ネットフリックスやHulu、dTV 、アマゾンなどの動画配信サービスはコンテンツ視聴にどのような影響を与えたのか?配信された作品を一気見するという文化が醸成され根付いてきた。その波はテレビのビジネスモデルを、私たちの生活をいかに変えるか、最前線からの報告。
スマートフォンが「テレビの秩序」を破壊した
過去 60 年にわたり、家庭の娯楽の中心であった「テレビ放送」に変化が起きている。テレビの平均視聴率は下がり、2000年以前のように「国民の大多数が見ている大ヒット番組」はなかなか生まれなくなっている。
放送というシステムはいまだ強固だ。ほぼすべての家庭に普及し、視聴者数も、ネット配信とはくらべものにならない。ネット配信の場合、インフラの問題もあり、同時視聴者数は多くても数万から数十万人。だが、テレビ放送で本当にブレイクし、視聴率が 20 パーセントを超えるような番組では、少なく見積もっても1000万人以上が同時に視聴している計算になる。
しかしそれでも、テレビを見る人は明らかに減っている。博報堂DYメディアパートナーズの調査によると、メディアへの総接触時間のうち、テレビが占めていた割合は減りつづけている。2006年には約 51 パーセントだったものが、2015年には 40 パーセント弱まで落ちている(次図参照)。日本人の視聴習慣に大きな変化が起きているのはまちがいない。TBSテレビ常務取締役で、TVerに関する検討会の座長を務める河合俊明氏は、テレビに起きている現象が「ラテ欄から見えてくる」と話す。ラテ欄とは、新聞の「ラジオ・テレビ欄」のこと。新聞の最終ページとしておなじみのページである。だがあそこを見ることが「おなじみ」であるのは、ある世代にかぎられるのかもしれない。
「我々の世代は朝、最初に新聞のラテ欄を見て、その日に見る番組を考えた。だが、いまの若い層にそれは通じない。ラテ欄を見る習慣がなくなり、結果、番組に出会う機会も失われている」 河合氏はそう説明する。
若者のテレビ離れということがよく言われているが、意外と実際には思っていたほどのものではなかったりする。テレビを持たないという極端な層を除けば意外とテレビを視聴していたりする。SNSや動画配信サービスと共存していると言った方が正しいような気がする。
SVODがドラマの常識を壊す
SVODというビジネスは、クリエイターの自由度を高める可能性を持っている。Huluの船越氏は、自社でコンテンツを作ってみて、「スタッフ側にいろいろな気づきが得られた」と話す。
Huluが自主制作した「THE LAST COP/ラストコップ」という作品は、日本テレビとの共同制作である。Huluのプロモーションも兼ねていたため、第1話は日本テレビ系列で放送し、残りをHuluで配信する、というかたちが採られた。制作スタッフも、基本的にはテレビドラマの経験が長いスタッフによる。出演者もテレビドラマでおなじみの人びとで、まさに「テレビドラマのネット版」と言っていい。だがそれは悪いことではなく、ネットのドラマといえばオマケ程度、という意識のある人びとに、「テレビと同じクオリティのものが見られる」という印象を与えるための作戦でもあった。だから、できあがったドラマは非常に「テレビドラマ的」だった。
だがそれでも、「THE LAST COP/ラストコップ」はテレビでは放送しにくい、ネットならではの作品になった。しかもその傾向は、ドラマが回を重ねるごとに強くなっていく。
「最初はテレビと同じだと思っていたスタッフの意識が、どんどん変わっていった。尺(番組の長さ) を合わせる必要がないこと、CMを入れるタイミングを気にしなくていいことに気がついて、『ならばこんな風にできる』と工夫するようになっていった。普段は尺を合わせるのに大変な労力をかけていたものが、そこには気をつかわなくてもよくなる」
船越氏はそう説明する。
1時間もののテレビドラマは、CMが入る時間や前後の番組との間隔を勘案し、 46 分程度が一般的。これはどの国でもあまり変わらない。有料放送でもまったくCMなし、というわけにはいかないし、最終的には無料放送への提供を考え、そういうフォーマットにする。
だが、SVODオリジナルで、他の放送メディアを強く意識しないなら、従来のフォーマットにこだわる必要はない。実際、「THE LAST COP/ラストコップ」の1話あたりの長さは、よく見るとバラバラ。ネットフリックスの場合も、他から提供を受けたコンテンツは長さがきっちり揃っているのに、オリジナルコンテンツはバラバラだ。
ちょっとしたことに見えるが、フォーマットがドラマに与える影響は小さくない。CMが入る時間や、前後の番組との関係を気にしなくていいのであれば、それだけ自由な表現が可能になる。
毎週決まった時間にドラマを視聴するスタイルは仕事とも密接な関係があるように思える。高度成長期から続く正社員の文化では仕事から帰ってきてTVを視聴というスタイルが一般的であったが、今はさまざまな働き方がありそれが叶わぬ(仕事で毎週見られない)人も出てくる。しかし、ビデオに録画するほどのものではないそういったことやドラマは先が気になりすぎて一週間待てないなどのニーズも。そんな層に向けて放たれたのが一気見という文化。特にアニメなどは作品数も多く一気見に適したコンテンツといえよう。新時代はこうしてスタンダードに。
ネットフリックスが与えた影響を紐解いて現在のコンテンツ消費について考える書籍。黒船到来から今までの動画配信サービスの裏側を見てみよう。
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