびに、それで電話をかけてくるのだった。不定期的に席を外さねばならず、デスクにいても電話に注意をそがれてばかり。作業がはかどらない日も増えてきたが、もし自分の仕事がこれ以上遅れれば、職場の誰かがそのフォローに走らなければならなくなる。以前の自分のように、親の介護などなかったころのように働き続けることができない一方、介護があるからと同僚たちにアシストを頼み込んでまで働く意味はあるのだろうか。

僕が直面するかもしれない「息子介護」両親が今のまま元気でいてくれればありがたいが、そうなるとは限らない。デイサービスやヘルパーなども活用して自分の負担を軽減して自分が倒れないよう注意せねば。元気で親を支えられるよう、健康に気を使って生きねばと思う今日この頃である。

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