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物価とは何か|渡辺努|経済を語る上で知っておくべき物価という概念を初歩からわかりやすく

あのバブル絶頂時、そしてその崩壊、いずれのときも意外なほどに物価は動かなかった。それはなぜか?経済を語る上で知っておくべき物価という概念。初歩からわかりやすく社会で暮らす人全員に向けて知らなきゃやばい経済学のエッセンスを抽出。

ネット時代でも価格のバラつきはなくならない

スーパーで顧客登録しカードを発行してもらうと、ポイントや値引きなどの特典が得られます。お店の側からすると、一人ひとりの顧客の購買履歴を観察できるので、キャンペーンのお知らせをするときなどに便利です。また、マーケティング情報を収集する企業は、消費者とモニター契約を結び、どこで何をいくらで買ったのかをデジタルで記録し、秘匿措置を施したうえでデータベース化しています。このように、個々の消費者と紐づけされたスキャナーデータが日本を含む各国で蓄積されており、ビジネスはもとより、学術的な研究でも利用できるようになっています。

具体例をみてみましょう。図1‐9は米国ミネソタ州のミネアポリス市(人口約四〇万人) の居住者を対象として蓄積されたデータの一部で、ハインツのトマトケチャップを個々の消費者がいくらで買ったかを示しています。同一の商品を五〇セントで買った人もいれば三ドル近く出した人もいて、実に六倍もの開きがあります。こうしたバラつきの原因は、店舗による違いや特売、クーポン配布など、さまざまなものが考えられます。

消費者によって購買価格が違うのは、いま私たちが日々経験していることです。しかし、かつてインターネットの普及が本格化した二〇〇〇年頃、価格のバラつきはアナログ時代の遺物であり、いずれ消滅すると多くの人たちが予測していました。当時、ネット社会となった「近未来」に、買い物は次のような姿になると考えられたからです。それは、あらゆる商品をネットで購入するようになれば、どの店舗がいくらか簡単に調べられるし、わざわざ店まで出かけずにクリックひとつで注文できる、という未来像です。たしかにここまでは、ある程度現実のものとなりました。ですが、当時はそのように買い物スタイルが変わる結果として、いちばん安い値段を提示している店舗にすべての注文が集中し、他店(リアル店舗も含む)はその値段で売らざるを得なくなる、そうして、やがて価格のバラつきは消滅すると考えられたのです。

結果はどうだったでしょうか。さまざまな国で、オンライン価格データを用いた分析が行われましたが、価格のバラつきが消滅したという結果は報告されていません。価格のバラつきはいまなお残っています。ネット上でさえそうなのですから、リアル店舗でも当然、価格のバラつきは残っています。

原材料価格の高騰によりさまざまな商品の値上げラッシュが続く昨今。消費者によっては買い控えをしたりと影響は大きい。しかし食品などは飽食の時代、ある商品が値上げしたなら他のもので代用するなんて小技も。消費者はさまざまな工夫で乗り切ろうとしています。

価格を変えない日本企業

さて、ここまでのところで、価格の硬直性というケインズの宿題に、現代の経済学者たちがどのようにして答えを出そうとしているのか、どこまで成功していて、どこが難所なのかを概観しました。これを踏まえて、本節では、日本で価格硬直性が近年高まっている現象について考えていくことにします。

日本の価格硬直性が高まったという事実が、日銀などポリシーメーカーにとって大きな意味を持つのはいうまでもありませんが、私たち生活者にとってもとても大事なことです。消費者としては価格硬直性(=価格据え置き) は望ましいことのように思えます。実際、アンケート調査でも多くの方がそう回答します。しかし、それは商品を購入する場面の話です。商品を作る場面を考えれば、価格据え置きは賃金が上げられないことを意味するので、労働者としての私たちにとって望ましくないことです。長所と短所の両方を考慮したとき、価格が硬直的というのは私たちにとって本当によいことなのでしょうか。

緩やかな、しかし執拗なデフレ

日本の物価に関する事実を確認するところからはじめましょう。図4‐9は消費者物価指数(CPI) の上昇率(前年比) を示しています。CPI上昇率はバブル崩壊後低下を続け、一九九〇年代半ばにはマイナスとなりました。その後、一時的にプラスに戻る局面もありましたが、基調としては、わずかながらゼロを下まわるという状況が続いています。

価格据え置きの商品という見た目を維持するために、内容量を減らすなど企業はあの手この手で価格維持に奮闘していましたが、ここ最近の為替相場によりそうもいってられなくなった。価格の硬直性を位置破るほどの円安。ここにきて日本企業の価格維持神話は崩れ去ってきています。

物価を形成するさまざまな要素を深掘り。どうやって価格が決まっているか物価の側面から紐解いていきます。

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