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ファシリテーションの教科書|グロービス , 吉田 素文|組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ

リーダーに必要な総合的なスキル、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキング。個々の感情やコミュニケーションを重視しながらファシリテーターの思考プロセスをどう作り上げていくかを実践を踏まえ収録。

議論の「出発点」と「到達点」を明確にする

「議論の仕込み」において、まずすべきことは、議論の場の出発点と到達点を決めることです。今回の議論はどこから始めるべきなのか、そしてどこまでの結論を出すことをめざすのか、この2点を考えます。

当たり前のように感じられるかもしれませんが、実は失敗する議論のほとんどが、出発点と到達点が適切に設定されていないことから生じています。設定以前に、そもそも議論の場の到達点は何か、出発点はどこにすべきか、ということ自体、意識されていないケースがきわめて多いのです。

到達点が不明確なままだと、議論の場において何を中心に議論すべきなのか、それぞれの論点にどれくらいの時間をかけるのか、どの段階でどこに向かって議論を進めるのかが、わかりません。結果、それぞれの発言をどう位置づけ、どう反応すべきかを判断することもできません。その状態で議論を続けていると、参加者も、「何のためにこの議論をしているのか」「自分が言いたいことは今この場で言うべきことなのか、それとも別の機会に言うべきことなのか」と迷い始め、相当にストレスを感じるようになります。

到達点が明確であっても、無理な出発点の設定をしてしまうと議論はうまく進行できません。

よくあるのは、もっと前の段階に出発点を置くべきなのに、「ここまではわかっているはず」と考えて、本来議論・合意すべきことを飛ばして先の議論を始めてしまうことです。たとえば、ほとんどの参加者がまだその件について問題意識すら感じていない状態で、いきなり「解決策と実行プラン」を議論しようとしても、「なぜそんなことをやる必要があるのか、そもそもわからない」となり、誰も納得しません。もしくは「ここに問題の原因があります」と言っても、そもそもその状況が問題だと認識していない人にとっては、何の話か理解できません。

このように、出発点を間違うと、参加者は「いきなり議論を始めているが、何がなんだかわからない」と感じたり、議論を進めようとしている本人にはそのつもりがなくても、周囲からは「独善的に結論を押しつけようとしている」ように見えてしまい、確実に反発を招きます。特に自分自身がその件についてずっと考えてきた事案であったりすると、他人もすでに自分と同じ認識を持っていると錯覚してしまい、出発点を後ろ倒しにして話を始めてしまうことが多いので注意が必要です。

人間関係だとよく離れたりくっついたりといった現象が起こりうる。自分の周りから人が離れていったら離れていった人のせいにする人がいるが、相手の立場になってなぜ離れる必要があったのかを考えるとそんなこともあると納得することも。原因を自分に求めず相手のせいにするのはあまりにもお子様。議論でも同じことが言える。このくらいわかっているはずと合意するべき点をすっ飛ばして次の段階に進むとこのような事態が起こる。問題の原因の追及する際、何が問題だか認識していないと話が前に進みません。

ファシリテーションの究極の目的

実はこの問いに唯一絶対の解があるわけではありません。むしろ重要なのは、この2つの道があることを認識し、状況に応じ、どちらも選択・対応できるようにしておくことです。

その際に踏まえるべき状況は、大きく2つあります。1つは「時間的緊急度」です。議論に時間をかける余裕がなく、適切な結論を素早く導くことが最優先される場合、強いコントロールによってそれを実現すべきでしょう。

もう1つは、議論の場に参加するメンバーの「議論に参加し、生産的な議論を行うことに対する習熟度の高低」です。習熟度、具体的には良い議論とはどういうものかを理解・認識できているか、そして、実際に適切な議論ができる思考とコミュニケーションのスキルを持っているかです。これらが高ければ、ファシリテーターのコントロール度合いを下げても一定の成果が期待できます。一方でスキルが低い場合は、ファシリテーターのコントロールが必要です。

注意深い方は気づかれたと思いますが、ここには一見矛盾する状況があります。議論のスキルが低い場合はコントロールが必要だが、コントロールを強くするとメンバーのスキルが高まらない、という矛盾です。この矛盾をどう考え、対応していくべきなのでしょうか?

これは「ファシリテーション」という営み自体の目的をどこに置くかにかかる重要な問いです。もし私たちがファシリテーションの目的を「人々の知恵と意欲を引き出し、集団としての成果を最大化する」ことに置くのであれば、ファシリテーターのリード・コントロールによって最短距離で最適な結論を導くことは通過点であって、ゴールではなくなります。本当にめざすべきゴールは、ファシリテーターのリード、コントロールがなくとも、参加者自らが生産的な議論の場を創造し、実りある議論ができるようになっていくことです。つまり、「ファシリテーターが不要になる状態こそがファシリテーションの最終目的」といってもよいでしょう。

では、そもそもファシリテーターは何のために存在し、また私たちは多大な時間をかけ「仕込み」をし、「さばき」の技を磨くのでしょうか。それは、人々の知恵と可能性を最大限引き出し、集団を成長させるためです。人が適切な方向に成長するうえでは、「自分もあのようになりたい」という優れたモデルの存在と、成長過程で自力では乗り越えられない困難な状態に手を差し伸べ、あるべき方向に導くサポーターが必要です。ファシリテーターの本分は、議論の場における優れたモデル、そしてサポーターであることです。

そのような存在になるには、論理的、構造的な思考力、優れたコミュニケーションスキルといった「力」が必要ですが、その力を「振りかざす」べきではありません。むしろ普段はその力をできるだけ直接使わないようにする。しかし、参加者が自分たちではどうしても乗り越えられない状況にあるときは、いつでもその力を使って状況を打開できるように準備し、技を磨いておくべきです。

議論の場におけるスキルの差をどう埋めるか。スキルが低い場合はコントロールが必要だが過度なコントロールは個々のスキルの上達を阻害しかねません。参加者自ら生産的な議論に加わり、議論を盛り上げる。理想はリードするファシリテーター不要な場の醸成。

自分の意見や正義を他人に押し付けるような行動をしていてはなかなか議論は進まない。相手の立場も理解して自身の正義を少し抑えてものを言うぐらいがちょうどいい。ファシリテーターはそんな自身の主張を抑えがちな人からの聴取を心がけなくては強い言葉で迫ってくる人間ばかり注目されることになりかねない。チームの力を引き出すとはそう言うこと。

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