柔軟に形作られていくべき私たちの思考は受け取るインプット情報が常に進化する現代において重要。思考の質は物事に継続的な問いをぶつける能力の程度によって決定するもの。そうしたことを私たちは理解せねばならない。
考える、ということ
私たちは皆、日々何かしら考えている。誰もが当たり前に行なっていることだ。だが、「考える」という概念そのものは、玉石混交 のさまざまな論争にさらされてきた、どこか不思議な存在ではないだろうか。
思考をテーマとする本や論文も、世の中に何百、何千とあふれている。それでも、この「考える」という言葉なり概念については、まだまだ関心を寄せ、理解を深めていく必要がありそうだ。私たちはいまこそ、この言葉をきちんと取りあげて、再定義しなくてはならない。
エドワード・デボノ財団の研究部長、エイドリアン・ウエストは、「ものごとをよりクリアに、より豊かに、より幅広く考える能力──これを個人レベルでも集団レベルでも伸ばしていくことが、世界の問題の解決には絶対に欠かせない」と言っている。まさに、私の思いを言い表してくれている言葉である。
多くの人が、ものごとをどのようにして考えたらいいかを忘れてしまっている。
ひどい時は、考える責任自体を放棄してしまっている場合もある。そして頭もどんどん固くなり、よりよい思考がもたらしてくれる可能性を受け入れることもできなくなってしまうのだ。なかには、アップルのシリ(Siri)やアマゾンのアレクサ(Alexa)といった人工知能に思考を預けてしまっている人もいる。クリエイティブな思考、さらにはクリティカルな思考の両方を、自分の外に委ねてしまっているというわけだ。
米海軍大学校のトム・ニコルズ教授は、こんなふうに述べている。 「現在、目の前で起きているのは、専門知という理想そのものの死ではないかというのが、私の懸念だ。グーグルにあおられ、ウィキペディア頼りになり、ブログにどっぷり漬かった社会で、専門家と素人、教師と生徒、知識がある者と好奇心がある者
──要するに、ある分野において何かしらの業績がある人間とまったくない人間──のあいだの垣根が崩れつつある」と。 人々が思考しなくなっているという現状の弊害は、あらゆるところに広がっている。
フェイクニュースがまかりとおり、「ポスト真実」の政治はいまや当たり前。ソーシャルメディアが長文の記事や本に取って代わる。従業員の意欲はどんどん低下する。かたや企業は、経営層と従業員層の賃金と純資産のギャップが依然として大きいにもかかわらず、短期的な利益を追うことをよしとする。さらに、西洋社会では人々のストレスや神経症のレベルが上がり続け、寿命まで縮んでいるのだ。世界保健機関の予測では、2020年にはうつ病が世界的にも病気の主要因の第2位になるという。実際に2017年には、病気や障害の主要な原因にうつ病が挙がっているという事実を踏まえると、憂慮すべき状況なのはまちがいない。
ものごとを考えるということについて、いままさに考え直さなくてはならないのだ。
最近のTikTokなどの隆盛に僕は疑問符を持っている。確かに映像とコンパクトにまとめた情報は魅力的だが、一方発信者は再生回数を意識したコンテンツ作りのため事実を脚色したりひどい場合フェイクニュースだったりと真偽がまちまちだったりして見る側のリテラシーが求められる。まるでかつてのスポーツ新聞の見出しのように。受け取る側はきちんと自分で情報を精査する必要があるのが現代かと。
「ノー」と言う能力
コーネル大学教授のブライアン・ワンシンクは、2005年に発表した論文「底なしボウルの実験:1人前の量に見せかけると人はなんとか食べようとしてしまう理由」において、人は「ノー」と言いづらいものだと明らかにした。
彼は、次のような実験を行なった。
数名にスープを飲んでもらう。そのうち何人かには、本人には秘密で自動でスープが注ぎ足されていく仕組みのボウルを渡している。
被験者は、自分が普通のボウルを使っている人たちよりも、たくさんスープを飲んでいることに気づかない。目の前にあるスープを淡々と飲み続けるのだ。
「普通のボウルを使った人たちよりも 73 パーセントも多くスープを飲んでいるにもかかわらず、被験者たちは自分たちがスープを多めに消費したと信じられず、また普通のボウルを使った被験者に比べて、より満足感を抱いているというわけでもなかった」と、論文には書かれている。
実際、自動で注ぎ足されるボウルを使った被験者たちは、自分が食べ過ぎだとも思っていなかった。その結果、被験者たちは平均して、実際より140キロカロリーも自分の摂取量を低く見積もっていたという。
アプライド思考を大幅に補ってくれるのが、実は「ノー」を言う能力だ。
いろいろなことに「イエス」を言いすぎると、私たちはすぐ容量オーバーになってしまう(スープの実験では栄養過多になっていたが)。つまり、「ノー」を言うべき対象を適切に見きわめられるかどうかに、自分が掲げるゴールや目標の達成がかかっているということだ。
もちろん、逆もまた真なりで、あらゆることに「イエス」を言ってしまえば、アプライド思考に悪影響が出る。いろいろな人や新しいプロジェクト(またはスープ)に「イエス」を言ってしまえば、ものごとを達成するのを大幅に邪魔してしまうことになり、ひいてはクリティカル思考も阻害してしまう。脳の実行機能の観点でも、自分がアクションを起こす際のやり方を冷静に検討して、本来の目標には無関係で障害にしかならないような衝動をブロックすることができないと、私たちはおそらく失敗してしまうだろう。
「ノー」という能力、僕のように流されやすい人間は特にこれが苦手。「イエス」という方が簡単なのだがそれは物事を達成するのに阻害要因になったりするので注意が必要だという。自分のアクションに敏感になり無関係で障害にしかならないことにはきちんと「ノー」といえなければ失敗になるだろう。
思い描き、意思決定して、実行する。変化の多い時代いかにオープンであるかが思考の質を上げる。そんな情報過多時代の思考法。
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