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自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術|下園 壮太|心のエネルギーの上手なマネジメント方法

ストレスがかかった状態で無理を重ね、ある日突然うつになる。これは他人事ではありません。イライラ、不安などの無駄な感情で疲弊する。それが原因で引き起こされるパフォーマンスの低下。エネルギーをうまく使って心身の健康を保つ方法論。

無理をしすぎて潰れないために

ムリを 称える日本社会

私が自衛隊に入った時、銃や車両の機械整備をする訓練があった。その時、何度もたたきこまれた基礎中の基礎が、「適切な工具を使う」と「ムリな力を加えるな」という事だった。

ムリな力を加えると、機械は壊れてしまう。組織が、ある部署やある工程にムリをさせると、その作業に渋滞が起こり、結局、全体を遅らせてしまう。

特に、生身の人間がムリを重ねると、健康を害すばかりでなく、ミスも多くなり、事故にもつながる。

だから、ムリはいけない。

そんなこと、言われなくても小学生でもわかる。

しかし、カウンセラーの私から見ると、多くの人がムリをしているのだ。

不思議なのは、それほどムリをする必要がないように思える状態でも、人間は自分を追い込む癖があるようだ。特に日本の社会ではどうしてもムリをしがちだし、周囲もそれを称える。はたから見ると、ムリが好きな人種にさえ見える。

好きなだけなら、問題はない。

実は多くの現代人が抱える日々の 虚しさやイライラは、「ムリ」が原因であることが多いのだ。

そんな人々は、自分がムリしているという自覚がない。

日々はいつもと変わらない。確かにストレスがないというわけではないが、だからと言ってそれは皆と同じ。特に自分だけムリしているとは思わない。

でも、なぜかイライラしているし、仕事に意欲を持てなくなってしまった。

このようなケースは、表面的には「生きがい」の問題のように見える。

しかし、多くのクライアント(相談者)を支えてきた私には、生きがいの裏に潜むエネルギー問題が見えてしまう。エネルギーの使いすぎ、つまりムリな状態を続けたことで、気力が低下し、生きがい問題として表れているケースが非常に多いのだ。

機械だって無理をすれば壊れる。スマホだってバッテリーが劣化してくると発熱しやすくなり熱暴走を起こすことも。負荷がかかりすぎると起こる不具合の良い例だ。人間だって同じ。ストレスのかかる職場で我慢しながら働き続けて張り詰めた心により一気に病むことも。僕も統合失調症を罹患した原因はストレスが過度のかかった状態で仕事を続けたせいだと思っている。因果関係は実際のところ不明だが少なくともストレスがかかった状態で発病した事実は変えられない。

ムラのある人から脱却する

しっかりと大休止を取る──リーダーのペースの決め方

では、どうすればいいのだろう。

もしあなたが、ボーイスカウトのリーダーで、山登りをしている時、グループの長径が伸びたらどうするだろうか。

当然、先頭にストップをかけ、最後尾を追いつかせるだろう。

この時、やりがちなのが、最後尾が追いついたら、すぐスタートしてしまう事だ。先頭の元気な人は、十分休んでいるので、また勢いよく歩きはじめる。ところが最後尾の人は、ようやく追いついたばかり。ほとんど休憩もなく、歩きはじめることになる。すぐにまた、長径が開いてしまうだろう。

長径が伸びた時は、リーダーは、「遅すぎる」ぐらいのペースにしないと、全体の行動をコントロールしにくい事を覚えておいてほしい。

一番良いのは、しっかりと大休止を取ることだ。1時間の休憩を取れば、最後尾も追いつき、さらに休憩もできる。

震災の後、自衛隊の指揮官には、まず隊員をしっかり休ませることをお願いした。不眠不休で働いていたので、代休だけでも相当溜まっている。まずは、勤務が許せば1カ月ほど休ませることをお願いした。

我々の研究では、1カ月休むと、ほとんどの人が疲労感を解消できる。逆に1カ月以上の休暇になると、むしろ仕事をしていないことで、そわそわしたり、不安になったりすることが明らかになっている。

次に、3カ月ほどは部隊の大きなイベントを控え、それぞれの隊員が自分の個人的な戦闘力の向上(体力、格闘技術、個人の装具の使い方の訓練)を図る時間とすることをお願いした。

集団でやる作業は、どうしても集団のペースにあおられ、ムリしやすい。個人の訓練なら、何とか自分のペースを保ちやすいからだ。

仕事による鬱なら早期発見で1ヶ月程度休めばかなり具合が良くなる。僕が入院していた3ヶ月×2の期間にも病棟にうつの患者が何人も入っていたが、皆そんなもんで退院して行った。その後完全に仕事に復帰したかはわからないが、部下を持つ上司は目安として知っておくと良いだろう。

心の疲れを取る技術。上手く自身をコントロールして、ストレス回避する方法。過度なストレスで生じた病からの脱出方法を学べます。部下を持ったら部下の健康もマネジメントしなければならない世の中、上司になったら読むと良いかと思います。

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