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『そしてドイツは理想を見失った』川口マーン惠美

      2019/06/03

あの「民主主義の優等生」は、どこで道を踏み外したのか?戦後、理想を追求し、いまや世界の盟主の一国ともなったドイツ。しかしその内実は……。総選挙の敗北からメディア規制法まで、これがドイツのリアル。戦後の泥沼から理想を掲げて這い上がり、いまや世界最強国家の1つになったドイツ。しかし、その理想主義に足をとられてエネルギー・難民政策に失敗し、EUでも「反ドイツ」の動きが止まらない。「民主主義の優等生」は、どこで道を間違えたのか?ドイツ在住の作家がいま、日本人に伝えたいこと。

「言論の自由を守る」とされたSNS規制法案

二〇一七年六月三十日は、ドイツの長い夏休みの前の、最後の国会招集日だった。そしてこの日はまさに、現在のドイツの状況を端的に表していると思われる議題が続いた。その一つが、Netzwerkdurchsetzungsgesetzという法案についての討議であった。これはフェイスブックや、ツイッターや、ユーチューブなどといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上におけるヘイト(誹謗)やフェイク(噓)の書き込みを、迅速に取り締まれるようにしようというものだ。SPDのハイコ・マース法務・消費者保護相(以下、法相)が二年越しで熱心に進めていた法案で、「言論の自由を守るため」という触れ込みだった。SNSは、膨大な数の利用者をもつ。もちろん誹謗中傷や噓、違法な書き込みや動画もあとを絶たず、各社とも通報のあったものにはそれぞれ対応しているが、何といっても数が多すぎる。フェイスブックは、通報のあった書き込みの四割弱、ツイッターに至ってはたったの一パーセントしか削除していないという。比較的迅速なのがユーチューブで、通報分の九割を削除。いずれにしてもマース法相の目には、その対応が甘すぎるらしかっった。

匿名性が守られているからヘイト(誹謗)やフェイク(噓)の書き込みがあとをたたないのは日本も同じ。玉石混淆のSNS情報を仕分けして正しいものだけ取り出すリテラシーが求められる昨今。今の技術ならAIでそのような書き込みがあったらアカウントを停止するなどの措置は可能だろう。言論の自由というが、皆が便利に気持ちよく使うことを妨げるこのような行為は日本でも取り締まるべき。SNSがツールである以上、利用規約をもっと厳しくしても良いのではないだろうか。

無名のメルケルを大抜擢したコール首相

大学を出て、東ベルリンの科学アカデミーの研究者となったメルケルは、一九八九年十一月九日、ベルリンが大騒ぎになっていたその夜、サウナにいたが、壁が開放されたことを聞き、そのまま徒歩で西ベルリン(当時)に入る。彼女がそこで目にしたものは、夢にまで見た「自由」だった。この瞬間から、メルケルの運命が急速に展開しはじめる。まず一カ月後、新しく結党されたDA(民主主義の萌芽)に入党。なぜ東ドイツのCDUやSPDに入らなかったのかと聞かれた彼女は、すでに組織ができあがりすぎていて、活躍する場所が限られると思ったから、と答えている。一方、緑の党は彼女にとって左派すぎたらしい。さらにその二カ月後には、東ドイツでの最初で最後の自由選挙が行なわれ、一九九〇年四月、メルケルは新政府の副報道官となった。しかし夏にはDAは解散し、メルケルはCDUに移った。そして十月にドイツは統一、東西のCDUも合体した。ドイツ統一の直前、メルケルはコール首相に会う。メルケル自身が望んだ会見だった。その瞬間、コールはメルケルの才能を見抜き、翌々月に予定されていた統一後初の総選挙にメルケルを押し込んだ。そして、当選した無名の彼女を、鶴の一声で婦人・青少年省(当時)の大臣に抜擢した。新生ドイツは東西のバランスをとるため、東ドイツ出身の政治家を必要としていた。ところが、もともと東ドイツで政治にかかわっていた人たちは、往々にして「独裁政権」や「秘密警察国家」との関係が深すぎて使いものにならなかった。その点で、政治未経験のメルケルの「東ドイツ出身」と「女性」という二つのスタンスは、まさにピカピカの勲章にも等しかった。

コール首相に大抜擢されたあとのメルケル氏の活躍は皆も知ることだろう。首相を4期も続けたメルケル氏は10月29日にCDUの会合にて、同年12月に行われる党首選挙には出馬しない意向を表明した。首相は続投し、2021年の任期限りで政界を引退する意向だという。現在の国民の不満の一番の要因はメルケル氏の難民政策であることは間違いない。人道的には支持したい気持ちもあるがそうも言っていられないのだろう。

国際舞台で理想を高らかに謳い、ドイツの名声を高めながら、並みいる政治家たちと渡り合い、長きにわたり政権をとったメルケル氏。失敗した難民政策、台頭する右派、言論を取り締まるSNS規制法。「民主主義の優等生」がなぜ自由から逃走したのか、つぶさに見ていく書籍。

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