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「つながる脳科学「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線」脳科学で解き明かすミステリー

      2016/12/17

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脳科学はあらゆる学問との繋がりが欠かせなくなっている。研究が進んだことで様々な脳の部位ごとの繋がり、その脳の各部位における細胞同士の繋がり、さらには脳の機能が私たちの行動や感情とどう繋がっているかなどが次第に明らかになりつつある。脳科学の研究は、多くの人々を苦しめている精神神経疾患の原因を解明して診断法・治療法を開発することや、脳にヒントを得た新しい人工知能の開発など、多様な形で社会貢献へと繋がる。9つの最新研究から、心を生み出す脳に迫る書籍。

楽しい記憶を思い出せば、うつが治る!?

たとえば、若い頃に沖縄に行ったなんて話を患者さんに聞いたら、沖縄であった楽しい出来事を思い出させて、色々と説明させます。ところがうつ病の患者さんは、なかなか楽しい記憶が思い出せません。おそらく神経回路レベルで記憶に抑制がかかっているのでしょう。普通の人と違って、なかなか上手に思い出すことができないのですが、中には、思い出すことに成功する患者さんも出てきます。そうすると、患者さんはしばらく〝うつ状態〟から脱出できるのだそうです。ネガティブな記憶に支配されている脳の状態を、楽しい記憶を思い出すことでリフレッシュさせるわけですね。

うつに限らず楽しい記憶で、〝今ここ〟のネガティブな感情を覆ってしまえば、少しばかり鬱々とした気分が晴れることがある。投薬治療も大事だが、こういった脳科学からのアプローチでの治療は今後期待できそうだ。統合失調症に対してはまだわからないことも多いらしいが、この病気は軽くはなるものの、治らないものと諦めているので気長に待ちたいと思う。

アルツハイマー病や自閉症の治療につながる発見

初期のアルツハイマー病のモデルマウスは、スパインを増やすことで恐怖記憶を思い出せるようになったわけです。このようなスパインの増大が人為的にできるようになればアルツハイマー病の治療にもつながっていくでしょう。最近では、他人を認識することを可能にする「社会性記憶」を維持する部位が、海馬に存在することも突き止めました。これは将来、自閉症や引きこもりなどの治療にもつながっていくと考えられます。

樹状突起スパイン(日本語: じゅじょうとっきすぱいん、英語: Dendritic spine)とは、神経細胞の樹状突起から突き出ている小区画で、脳のほとんどの興奮性シナプスの入力を受けているトゲ状の隆起である。神経活動などに依存して、電流の流れ方が変化したり、シナプスそのものが形成・消滅する。この数や形状的な変化が神経可塑性(神経回路形成)のメカニズムの一つである。単にスパインSpine)と呼ぶこともある。

記憶の研究は「新しい時代(New Era)」に入ったと言われており、こうして研究された技術は、記憶の回復や、うつ、PTSD(心的障害後ストレス障害)、統合失調症、認知症、自閉症などさまざまな脳疾患につながっていく。一方、洗脳などに利用される可能性も出てくることも十分加味しなければならない。

犬にもエピソード記憶はある?

まず飼い主さんに犬を連れてきてもらって、実験室に入り、等間隔に並んだ4個の箱を犬に見せます。犬にはリードがついています。4個のうち一つ目は空っぽです。2つ目は餌が入っていますが、見せてもリードを引っ張って、食べさせません。3つ目はエサがあって、これは犬に食べさせます。4つ目は石ころが入っています。4つの箱を開ける経験をした後、犬は、そのまま飼い主さんと実験室を退場します。ここからが本番の実験になります。少し時間をおいて、飼い主さんと犬に実験室に戻ってきてもらうのです。先ほど、犬は再び戻ってくることは知らずに、4個の箱を体験して、退場しました。さて、再び戻った時、犬はどの箱をに行こうとするでしょうか?それを確認することが実験の目的です。

学習の繰り返し記憶が優先されるなら餌を食べることができた3つ目の箱へいくと考えられ、エピソード記憶が優位だったら、さっき食べてしまった箱は空っぽだ、と考えるだろう。そうするとさっきは食べさせてもらえなかった2つ目の箱へいくと想定されます。実際複数の犬で実験すると、2つ目の箱に行く犬が多かった。つまり犬でもエピソード記憶がある程度できるというう結果に。

人工知能への応用

脳はコンピュータに比べて、驚くほど少ないエネルギーで働いています。したがって、脳を模倣した、あるいは脳の構造を基にした、新しい人工知能の開発に脳科学が貢献できるでしょう。中でもショウジョウバエは神経回路の全体像を描写しやすい、一番基本的なモデルになりうる得ると思っています。

ショウジョウバエを使った実験では固定したショウジョウバエは仮想空間で好きな匂いと嫌いな匂いにどう反応するかというもので。好きな匂いの場合は羽を大きく動かし前進したのに対し嫌いな匂いでは0.2秒ほどで反応し旋回、匂いなしでは、羽ばたきを弱めた。別の研究では好きな匂いを通り過ぎると反転し好きな匂いから遠ざからないように飛ぶこともわかっている。

第5章では脳の学習はどのように進むのか?AIのディープラーニングとどこが違うのか?第6章では感情の動きである「情動」と記憶の関係を神経回路から解き明かして行く。第7章では脳研究をつなげる最新技術を。第8章では、「心の病」を「脳の病」として捉え根本治療に向けた研究を紹介。第9章では脳から見た親子の繋がりを見るとともに、脳研究が今後どのように役に立って行くのか「社会とのつながり」を考える。途中専門的な解説が多くなる部分があり読むスピードが遅くなってしまったが、実験の詳細なども興味深く読むことができた。

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