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知っておきたい地球科学|鎌田 浩毅|ビッグバンから大地変動まで

宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な知的刺激に満ちた一冊。

レアアースをめぐる海洋探査

レアアースとは、EVのモーターなど精密機器の製造に欠かせないネオジムやジスプロシウムなどの総称である。蓄電池や磁石などの性能向上には必須で、スマートフォンや自動車・航空機などハイテク製品に幅広く使われている。これまで世界の生産量の七〇%以上を中国が占めており、安定供給が政治状況によって左右されるリスクが非常に高い。

近年、レアアースが日本近海の海底下にも大量に存在することが分かってきた。東京大の研究グループは二〇一三年、南鳥島 周辺の排他的経済水域(EEZ) 内にある水深六〇〇〇メートルの海底下で、レアアースを豊富に含む「高濃度のレアアース泥」を発見した。

その後の調査で、南鳥島周辺の特に有望な海域(二五〇〇平方キロメートル) におけるレアアース資源量が、国内需要の二〇〇年分以上に達することが判明した。こうした有用金属が豊富に含まれるレアアース泥がどこに分布しているかを予測できれば、効率的な資源探査開発につながる。

一八年には早稲田大の研究グループが、南鳥島沖のレアアース泥が約三四五〇万年前に生成したことを明らかにした。しかも堆積物はさまざまなレアアースを濃集する魚の骨を大量に含んでいるため、レアアース泥の成因が調査された。

ちなみに、この時期は地球全体が寒冷化した時期で、南極大陸に大規模な氷床が発達した時代と一致し、さらに海洋の大循環が強まった時期とも近い。すなわち、新生代の前半は極地に氷床のない「温室地球」だったが、三四〇〇万年前頃から南極大陸に大規模な氷床が発達し、現在のように両極に氷床が存在する「寒冷地球」へ気候モードがシフトした。高濃度のレアアース泥の生成は、その最初の南極氷床が拡大した時期と一致する。

近年の海洋調査で判明したレアアースの埋蔵量。しかしどうやって採掘するか?採掘にかかる費用は?未だ課題も多い。採掘にかかるコストを考えると簡単に喜ぶことはできない。

二〇三〇年代に南海トラフ巨大地震

近い将来に予想されている「南海トラフ巨大地震」という激甚災害。「トラフ」とは、海底に舟底のような平たい凹地形ができる場所を言う。南海トラフは静岡県沖から宮崎県沖まで続く水深四〇〇〇メートルの海底にあるが、ここは歴史的に巨大地震が繰り返し起きた場所でもある。

日本列島には南方から来た「フィリピン海プレート」が沈み込んでいる。このとき地下でひずみが蓄積され、一〇〇年に一度くらい巨大地震が起きる。これと同時に巨大な津波が発生し海岸を襲う。

南海トラフの北側には三つの「地震の巣」があり、震源域と呼ばれている。それぞれ東海地震・東南海地震・南海地震を起こした場所で、一部は陸地にも差し掛かる。

古文書を解読して地震が起きた歴史を 繙くと、南海トラフ沿いで地震と津波が約一〇〇年おきに発生したことが分かってきた。

そして三回に一回は東海・東南海・南海の三つの震源域が同時に活動する「連動型地震」だったことも判明した。過去のパターンを見れば、次はこの連動型地震が起きる番に当たり、首都圏から九州までの広域に甚大な被害を与えることになる。

さらに三つの震源域は起きる順番が決まっており、最初に名古屋沖で東南海地震が発生し、次が静岡沖の東海地震、最後に四国沖で南海地震が起きる。

例えば、前回は東南海地震(一九四四年) が起きた二年後に、南海地震(四六年) が発生した。その前の回(一八五四年) は、同じ場所が三二時間の時間差で活動した。また三回前(一七〇七年) には、三つの震源域が数十秒のうちに活動した。

政府の中央防災会議の作業部会などは二〇一二年、南海トラフ巨大地震の規模をM9・1、また海岸を襲う津波の最大高は三四メートルに達すると想定した。

南海トラフの巨大地震の予測規模はM9.1、それによる津波の高さは34mと非常に強力な数字が予測される。100年に1度の巨大地震、備えが必要だが、なんとなく楽観していて実感がわかない。東日本大震災の時の僕の住んでいる地域の震度が5強。それと同レベルなら棚のものがいくつか落ちる程度で済むのでそこまで被害はない。

知っておきたい地球科学をイロハのイから。我々の住む地球のさまざまな側面の生活に結びつけて解説します。

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