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悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える|仲正 昌樹|「安心したい」──その欲望がワナになる

ナチスによるユダヤ人大量虐殺の問題に取り組んだハンナ・アーレントから排外主義的思潮や強権的政治手法といかに向き合うべきかを学ぶ。宗教的世界観にも似たものに飲み込まれないための思考法。

『ヴェニスの商人』に見るユダヤ人憎悪

十九世紀の反ユダヤ主義的思潮を理解するには、西欧において「ユダヤ人」とはそもそもどんな存在だったのか、ということを押さえておく必要があります。

ユダヤ人とは、ユダヤ教を信仰している人たち、あるいはユダヤ人の血統を継いでいると自任する人たちを指します。キリスト教の『新約聖書』では、ユダヤ人は神に選ばれし民でありながら、救世主イエスを十字架に架けた罪深き人々ということになっています。彼らはヨーロッパ各地に散り、土地の人々との混血が進んで「外見的」には区別が付きにくくなっていきますが、それでも公職に就けない、土地を所有できないなど、様々な差別を受けていました。キリスト教徒にはできない「汚れ仕事」を請け負ったのも彼らで、その一つが「金貸し業」です。

キリスト教は、利子を取って同胞に金を貸すことはならぬ、としています。これはユダヤ教の聖典でもあった『旧約聖書』の「申命記(*1)」などにも書かれている教義です。しかし商売をするには──特に海外との貿易など大きなビジネスを展開するには、金融は不可欠です。

実際には、ユダヤ人以外にも(実質的な)金貸しはいたようですが、この汚れ仕事をほぼ一手に引き受けていたユダヤ人は、知識も経験も豊富であり、ヨーロッパ各地に散っていた彼らは地中海沿岸を中心に独自のネットワークを築いて、商社のような役回りも担っていました。

金貸し業をやっていたユダヤ人のなかには、巨万の富を築いた人もいます。そうなると、金貸しという仕事とそれを担うユダヤ人を蔑みながらも、必要に迫られると利用し、それに助けられてはいるものの、金貸しで儲けているユダヤ人は憎らしい──ということになる。イメージとしては、まさにシェイクスピアの『ヴェニスの商人』です。

金儲けはイヤらしいという考え方はここ日本でも一般的だ。株式投資をおこなっているというと訝しがられることが未だにある。若い人の間では投資に前向きな人も多いが年配になる程その傾向は強いような気がする。実際にはきちんと勉強すれば怖いものでもないし怪しいものでもない。しかし、金儲けの匂いは拭い去れないのでなかなか理解されづらいのかもしれない。

「普遍的人権」の限界

フランス革命以降、ヨーロッパの知識人や民主主義者は、誰でも人間であれば、そのこと自体が人権の源泉になると信じてきました。つまり、人権を持つために必要なものは、我が身ひとつ。人権を守るために特別な法を作るなんて本末転倒だというわけです。

しかし、戦争や革命は、人間でありながら「人権」を持たない人々を大量に生み出しました。無国籍者の存在は、そういうことが現実に起こり得るのだということを証明してしまったのです。

建前を言えば、「普遍的人権」というものがある以上、無国籍者は近くの国が受け入れるべきでしょう。しかし、実際には、近代の国家は「国民」をベースに創設され、「国民」の利益を守るべく運営されてきました。「国民 nation」を構成する「市民 citizen」たちのために各種の権利が設定されました。それがなければ、「人権」は実質的に機能しません。逆に言うと、「国家」はそうした諸権利や利益と引き換えに、「国民」の忠誠心を繋ぎとめてきました。その「国民」のための資源を、「国民」ではない者たちに無条件に分け与えるわけにはいきません。「国家」が使える資源には限りがあります。「普遍的人権」の名の下に、困っている無国籍者を全て受け入れるという態度を取れば、多くの人が押しかけて、「国家」のキャパシティを超えてしまいます。

政府の保護を失い市民権を亨受し得ず、従って生まれながらに持つはずの最低限の権利に頼るしかない人々が現れた瞬間に、彼らにこの権利を保障し得る者は全く存在せず、いかなる国家的もしくは国際的権威もそれを護る用意がないことが突然明らかになった。他方、少数民族のケースのように、一国際機関が政府の保護の代役を務める用意が実際にあったとしても、措置を講じ提案を実行する暇もないうちにその信用は地に墜ちてしまった。主権の侵害を警戒する各国政府の抵抗にぶつかっただけでなく、被保護者自身とも同じように衝突することになったためである。

人権を侵害されるような行為に厳しい目が向けられるようになった昨今。なかなかそんな風潮に馴染めずついつい人権侵害的な言動をしてしまう年配者は案外多い。お茶の間だったらまだしもテレビなどのメディアでそれをやると一気に炎上のネタに。特にジェンダーの問題等は僕らが子供の頃からずいぶん世の中の考え方が変わってきているので注意が必要。

全体主義的な悪に染まらないように注意しながら生きるそんな世の中で右向け右ではない自分の考えを持つことは案外大事。テレビなどを見ているよ偏った見方をする人や同調圧力に負けてつまらないコメントをする人とかがいる。炎上を恐れて逆にメディアに沿った意見しか流れてこないのがマスの弱点か。

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