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おやじ論|勢古 浩爾

オヤジと呼ばれる年齢になってみて自分が過去に笑っていた存在に自分がなったのだなと強く思うように。周りの一般的な人と同じように普通に結婚して子供ができてとかいう世間一般の常識は僕には通用しない。老後への不安が消えないオヤジたちの讃歌。

「おやぢ」とは?

「おやぢ」とは、実際の年齢が「中年」の男性だけではありません。 いやな男全体 をさします。 例えば、「おやぢ」とはこんなふうです。「不潔」、「男尊女卑」、「上にペコペコ下にガミガミ」、「成功は自分の手柄、失敗は部下の責任」、「セクハラをセクハラと思っていない」、「口をひらけば自慢話」……。そして、「おじさま」は「おやぢ」に学びますが、「おやぢ」は「おじさま」に学びません。「おじさま」は学問を語りますが、「おやぢ」は学歴しか語れません。「おやぢ」は自分の話がうけると、何回も何十回も繰り返します。ちなみに、常識と教養を兼ね備えていて、周囲を不快にさせない中高年男性を「おじさま」と呼びます。「おやぢ」とは別の生き物、つまり人間だと思ってくださって結構です。

おやぢの定義というのは曖昧。それは中年男性だけでなく女性が生理的に受け付けない男性だったらそれも含むようです。中年になったらどこでおやぢとおじさまの線引きされるのかを理解し、できればおじさまに分類されたいものです。

生理的に受け付けない

先の「あぶらぎった中年」「セクハラ中年」とちがうのは、こっちは純愛中年であるところだ。純愛といってもたいした純愛ではない。当然、下心はある。口を開けば「恋がしたいなあ」とかいうのである。バカものが。鬼瓦みたいな顔をしてるくせに、対象はどんな女を想定してるんだ。もう何年前になるか、サントリーのCMが話題を呼んだ。長塚京三が若い女部下に慕われる。そのうれしさを表現して長塚が軽くジャンプをする。遠い夜空に花火があがり、「恋は遠い日の花火ではない」の文字とナレーション。このCMが中年男をいたく刺激したらしい。どうしてこんなCMに手もなくひねられてしまうのか。このあとはご存知、渡辺淳一の『失楽園』である。これは有夫有妻どうしの「おとな」の不倫物語。映画では役所広司と黒木瞳、テレビでは古谷一行と川島なお美。この顔ぶれにただの中年男である自分を重ね合わすというのがいかにもずうずうしい。

ドラマの主人公に自分を重ね合わせて楽しむのは自由だが、俳優たちと自分のルックスやなんかの違いを知った方が良い。油ぎった中年のあなたが、ドラマに出てくるような女性に相手にされるわけがないのだから。まずは清潔にして、無精髭を剃り、鼻毛もカッターで処理、爪を綺麗に切り揃え、きちんとスキンケアもする。汗を描く人は制汗剤やシートでこまめに体や顔を拭きましょう。そして口臭に気をつける。一つでもできていないとおやぢのレッテルを貼られる事態に。

おやぢの悲哀

家庭も顧みずに、一生懸命会社のために粉骨砕身、働いてきた。それが定年間際でリストラされた。出向を命じられた。オレだけは大丈夫、と思っていたのに、結局会社にとってはただの使い捨ての駒でしかなかった。そこで 愕然 とする。「おれの人生はなんだったのか」と。なにもクソもない。それがあなたの「人生」だったのである。一生懸命働いたが、最後の土壇場でクビにされた。そういう「人生」だったのである。だけどそのなかには、ぎっしりと会社以外のいろいろなモノが詰まった十分な「人生」だったのではないか。男が「おれの人生はなんだったのか」と嘆くのなら、あなたの妻も「わたしの人生はなんだったのか」と呟いていいわけである。あなただけに自分の「人生」を問い返す資格があるわけではない。会社勤めの途中で「組織」とはそういうものだ、とどこかで見抜いていなかったあなたにもヌカリはあったのである。 「なんだったのか」って、なんでもない。それがすべてだ。自分で選んだ人生だ。それが思い通りにいかないのは、それが「人間の人生」であるからだ。「なんだったのか」という悔恨は、こんなことであっていいはずがない、もっとうまくいくはずだったという失意からくるのだろうが、ではいったいどうなるはずだったのか。絵に描いたような幸福がやってくるはずだったのか。

仕事一筋だった人間が定年後妻から離婚を迫られるケースがある。家庭を顧みず仕事ばかりしてきたが、それも家族のためだと信じて頑張ってきた。そんなおやじがまさかの離婚宣告。奥さんが普段から不潔であったり、だらしなかったりするのを目の当たりにし、耐えに耐えてきた結果がこれだ。退職金を半分持っていかれて露頭に迷うことに。

おやぢは他の中年男性とどう違うのかが論じられ、世間で忌み嫌われる存在にならないための特徴を列挙。世の中の中年男性に一人でも多くの「おじさま」となってもらうための啓発書としても活用できそうだ。

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