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損したくないニッポン人|高橋秀実|損ばかりしている人に向けた「ニッポン人の新・行動経済学」とは? 

日本人がお金のリテラシーが低めなのはこの「損したくない」というのが基礎になっている気がします。ついつい「損したくない」行動に走って、損ばかりしている人に向けた「ニッポン人の新・行動経済学」とは?

損したくないと大画面

「液晶を買うとなると、おのずと 40 インチを買うことになっちゃうんですよ」

損したくないと 40 インチ。気がつくと大画面。世間とはそういうものだと彼は言いたげなのである。

彼の6畳間でしばらくテレビを見ていると、やがて私は疲れてきた。小さな画面ならテレビが「目に入る」感じだが、大きいと画面の端々まで「目で追う」ことになる。ワイドショーなどは追いたくもない映像が向こうからのしかかってくるようだ。人物が等身大に映るというのが売りらしいが、狭い部屋に等身大のコメンテーターが現われると実に鬱陶しく、遠くに離れて小画面にしたくなる。迫力も良し悪しなのである。

少し検討する必要があるな。そう思って帰ろうとすると、彼はこう声をかけた。 「買うべきだと思いますよ」

──大画面を? 「やっぱりいいと思いますよ。買ったほうが絶対いいですよ」

どうやら彼は私を道連れにしようとしているようだった。自分も迫力に耐えているのだから、あなたもこれを味わうべきだということなのだろうか。

その後私は家電量販店を巡り歩いたが、どの店も販売トークの基本は「みんな買っているから買ったほうがよい」という道連れを誘うものだった。

ある店では「今ご覧のテレビは何インチですか?」と訊かれ「 25 です」と答えると、「だったら 40 ですね」と即決された。「なぜですか?」と問い質すと、彼は「今までのテレビより小さいモノを買う人はいません」ときっぱり。

高度成長期でもないのに新たに手に入れるものは今よりもグレードアップしたものという考え方はもう古い。ダウングレードや機能が上がっている分スペック的にコスパが良いものを選ぶのが賢い。大画面テレビが大失敗に終わり投資が赤字になったシャープの慢心が良い例だ。部屋の広さに似つかわしくない大画面テレビが鎮座する姿は損したくないという日本人の生み出した風景だ。

「損」はラッキー

損について考えてばかりいると、やがて「損」が口癖のようになってくる。「損する」「損しない」「損したくない」……。「得」の場合は「トク」の「ク」のところが口の中で引っ掛かるような気がするが、「ソン」はさらりと言える。「ソン、ソン、ソン、ソン」と軽やかにスイングできそうなくらいで、このリズムはどこからくるのかとあらためて漢和辞典などを調べてみると、「損」は中国語だった。「得」は明治の頃まで「徳」だったが、「損」は昔からずっと「損」。今も中国では損のことを「損」と言うらしく、さらにそのルーツを探ってみると、「損」は易の六十四卦のうちのひとつだったのだ。

あの占いの易である。

周の時代に発達したもので、占いの方法には様々な流派があるが、基本的には 筮竹 と呼ばれる竹ひごを手に持ち、それを念じながらふたつに分け、ひとつから8本ずつ取り分けていって、残った本数を数える。そして、その数に当てはまるものを 64 種類の「卦」からひとつ選び出す。その中に「損」があるのだ。

私たちはよく「損が出る」と言うが、もしかするとその言い方も易占いに由来しているのかもしれない。国語辞典にもあるように、「損」とは「交換・売買・仕事などをしたあとで、必要な経費を差し引いた結果、お金が残らなかったりかえって出費の方が多かったりすること(様子)」(『新明解国語辞典 第六版』三省堂 2005年)。つまり、後で計算してみたら結果として「損」が出る。詐欺なども後で「損」だと気がつくものだし、安いから得だと思って買っても、後で隣の店がもっと安かったと知れば、結果として「損」が出る。「損」は事前にわからない。事後になってもしばらく気がつかないこともあるわけで、そもそも「損」は占うべき対象だったのではないだろうか。

損することを過度に嫌う日本人。購入したものが後で購入した値段より安い値段で売り出されていたら損だと思う。今はAmazonなどのサイトでセール情報とかを分析した価格データを提供する機能拡張などがあり損することは少なくなった。これを知らないと高値づかみするなんてことも。中にはセールを定期的に行っているのに普段はその値段よりもかなり高額で売っている悪どい業者も。

いつから日本人は損を過度に嫌うようになったのか?貧乏くさいと言われたことがある人に向けたマインド構築本。読めばきっと損の正体がわかります。

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