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テレビ報道の正しい見方|草野 厚

同じニュースが、なぜ報じ方によってかくも印象が異なるのか。司会者のコメントや仕切り方、映像編集、テロップ、音響など、テレビ報道にはあらゆる演出が駆使されている。本書では、公平性や正義を装いながら視聴者を巧みに誘導する番組作りを徹底検証。NHKのドキュメンタリー番組を俎上に、著者自ら現地を取材し、制作者側と激しく議論。さらに民放各社の番組を比較し、その傾向を分析。視聴者の判断力を向上させるメディア検証機構の設立を提唱する。報道番組の本質を見抜いた意欲作。

『NEWS 23』

「自衛隊の活動は法的根拠はあいまい」!? 四つの民放ニュース番組の中で、最も長い時間をかけてこの問題を扱ったのは『NEWS 23』だった。初日の二十三日は、番組の冒頭で六分近くの時間をかけて、事件の経過を報道した上で、終了間際にも再度取り上げている。翌日には、朝日新聞編集委員の田岡俊次(当時)と東京国際大学教授で軍事評論家の前田哲男をゲストに招き、メインキャスターの筑紫哲也を含む三人で議論を行った。事件の経過を報道する部分も含めて約三十二分間。一時間程度の番組であることを考えれば、異例の長さだと言えるだろう。

『ニュースステーション』

政府に批判的ながらバランスある報道 。政府批判の姿勢で報道していた『NEWS 23』に対し、一般的に同様の傾向があると思われている『ニュースステーション』はどのような報道を行ったのだろうか。『ニュースステーション』は十時(当時)始まりの番組であり、他の民放ニュース番組よりも一時間程度早く始まる。放送時間は一時間二十分。その中で、二十三日には冒頭で約十分、終了間際に約一分、二十四日は二十分強の時間をかけて、この事件を報道していた。割合からすれば、『NEWS 23』よりも短いと言えるかもしれないが、それでも重大事件だという認識が強くあったと見受けられる長さである。 『ニュースステーション』の一つの特徴は、この番組でしか報道されていない情報が豊富にあるところだ。たとえば、二十三日の放送において、韓国で起きた八五年の小型高速船領海侵犯事件や、九〇年の小型船漂着事件を一定の時間を割いて紹介している。翌日の放送では、北朝鮮外交官のコメントや韓国国防省への日本政府からの説明文書も紹介している。  また、『NEWS 23』が日本政府の対応に主として焦点を当てていたのに対して、『ニュースステーション』は政府の対応だけではなく、北朝鮮の戦略や韓国の反応などにも一定の時間を割いて言及していた。二十三日の放送では、九八年十二月に発生した北朝鮮の潜水艇撃沈事件を取り上げ、北朝鮮の破壊活動に関し、コリアリポートの辺真一編集長の解説を紹介している。  これらは、この事件を歴史的に、あるいは国際的な視座に立って考える上で、有益な情報だと思われるが、この事実を報道していた番組は『ニュースステーション』だけである。

『ニュースJAPAN』

北朝鮮の戦略に焦点を当て、政府対応を評価  では、政府寄りと思われている『ニュースJAPAN』はどうだろうか。この番組の放送時間は一時間十分だが、他の番組よりもスポーツの占める割合が高い。そのことを考えれば、一時間の番組よりも短いととらえていいのかもしれない。この事件に関して、放送されていた時間は『ニュースステーション』のそれとほぼ同じ長さ、二十三日には約十分、二十四日は約二十二分で、いずれも冒頭に取り上げていた。 『ニュースJAPAN』の特徴は、北朝鮮の戦略に焦点を当てていたことである。二十三日の放送では、『ニュースステーション』でも取り上げられた九八年の潜水艇撃沈事件の遺留品を検証し、それに絡めて韓国の反応を紹介している。その際、現代コリア研究所の佐藤勝巳所長のコメントを紹介し、北朝鮮のスパイ活動を歴史的に解説していた。二十三日の時点で、不審船を北朝鮮のものだと強く示唆し、その戦略を検証していたのは、この番組だけである。  また、二十四日には、軍事評論家の宇垣大成が不審船の役割と目的を解説していた。コメンテーターの木村太郎も北朝鮮の戦略という観点で解説を加えている。事件を北朝鮮の立場から、あるいは国家戦略という広い視野で理解したい視聴者にとっては、有益な情報が提供されていたと言えるだろう。  対北朝鮮国家戦略という視座に立った報道内容だったためか、政府の対応を一定以上評価するのと同時に、有事法制の整備を含め、新たな安全保障体制の構築を強く期待する姿勢があった。 「日本海上で発見されました二隻の不審な船は、日本の必死の追跡、威嚇射撃、さらには爆弾投下にもかかわらず、結局のところ、追跡断念という事態に至ってしまいました。

『今日の出来事』

特定の印象を与えない報道 『今日の出来事』の放送時間は約三十分であり、他の民放ニュース番組の半分程度しかない。もっとも、他の民放ニュース番組はスポーツに関しても放送しているが、この『今日の出来事』には含まれていない。その点を考えると、一時間番組に匹敵するとは言えないが、半分の内容だととらえることもできない。実際、この事件に関して、二十三日には約七分、二十四日は約十五分と、他の番組よりも極端に短いということはない。不審船の動向、政府や各政党の反応、現行の法制度(海上警備行動)の限界など、事件を理解する上で最低限必要な情報は提供されており、内容的に見劣りしない。  しかし、その報道姿勢は他の番組のそれと大きく異なる。端的に言えば、事実報道に終始しているのである。メインキャスターである井田由美やサブキャスターの豊田順子が何らかの意見を述べるようなことはない。また、政府の対応について、『ニュースJAPAN』にも出演していた佐々淳行と毎日新聞論説委員の重村智計(当時)の解説を紹介している。この中で、佐々は「今までの中では、大変しっかりした危機管理であったと思います。(中略)自衛隊法八十二条の要件は満たしている。手続きも万全であった」と政府の対応を評価していた。  一方、重村は「海上保安庁の任務とですね、自衛隊法八十二条のですね、自衛隊の治安の維持という問題の、条件の場合、そこの基準がですね、今回の場合、どういうふうに適用されたか、詳細に説明すべきだろうと思いますね。(中略)その説明が少し不足していたのではないか」と別な角度から政府に注文をつけていた。このように、事実報道に徹し、解説を行う場合にも賛否の両論を紹介する。

ニュースをザッピングしてみる習慣がないのでこのような報道の差があることに気付きにくい。同じ北朝鮮籍の小型船の報道に対してもこれだけ報道に差が出る。僕は決まったニュース番組を見るといった習慣がないので、その時々で各社の温度差の違いには気付きやすい。そんな環境なのに知らぬ間に報道の差に翻弄さてていたのがわかる。テレビは録画して見る以外に各社の主張を比較検討する検証が不可能。新聞なら複数紙契約することで比較が容易だが、録画までしてニュースを見ることはあまりしないだろう。そんな温度差がある報道番組を公平な目で見るのは意識していないと難しいかもしれません。事件後のニュースでどのようなゲストを招聘しているかでも論調は一気に変わる。それにキャスターの色などが加わりニュースの色みたいなものが形成される。メインキャスターの言葉に注目が行きがちだが、アシスタントMCの意見などにも耳を傾けるのも面白いかもしれない。

ニュースの見方がガラッと変わるインパクトのある書籍。テレビ局のカラーが色濃く出る報道を俯瞰して見ることで、新たな発見があるかもしれません。

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