貴様いつまで女子でいるつもりだ問題｜ジェーン・スー｜51Blog｜誰もが見て見ぬふりをしてきた女にまつわる諸問題

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題｜ジェーン・スー｜誰もが見て見ぬふりをしてきた女にまつわる諸問題

2024年7月9日

「ていねいな暮らしオブセッション」「私はオバさんになったが森高はどうだ」二つの女子会の種類、女にまつわる諸問題を話題の著者が毒気たっぷりに笑い飛ばす。恋愛、結婚、家族、老後にまで言及する未婚のプロの真骨頂がここに！

私はオバさんになったが森高はどうだ

昨年、四十路に足を突っ込みました。

驚いた。こんなにフラフラした四十になるとは、思ってもみなかった。確か十年前も、あんなに子供染みた三十になるとは思っていなかった。よって、安定の期待外れであります。

泣く、笑う、喜ぶ、寝る、憤るなど、この世に生を受けてから一日の休みもなく、私はありとあらゆる人間の動作や状態を体得してきました。もうあとは「死ぬ」ぐらいかと思っていたのに、ここに来てまさかの新形態を体得したのです。それが、老けです。「老い」の一歩手前、それが「老け」であります。

老けはまるで、知らぬ間に忍び寄る恐怖。ある日突然、おでこに一本の深い皺が入るわけではありません。老けは一日にしてならずであり、老けフェアリー（妖精）は、私が寝コケているうちに、私の体に毎晩少しずつ老ける粉をかけていきました。しかしそれが余りに微量なので、すぐには気付けませんでした。

三十五歳ぐらいから、なんとなく自分の異変に気付き、しかしまだこれがいわゆる老けだとは思いもよらず、四十を目前にして突然、雷に打たれたように「これはまごうことなき老け状態だ！」と自覚しました。

女の老けは総合点で決まります。ファンデーションをぬると浮き上がってくる目元のちりめん皺なんて序の口で、髪の艶、デコルテのハリ、後ろ姿の肉付き、歯の色、白目の濁り、手の甲のシミ、顔の輪郭、踵の硬さ、尻のざらつき、地爪の色、首の皺など、体のすべてが老けの反射区になっている。それぞれが、少しずつ少しずつ経年劣化した状態の総合点で、全体の印象が決まります。

つまり、どこか一カ所頑張れば老けを一蹴できるものではなく、全ポイントを均等にケアすることでしか、老けにはあらがえないのです。これは厳しい。

僕も未婚なので普通に結婚して子供がいる人に比べて老けには敏感。アンチエイジングの為、男性ではあるが肌の手入れなど美容にも興味がある。ですが老けは隠しきれない。いくら年齢より若く見られていようと年齢は誤魔化せないのだ。パートナーがいればそんな悩みも吹き飛ぶのだろうが（笑）

ブスとババアの有用性

人の容姿をくさす言葉は数あれど、赤子から今わの際まで女を等しく貶めることができる言葉、それが「ブス」。ブスと言われて、気を悪くしない女はほとんどいない。

女にだけ投げかけられる侮蔑語として、ブスの次に有用なのが「ババア」。年を重ねたことがマイナスに作用していると、女に認識させる言葉です。確かに嫌な気分になりますねぇ。発言者の勝手なものさしで測られた結果なので、ブスでもババアでもないことを証明するのは、至難の業ですし。

ブスやババアと言われると腹が立つのは、自分の価値が低いと人に決め付けられた気になるから。これは、不細工と加齢は女の価値を下げるという認識が、人々の間で共有されているからこそです。

ブスの対義語は「可愛い」や「美人」。ババアの対義語は「若い」あたりですかね。侮蔑語の対義語は、見事に褒め言葉。これもまた、「可愛い」「美人」「若い」女は価値が高いという認識が、社会である程度共有されている証です。

アイドルのプロデュースに関わる仕事をしていた時、インターネットの掲示板やまとめサイトを覗きに行くことが頻繁にありました。そこでは、アイドルや女優やモデルの風貌の変化を「劣化」と呼んでいる場面によく出くわしました。

たまたま不細工に写った写真を並べ、不特定多数の人間が「ブス」「ババア」といったコメントをつけて嘆いている。はなはだ余計なお世話ですが、下世話な好奇心が満たされるのも確かにわかる。しかし、中には下世話では済まされないほど、読んでいて不愉快なコメントもありました。劣化とやらを、まるで集団で罰を与えるように嗤っているのです。　罰があるところには、罪が存在するはずです。美しい芸能人の容姿劣化、それ自体が罪なのでしょうか？

アイドルなんかは可愛いのにブスと言われたり他人の厳しすぎる評価に驚くことが多い。それだけ容姿を売りにしているということなので仕方がないことなのかもしれないが酷すぎる現状。好みの顔じゃないのはわかるがいちいち「ブス」と言わなくても良いのではと思ってしまう。それでもブスと言われた子が垢抜けて芸能界で活躍する姿は意外と多く見る。それだけ強心臓が必要な業界ということか。

女性の正体を拗らせた女性代表の著者が斜め上から見ていきます。痛快なその語り種は気持ちの良いもので、社会の目を嘲笑うかのよう。楽しませてもらいました。

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