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「生きづらさ」のよすがとして、「発達障害」という記号

      2018/07/29

過熱する「発達障害バブル」の深層を探る

いま、過熱する「発達障害バブル」。専門外来では、予約から診察まで3か月待ちは当たり前といった状況が続いている。わが子の行動やコミュニケーションに不安を抱く親たち。仕事や人間関係の尽きない悩みに原因を求めるおとなたち。皆、「生きづらさ」のよすがとして、「発達障害」という記号を求めているのではないか、と精神科医の香山さんは指摘する。早く診断を受けて、適切な支援を受けさえすれば、この「生きづらさ」は軽減されるのか?発達障害に関する分類や考え方は、まだまだ大きく変動しており、精神科医でさえ、その変動についていくのは難しい。過熱する患者や家族の心理と変動し続ける発達障害診断。「発達障害」はどこへ行くのか?精神科医・香山リカさんが、生きづらさの原因を「発達障害」に求める人たちの心理と時代背景に斬り込んだ意欲作!

この違和感、生きづらさの原因が知りたい

サクラさんもミノリさんやその夫も、従来の意味での「心の病」とは違う。従来の「心の病」はたとえば幻聴、妄想といった現実離れした現象を体験したり、「気持ちが落ち込んで死にたい」といったはっきりとしたうつ症状、「電車に乗ると息苦しくなって降りてしまう」といったわかりやすいパニック症状などが起きたりしていた。ところが、サクラさん、、ミノリさんやその夫には、それらのわかりやすい症状はない。その悩みは「仕事が長続きしない」「片付けが苦手」あるいは「夫とわかり合っている感じがしない」など、「性格の問題では」とか「誰にでもあることでは」と思われかねないものだ。その「誰にでもありがちな悩み」「性格の問題」に対して、サクラさんはADHD、ミノリさんの夫はアスペルガー症候群という「発達障害」ではないかと、気づいたのだ。

このような軽度の発達障害と思われる症状は世の中の多くの人に共通する症状として、処理されることが多いため、病院にかかっても、ADHDやアスペルガー症候群と診断されない場合も多い。なんとかこの世の中の生きづらさの原因を突き止めたいという人々が多く存在し、専門外来では予約が殺到し何ヶ月も待たされることもしばしばある。生きづらさの原因がこれらの病気であれば納得できるのだろう。よすがとしての発達障害という記号がここにある。

発達障害とは、具体的にどんな障害か?

発達障害は、生まれつきの脳の機能性障害。これについてわかったとして、では、その結果、どんな機能に障害が起きるのだろう。それがまた、ややわかりにくい。たとえば「足に障害がある」となれば、「歩行に支障が出るだろう」と誰もがすぐわかる。ところが脳というのはあまりにいろいろな機能を持っているので、「発達障害により起きる障害はこれとこれ」とズバリ言うことができないのだ。

代表的な機能障害はよく知られているのであげていこう。

  • 人とのコミュニケーションがうまく取れない
  • 周りの空気が読めず、暗黙のルールが守れない
  • 一つのことにこだわってやめられない
  • 注意や集中、関心を保てない
  • 落ち着きがなくミスが多い
  • 他のことは問題なくできるのに計算だけがあまりにもできない

これらの症状が単独または色々組み合わさっているのがいわゆる発達障害。そしてその程度もごく軽微なものから24時間ケアが必要な人まで多岐にわたるので同じように発達障害と診断名がついても状況は全く違うことも。

それではどのくらいの人が発達障害と認められるのか?2012年の文部科学省の全国調査では「通常クラスに在籍する生徒の中で発達障害と考えられる生徒は6.5%」と報告がなされている。特別支援教育を受けている生徒は約2.9%いるので、二つを合わせると9.4%。つまり日本では軽度な人も含め、約1割の人が発達障害と言うことになるのだ。これは僕がかかっている統合失調症の1%と比べてもかなり高い数値といえよう。

幼児期の愛情不足から発達障害になるわけではない

一部に「あなたの子どもが発達障害になったのは、幼児期の愛情が足りなかったから」と親を脅すような口調でこの「伝統的子育て」の大切さを主張する人がいるのは許されない。それでなくても、発達障害の子どもを持つ両親は「私たちの接し方、育て方が悪かったのではないか」と自分たちを責めている場合が少なくない。そういう親たちにとって、「『伝統的子育て』が発達障害を予防する」といったメッセージは残酷な拷問でしかないことは言うまでもないだろう。

もし自分の子供が発達障害だったとしても両親に責任はない「育て方が原因」などと言う妄言には耳を貸さないことだ。

子供の時点で発達障害とわかるケースは症状が重い場合が多いような気がする。しかし、今の世の中では、ちょっと問題が起こっただけで我が子を発達障害ではないかと疑ってあちこちの病院を渡り歩くケースも少なくない。「発達障害」をいわゆる免罪符としようとする向きがある。大人になってから発達障害のことを知り、自分が生きづらい理由を発達障害に求める人が増えてきて、いわゆる発達障害バブルが起こっている現状を憂いた書籍。

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