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人生後半こう生きなはれ|川村 妙慶|ただむなしいと焦る心に、人生を立て直す希望が隠れている

老後の虚しさ、それを解消するにはどのような対策が有効か?ただ虚しいと焦る心に人生を立て直すヒントがある。世間体を捨て去り思いのまま生きるコツを伝授。

定年後の生き方について

定年を迎えた友人が京都に来るというので一緒に食事でも、という話になりました。

入った店の店主は友人に「今日は観光ですか?」と尋ねます。

すると友人は、「いいえ、違います。仕事です」と答えたのです。

確かに友人は定年を迎え、あらたに立ち上げる事業の構想を練るために、憧れの京都に宿泊しました。今後のことが頭から離れないのはわかりますが、素直に「遊びです」とは言えないようです。

友人が「今日は遊びです」と言えなかったのは、いつも忙しい自分でないと許せないという思いがあったのかもしれません。働いている自分は世間に必要とされていて、何もしていない自分は哀れ。世間から置いてきぼりという観念があるのです。

これでは一生、仕事のない人生は耐えられないでしょう。

私がいただいている浄土真宗は、「遊びを学ぶ」教えです。  お経には、「遊」という字が、『 浄土三部経』だけでも 14 ヵ所。開祖である親鸞聖人のお書きになった『教行信証』では 19 回、註釈版のお聖教で数えると122回も出てきます。

それほど「遊」を大切にしたのです。  遊びは、ネオン街に行って豪遊するだけが遊びではありません。

例えば、スポーツ観戦や音楽鑑賞なども遊びですね。たくさんのファンが必死になって応援します。応援したチームが勝っても負けても、私たちの人生にはまったく関係ないのに、なぜあそこまで夢中になれるのでしょうか?

僕も何を隠そう無職。スタバで朝活して帰る時「お仕事行ってらっしゃいませ」と言われるたびに、無職なんだよなぁと思いつつ店を後にしています。向こうが勝手に勘違いしているのだから訂正する必要もないかと。

これからどう生きる?

「愚痴の人生」で終わりますよ

先日、ある 60 代の女性と食事をした時のことです。

ワインを飲みながら、 「妙慶さん、私一度も幸せだと思ったことはないの」

とおっしゃったのです。

私は驚きました。誰もがうらやむ地位を築いた方です。結婚されて 30 年。連れ合いさんも実業家として活躍されています。子どもさんも独立してお孫さんもおられる。それなのに幸せだと感じたことがない?

理由を聞くと、 「ある日、田舎で暮らす妹の声を聞きたくなって電話をしたら『お姉ちゃん、電話ありがとう。今、夫が肉まんを買ってきてくれて、それを半分に分けて食べているところよ!』と明るい声を聞いた瞬間、涙が出て止まらなかったわ。私の家では、夫婦で何かを分け合うことはないの。わけもわからず、毎日泣いているのよ」

とおっしゃいました。

きっと彼女もその年齢になって、残りの人生で必要なのは、物でもない、財産でもない、地位でもない、人の温かさに触れることが何よりもうれしいことなんだと感じられたのでしょう。今までしっかり者として生きてきた。しかし、家族関係は冷えきっています。そのことに後悔の念と不安を抱いておられます。

彼女だけではありません。老いの入り口に立つと、さまざまな感情があふれることでしょう。

他人から羨ましいと思われている俗にいう成功者たちも案外本人は満足できてなかったりする。上を見ればキリはないし、費やしている時間も半端ない。なので自由になりたいという願望が生まれるのかも。

人生の後半を良かったと思えるような生き方で終えるためのバイブル。振り返って良かったと感じるか否かは世間一般に言われる成功とは同義ではない。そんな人生後半戦の指南書。

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