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誰がアパレルを殺すのか。あらゆる業界で起こる地殻変動の縮図

いつのまにか服を買わなくなった。デパートにもほとんど行かない。こうした傾向はぼくだけのものでないらしい。杉原淳一・染原睦美の『誰がアパレルを殺すのか』を読んでよくわかった。経済誌の若い記者がアパレル業界を取材・分析した本である。ワールドや三陽商会など、大手アパレル企業は業績悪化に苦しんでいる。原因は単純。消費者を無視して、服をつくりすぎるから。規制緩和で全国各地に大型ショッピングセンターができた。アパレル企業はブランドを乱発して大量出店。価格を抑えるため、商品はOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーや商社に発注して中国で生産。どの服も違うのはタグだけで本体はそっくり。販売員は低賃金で働かされ、使い捨てにされる。その結果、とうとう消費者に見放された。なぜ大手アパレル企業はそろって転落していったのか。経営陣がかつての成功体験から抜け出せないからだ。「つくれば売れる」「安けりゃ売れる」と思い込み、買う人・着る人の気持ちを考えなかった。デパートも同様・同罪である。消費者も変わった。もはやモノを買うことや所有することは快楽ではない。古着への抵抗感はなくなり、レンタルやシェアも積極的に使う。見栄で服を着る時代ではない。しかし、絶望ばかりではない。既存のやりかたにこだわらず、業績を伸ばしている企業も紹介されている。

アパレル業界黄金期

1970年代、日本のアパレル業界は黄金時代を迎えた。この時期には、洋服は作れば作るだけ売れた。日本人デザイナーがパリコレクションなどに華々しくデビューし、社会的な称賛も浴びた。だがこの時に生まれた利益を事業の進化のために再投資することはなく、新たなイノベーションが生まれることはほとんどなかった。業界の歴史に詳しいウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)の尾原蓉子会長は、この黄金期の1970年代を、「失われた10年間でもあった」と位置付ける。

どの業界でも黄金期にあぐらをかいていると、アパレル業界のように再投資の少なさからの衰退が待ち構えている。Amazonが新たな倉庫や拠点を作るのに他の会社よりも多くのパーセンテージ設備投資に回しているのもそのせいだ。アパレル業界も古くから続く非効率な業界慣習や、市場変化への対応が遅れたことにより衰退の一途をたどることに。

季節性や流行が重視されるアパレル

アパレルは生鮮食品と違って腐ることはないが、季節性や流行が重視されるため、在庫として寝かせる時間が長いほど、どんどん売りにくくなっていく。定価で売れなかった商品はまず店舗内でのセール、次に店舗とは別の場所で顧客向けに実施されるファミリーセール、そして各地のアウトレットモールなどと、値段を下げながら場所を変えて販売され続ける。それでも売れ残った商品が、バッタ屋の倉庫に運ばれる。

バッタ屋で取り扱う商品は、アパレル企業や有名ブランドだけでなく、卸売業者や小売店など川上から川下まで様々だ。売れない商品を倉庫で保管し続けるのにもコストがかかるため買い叩かれるのもやむなしという判断で安価にバッタ屋に流れていくのである。仕入れた商品は全国各地の小売店やインターネットで転売し差益を稼いでいる。供給されるアパレルの数量は1991年時点では約20億点だったが、2014年には約39億点に増えている。市場規模は3部分の2に落ちているのに、市場に出回る商品の数は倍増しているので、自然と不良在庫が増えバッタ屋が儲かるわけだ。

顧客の「食い合い」も見て見ぬふり

アパレル企業がSCへの出店を拡大した背景にはもう一つ、こんな本音もあった。「色々な場所に店を出してきたのは、拠点を守りたいという狙いがあった。『競合他社のブランドが先に店を出す』と聞いたら、『うちも負けずに出さなければ』と考えていた」と大手アパレル企業の首脳は語る。その結果、狭いエリア内に自社系列の店舗が林立し、顧客を食い合って1店舗当たりの売り上げは落ちた。それでも、グループ全体で増収が確保できていた間は見て見ぬふりを続けてきたのだ。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった大手アパレル企業のワールドが苦境に陥った一因として、「ブランド数の膨張と、SCでの安易な店舗拡大」を指摘する業界関係者は多い。ワールドのSCブランドは、同じくSCに出店するユニクロや欧米のファストファッションなどと競合した。だが相対的に価格が高く、独自性の乏しいブランドを大量に並べても、ユニクロなどと互角に戦うことはできなかった。

出店店舗数の増加とともに、供給する商品も大量生産となり急激な商品の同質化を招いたことがアパレル不振の一因に。SCだけでなく百貨店でも同様のことが起きておりこれもアパレル業界に影を落とす原因となっている。

僕は洋服は主にネットショッピングで買うので店舗のこうした実態には接してこなかった。昔と比べ客足が落ちていることには気づかなかったのだ。ZOZOやBUYMAやメルカリなど選択肢は広がっているので消費者としては喜ぶべきことなのだろうが、そこに昔のような作れば売れるアパレルはもはやない。古着への抵抗感はなくなり、季節ごとの流行を追いかけるならファストファッションで十分ということになればアパレルの不振は仕方がないことなのかとも思う。でもお気に入りのブランドは買って応援していきたいなとも思いました。

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